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ひよきちわーるど

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2009.03.27
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カテゴリ:パパに


明日3月28日は、結婚記念日であります。
もう、16年もの月日が経ってしまいました。

ここに、数年前に書きました日記を
再び掲載してみます。


……………………………………………………………………………………………


   (数年前のひよきちわーるどより抜粋)


・・・・2段目の抽斗には 私たち夫婦の結婚写真、
そして夫や私の兄弟の結婚写真も入っていました。

結婚写真を見るのはどれくらいぶりだろうと
久しぶりに写真を開いてみました。


そこには16年前の私たちがいました。
当時、2人ともまだ27歳。
紋付袴の夫のそばに打ち掛け姿の私が寄り添っています。

その写真を見ていますうちに
様々な思い出がよみがえって参りました。



・・・結婚式を無事に済ませ新婚旅行も終え
新居に住み始めましたころ、写真館の方から電話がございました。
結婚式の写真ができあがりましたとのお知らせでした。

夫と私の実家、そして式に参列して下さった親族の皆さんに
1件1件、お手紙を添えて写真をお送りしなければなりません。
これから忙しくなるぞと思いながらその写真館に参りました。

写真を受け取り少しお話をしておりましたとき 写真館の方から 
結婚式の写真を写真館の中に飾らせてもらいたいとのお話を頂きました。


・・・・本来ならば、その写真館の方のお言葉を
有り難く頂戴するべきだったのかもしれないのですが
正直申しまして 私は躊躇してしまったのです。

確かに恥ずかしいという気持ちもありました。
けれどその気持ちの他にある理由があったのです。

写真館の方には感謝の気持ちを伝えました後
「恥ずかしいですし、お目汚しになりますので」と辞退致しました。



写真館の方にはそのように理由を申しましたが
本当の理由はもっと他のところにあったのです。

写真館の中に飾って頂く写真がもしも色打掛けやカラードレスでしたら 
嬉しいです・・と少し照れながら
有り難くそのお言葉を頂戴していたかもしれません。
けれど 白無垢姿だけは誰の目にも触れてほしくなかったのです。



・・・・上手く言えないのですが
白無垢姿というものは 夫となる人にだけ見て頂くものと
そんなふうに思っていたのです。

白無垢には様々な意味合いが込められているのでしょうけれど
私にとりましてその姿は 今までの自分を捨て 新しい暮らしの中に
飛び込んでいく・・・そのための覚悟の衣装だったのです。
いわば死に装束と同じ意味合いを持つものでもありました。


当時の私にとりまして 嫁いでくるここ関西は見知らぬ土地でした。
言葉も慣習も気質も 何もかも違う土地だったのです。

確かに同じ日本ではあるのでしょうけれど
自分の生まれ育った故郷とは明らかに違う文化圏であることを感じました。

関西と九州の慣習の違いではあったのでしょうけれど
お着物ひとつ誂えるのにしましても微妙に何かが違う居心地の悪さ。

そんな空気が生活全般に感じられました。



自分の生まれ故郷を離れ、名字を捨て
家族と遠く離れて 見知らぬ土地に嫁いで参りました。

一度嫁いでしまえば 今後実家の両親と数えるほどしか逢えないことも
幼なじみのお友達と会えなくなることも
故郷の自然に触れることも何もかもなくなってしまうのだと

そしてここ関西には夫の親族がたくさんいらして
自分は嫁として本当にやっていけるのだろうかと
不安で胸はいっぱいでした。


確かに 大好きな夫の元に嫁ぐという喜びはありました。
そして その嬉しい気持ちと同時に不安も数多くございました。

そんな気持ちを抱いておりましたから
花嫁衣装を身に纏うという喜びよりも
白無垢姿に覚悟を決める・・・そんな気持ちの方が強かったのです。




結婚式当日 長い長い時間をかけて着付けが終わりました。

窓の外には細やかな春の雨が降っていました。



式場で待ってくれていた夫が私の姿を見、
少し笑いかけながらこう言いました。

「かつら、重いんちゃう?」


いかにもこの人らしいと思いながら(笑)夫の言葉をきいておりました。
そう思いながら私は 
何かもっと他の言葉をかけてほしいと思っていたのです。



・・・こういうとき、花嫁となる人はどんな言葉を待つものでしょう。

「きれいだよ」という言葉を待つ人もいるかもしれません。
もしかしましたらもっと他の言葉を待つ人もいるのかもしれません。

おかしくないかな。ちゃんとなっているかな・・と
不安に思っていました私にとりまして
夫の「よく似合うよ」との言葉は確かに安堵できるものではありました。


でも、本当はもっと他の
たったひとつの言葉をかけてほしかったのです。


・・・正直に自分の気持ちを書くとしましたなら
夫に「よく決心してくれましたね。」と言ってほしかったのです。

私自身、嫁ごうとしているこの時でさえも多くの不安を抱えておりました。
それでも あなたのもとに参りました、と伝えたかったのです。

夫に微笑みかけたいのですが
胸がいっぱいになりましてそれさえも出来ませんでした。




16年経ちました今でも 私は春の雨が好きです。
音もなく降り続けます。


先日、夫に

「どちらかが先に逝ったら
 先に逝った人はね、残った人を必ず迎えに来ること!」と脅迫
いや、厳かに提案致しました。

もし、パパが先に逝ってしまったら 私を絶対に迎えに来て頂戴ね、と。



夫が「何着て迎えに来ようか?」と微笑みかけます。

・・・しばらく考え込みました後 私は
「タキシード!」と答えてしまいました(笑)。
(一体何を考えているものやら。)


次いで 私が
「もし、私が先だったら、何を着て迎えに行きましょうか」と。

夫のことですから「ひよこの着ぐるみ」などと答えるだろうと、
もしくは「ペンギンの着ぐるみ」などという奇抜な答えが返ってくるかと思い

「ふっふっふ。返り討ちにしてくれるわ!」と
私は、突っ込みどころを待ちかまえていたのです。




夫は少しはにかみながら

「・・・・花嫁衣装。」


「白無垢がいいな。」と。


白無垢姿は夫だけに見てもらいたいと思っておりましたし
そして出来ることであれば その姿をほんの少しでもいいから
覚えていてもらえたら・・・と思っていたのです。





あの日の、不安を抱えたままの私を
覚悟を決めたその日の私を
夫はすっぽりと包んでくれたかのようで


それに 「白無垢」と
言葉少なに答えたその眼があまりに柔らかで

私は言うべき言葉を失ってしまいました。











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Last updated  2015.03.21 17:46:41
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