深まる秋に
おそらくは更年期にさしかかっているのでしょう。目眩はずいぶん前から始まっていましたけれども今度は精神的な落ち込みが加わってきました。この精神的な落ち込みが昂じると やがては鬱状態となっていくのかもしれませんが・・・鬱には決してなりません。もし、病気になる前の自分でしたら精神的な落ち込みに驚き、不安を持ち、自分はこれからどうなるのだろうと思ったに違いありません。けれど(幸か不幸か)今の自分は「更年期?全然OK。」と笑い飛ばすことができます。数ヶ月おきに病気の再発検査を受け そのたびごとに診察室の前でガタガタ震え蒼ざめた顔でソファに座り込むことを思えば更年期における一時的な落ち込みなど「こちとら5年間も落ち込みっぱなしだ!かかってこい!」と大空に向かって言いたくもなってまいります。・・しかし、そうは言うもののこの秋の夕暮れ、山々が夕陽に照らされすすきの穂が風に吹かれるのを見ていますとやはり、辛いなあ・・・と思う自分がいるのも事実。ここはひとつ、この辛さから逃げ出すことなく「今の自分」を外側から眺め、「ああ、今、辛いんだな」と客観的に見てみようと思います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こんな時・・・以前でしたら幼い頃に住んでいた家が夢の中に出てきていました。懐かしい、温かな夢。自分がどこに避難すれば最も安らげるのか夢の中の自分はちゃんと知っていてあの頃の・・10歳にも満たぬ自分が今の50歳になる自分の手を引き「ここなら大丈夫だよ」と懐かしい生家に連れ帰ってくれる。けれど、今ではもう幼い頃の家が夢に出てくることはありません。いつでしたか、グーグルマップで以前住んでいた家の近くを見てみたのですね。そうしましたら、懐かしい家は取り壊され新しい家々が立ち並び、道路も造り直されていました。道路が全部造り直されるということは致命的ですね。せめて、本当にせめて道路だけでもあの頃のままでしたら「ここが、昔住んでいた家のあったところ」とその場所を見つめ、懐かしむこともできたはずなのです。けれど実際には、あの頃4本あった道路も今では2本に造り直され「あれ? ここに道路があったはずだけど・・・」と思ったとしてもそこは既にアスファルトで固められている。・・グーグルマップで見てしまってからというものもう、昔の家が夢に出てくることはなくなりました。かわりに、その昔の家が(何故か)飲食店となって夢に出てくるのです。夢の中でね、「この道をこのまま行けば、昔の家に帰れる!」と思い勇んで歩き続けるのですが・・・辿り着いてみれば、懐かしいその家はたくさんの人で賑わう飲食店に変わってしまっている。夢の中、多くの人でごった返すそのお店の中で、ふと思うんです。このお店の中に、もしかしたら懐かしい人達がいるかもしれない、と。そこで1人1人のお顔をしっかりと見つめるのですがどの方も知らない方ばかり。・・そうか、私が生家を離れてもう40年。そんな昔にこの土地を離れてしまった私のことなど一体誰が覚えているだろう、と思い直しその飲食店をあとにするんです。かわりに「この土地の石を拾って、関西に戻ろう。」と思いとぼとぼと道を歩くところで 夢は途切れます。