バイヤール:『読んでいない本について堂々と語る方法』
【送料無料】読んでいない本について堂々と語る方法■そもそも、この本を読んだ、この本は読んでいない、というとき、「読んだ」や「読んでいない」の定義は何だろうか。本書によれば、読んでいないにもいろいろある。まったく本を開かない、にはじまり、流し読みしただけ、一部だけ目を通した、まで。■一方、読んだといっても、じっくり目を通したつもりでも、結局その内容をやがて忘れてしまうのだとしたら、一体「読んだ」というのは、どういうことを指すのだろうか。こうした問題を通して、本書は書名通り、いかにして、「読んでいない本について語る方法」について教えてくれる。■まず大事なのは、 本を読むことは、本を読まないことと表裏一体である。ということである(19頁)。あまたある本の中から1冊を選ぶということは、必然的に読まない本が増える、ということになる。■そして結局のところ重要なのは次の通り。 教養ある人間が知ろうとつとめるべきは、 さまざまな書物のあいだの「連絡」や「接続」であって、 個別の書物ではない。本書のなかで具体例として挙げられるのが、プルーストの『失われた時を求めて』やジョイスの『ユリシーズ』である。このような超長大な文学作品は、別に通読する必要はない。大事なのは、これらの作品が多くの文学のあいだでどのような位置付けなのかを知っていることであり、それさえ知っていれば、読まなくてもいいのだ。そして、読まなくても、それがどんな作品なのかが説明できればいい。■著者がこうした問題提起をするのは、基本的に大学教員としての立場からである。読んでいなくても、各作品について説明しなければならない場面が多々あるからだ。しかしそう言え、それができるとすれば、ちゃんと読んで、それについてちゃんと説明してくれる方がおり、そうした本(や情報)があるからなのだが(^_^;)。