辻邦夫:『春の戴冠』(全4巻)
【中古】 春の戴冠(1) 中公文庫/辻邦生【著】 【中古】afb■なんと、約10年ぶりの投稿です!いろいろ思うところはありますが、おいおいと──。■本書で、印象的だった場面を2つほど記しておこう。ひとつは、ボッティチェリが有名な「春」を描く際に、古典学者である主人公が、示唆を示唆を与える場面だった。絵画において、ある種、理念というものがこういう風に込められていく様は、興味ぶかかった。■もうひとつ印象的だとすれば、ボッティチェリを主人公としているようでいて、実際は「フィレンツェ」(本書ではフィオレンツァ」であることで、ということは、ルネサンス時代に都市国家の寄せ集めだったイタリアの、社会的、政治的、経済的背景が、メディチ家の盛衰を含めて、複合的に描かれていることだった。当然、権力闘争はなまなましく、後半に登場する修道士に先導されていく若者たちの姿は、なかなか考えさせられる。