Mary’s　Bar

深夜1時、3回も目が覚めた。
3時、また目が覚めた。

なんか嫌な予感…というのも、プライマリーの患者さんの具合が悪かったのでした。


その朝、いつもより早く出勤してやっぱり…と思いました。
モニターに、カルテに、その患者さんの名前がない…。


深夜1時過ぎ、亡くなったそうです。3時は、ご自宅に帰られた時間。
看護師がそんな非科学的な!と言われそうですが、虫の知らせ、みたいなものだったのかな、なんて思ってしまいます。


昨日の帰り際、夜勤に引き継いだあと、ご本人とご家族に｢今日から4日間勤務なので、明日も伺いますね。｣とご挨拶して退室したのに、間に合いませんでした。



最後は、お気に入りのダンヒルのオーダーメイドスーツに身を包み、奥様セレクトのCHANELのネクタイを締めて帰られたそうです。

もう打つ手がないと言われていたので、ご帰宅の際のお洋服はどうするか、ご家族とお話をしたところでした。
お洒落な方だったとお伺いしていたので、病院の浴衣はらしくない!彼らしくおうちに帰って欲しい、というプライマリーナースの勝手な願望。
ご家族も、葬儀までしばらくはご自宅に帰らせて、たくさんの方に会ってもらいたいとのご希望があったので、ご本人のスーツ着用を希望されました。
ご家族のご用意が間に合わなかったときのために、と浴衣も用意していたのですが、間に合って本当に良かった。


看取ってくれた先輩が｢お洒落なスーツに、ピンクのネクタイがとてもお似合いだった｣と教えてくれました。

…ピンク。

以前、ピンクのパジャマがとてもお似合いで顔色もよく見えたので、お着替えの時に奥様とそのことについて話していました。
｢ピンクはあまり身に着けないんですけど、退院したらYシャツかネクタイでも買ってあげようかしら。｣と奥様がおっしゃっていました。
もしかして、覚えていてくれたのかなぁ…。


そして、最後に｢ICUの看護師さんは完璧でした。｣とのお言葉を奥様からいただけたそうです。
朝、愕然としている私に、主任さんが教えてくれました。



つらかった闘病生活。
思いのほか長くなってしまった闘病生活です。

これからは夢の中で、お気に入りのスーツで、奥様との思い出の帝国ホテルデートを楽しんでいただけますように。

そして、悲しむご家族が一日でも早く立ち直れるように、見守っていてくださいますように。

悲しいながらも思い出深い、いい1日でした。





今日のハッピー*いいことも悲しいことも、すべていつかは思い出になること