動物写真家 星野道夫
先日鳥の本を探しに本屋に行った時、隣の棚に星野道夫の写真集が並んでいた。動物写真家 星野道夫、1996年カムチャッカ半島でヒグマに襲われて死亡した写真家といえば想い出す方もいるだろうか。星野道夫は私の大学時代の同級生だった。彼は高校時代にアラスカに行っていた為、留年して大学に入ってきた。私は一浪で入った。後で分かったのだが彼の方が私より4日だけ遅く生まれた。彼とは教養課程の2年までが同じクラスで、それまでは時々会って話をした記憶がある。私は大学の野鳥の会に所属していたので、週末に大学から直接山中湖や軽井沢に鳥を見に行く時は、ゴム長を履いて、リュックを背負い、プロミナーを持ったまま授業を受けていた。動物写真を志していた彼が、ある日私に声をかけてきた。私が野鳥の写真を写すと思ったらしい。私は野鳥の写真は写さなかったが、昆虫や野草の写真は得意だったし、田村栄という写真家に憧れていて、野鳥撮影に関する知識もかなりあった。必修科目に彼も私もたまにしか出なかったので、会う機会は少なかったが、会うと写真の話をよくした物だった。当時は彼に私が教えるような立場だった。今度一緒に鳥の写真を写しに行こうかなどと話したが、実現はしなかった。卒業して暫くして、新聞などで彼が本物の動物写真家になったことを知り驚いたものだった。私など食べていくことを第一に考えてしまう俗人なのに、自分がしたいことを貫いて世に出てきた彼を素直に尊敬した。そして彼の悲報。マシュルームカットで、いつもベルボトムのジーンズをはいて、インディアンが持つような布袋を肩から提げて、黒い顔に目が輝いていた彼の顔を如実に想い出した。野鳥からまったく遠ざかっていた数十年、行くこともなかった自然科学のコーナーに彼の写真集や彼の書いた本、彼について書かれた本が沢山並んでいるのをみて、改めて星野道夫を見直した。また機会を改めて書くつもりだが、彼の言う「身近な自然」と「遠い自然」。同じ事を考えていたんだと思うと、今彼と無性に話がしてみたい。