2018/09/16(日)19:18
かつて子供だった大人達に捧ぐ短編集~「8つの物語―思い出の子どもたち」
韓国ドラマ『赤と黒』最終回視聴後の衝撃からまだ立ち直っていません因果応報、厳しい…。
8つの物語 思い出の子どもたち
the rope and other stories
あすなろ書房
フィリッパ・ピアス
疲れている大人達は、何かというと、
「子供っていいよね。羨ましい。いろいろ考えなくて、夢があって」。
なんて言うけれど、とんでもない。見た目ほどお気楽ライフではないし、子供だって、いろいろ苦労はある。
同じ年令の子供達に対する意地から、本心を言えずに危ない目にあったり(「ロープ」)、意地悪な叔母さんがネコババしてしまった大事な品を、親に迷惑をかけずに取戻すために、智恵をしぼっている子もいる(「巣守りたまご」)。また、他の家族にはゴミにしか見えないまつぼっくりに、こだわる理由もちゃんと持っている(「まつぼっくり」)。
他人の気持ちや立場に思い至らなくて、悪意はないけれど、傷つけてしまう。そんな苦い経験もする(「ナツメグ」「夏の朝」)。
私たちも、確かにそんな子供時代を過ごしてきたはずだ。けれど、写真やビデオを見て、「こんな事があった」「どこどこへ行った」事実は思い出せても、なかなかその時の心情までは思い出すことはできない。ましてや今から文章におこせば、どうしても大人の視点から見た書き方になってしまう。
なぜ、フィリッパ・ピアスというオトナは、こんなに詳しく子供の心を描けるのだろう? まるで今しがた、自分が体験してきたばかりの事みたいに。ああ、羨ましい! ああ、悔しい!
そうして、懐かしさと羨ましさでたまらなくなって、8つのカップケーキをむしゃむしゃと食べるのであった。
【中古】8つの物語 思い出の子どもたち /あすなろ書房/アン・フィリッパ・ピアス (単行本)VALUE BOOKS