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2014/03/20(木)00:17

暴力から逃れるには 暴力しかないのか いえ 他の道が必ずあるはずだ~アイスランドミステリ小説『緑衣の女』

海外のミステリー&ファンタジー小説(723)

今日はあけぼののラストランを見届けようと撮り鉄達が沢山ホームにいて、駅員達に制止されてました。身を乗り出すんですもの。 こちらはアイスランドのミステリーです。  【2500円以上送料無料】緑衣の女/アーナルデュル・インドリダソン/柳沢由実子オンライン書店boox 緑衣の女 Grafarþögn アーナルデュル・インドリダソン作 柳沢由実子訳  子供達の誕生会で、ふと見ると赤ん坊が人間の骨をしゃぶっていた。衝撃的なオープニングで幕を開けるシリーズ第二作は、三つの物語が同時並行して進む。 続いて見つかった人間の肋骨の骨に絡んだ過去の事件に関する捜査パート(現在)。 この事件を担当する捜査官エ―レンデュルと娘との関係(過去プラス現在)。 暴力的な義父、彼の一挙手一投足に怯える母、障害者と見做されている娘、義父と母の間に生まれた二人の弟達という構成の家族の物語(過去)。  主役たるエ―レンデュルだが、部下が恋人から「あなたもエ―レンデュルみたいになる」と言われたり、元妻と子供二人から反発されているので「それほど悪い男なのか?」と半信半疑になりながら第二作から読んだ。。少なくとも本作を読んだ限りでは、部下の手柄を横取りしたり、無理難題を押し付ける横暴なタイプでも無さそうだ。崩壊した家族関係についても、悲惨な境遇にいる娘を必死になって探し回る姿は、とても愛情に溢れた人物のように思われた。それなのに、家族から厳しい言葉を浴びせられる彼は、実はとてもいびつな人物なのだろうか。    ところで、“いびつ”という言葉は捜査で聞き込みをするうちに、ある人が口にした言葉でもある。いびつというなら、DVに怯える家族関係はまさにいびつだ。心と体を一方的に痛めつけられる母親を、常に夫は忌むべき言葉で彼女を罵り、一度も名前を呼ばない。逃げ出そうとしては捕まり、その一連の行為を繰り返すうちに抵抗できなくなっていく彼女が辿る過程は、日本でも特集記事になったことがある。そしてその記事の終わりは、たいがい悲惨な事件だ。大方の人々は、外見は穏やかさを保っているが、いつ崩れてもおかしくないこの家庭と、エ―レンデュル達が探している骨とが、いつかどこかで結びつくのでは、と感じながら読み進めることとなろう。 作者の意図で敢えて容赦せず描かれたDV場面は、暴力の恐ろしさと愚かしさをこれでもかと見せつける。投げた拳はいつか自分の元に戻ってくるというが、拳を投げずにいられる人生を選び取る賢さを持ちたいものである。

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