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2016/09/04(日)00:15

 ビリヤード台がないビリヤード・クラブで ウィスキー&ソーダ片手に語る男の物語とは「ウィスキー&ジョーキンズ: ダンセイニの幻想法螺話」

海外のミステリー&ファンタジー小説(723)

みなさん、こんにちは。嘘とわかっていても楽しい話ってありますよね。 今回はそういう話を集めた短編集を紹介します。 ウィスキー&ジョーキンズ Whiskey&Jorkins:Fantastic Adverntures of Joseph Jorkins ロード・ダンセイニ ジョーキンズの顔とウィスキーしか見えてこない茶色のカバーが凝っている。図書館借りだとカバーが取れた状態で全部見えてしまうが、隠された所には、ジョ―キンズの話に登場したキャラクターが所狭しと散らばっており、「どれがどの話のキャラクター?」と探すのも一興。  さて、彼が出没するビリヤード・クラブは、その名にも関わらずビリヤード台がない変なクラブだ。あまり高級とも言い難い通りにあり、絵画もなく、料理もさほど美味しくない。ここまで書くと一つもいい事がないようだが、なぜか人々はクラブに集う。理由はジョーキンズの話が聞けるからだ。口を滑らかにするために必要なのは、ウィスキー&ソーダ。彼の話は、真珠でいっぱいの海岸だの、見るもぬめぬめしい姿に転生した男だの、端から法螺と分かっているほど奇想天外な代物だが、殆どの者はそれを指摘しないで彼の話に耳を傾ける。ところが時々彼に話をさせまいという不届き者が登場して、「君はその話には不案内だろ?」とジョーキンズに振るのだが、常に「では、その話をしよう」と返されてしまう。  本編は掲載順になっているため、書き手が初めてジョーキンズと出会う『アブ・ラヒーブの話』が第一話。最初は知らんふりをしながら眼だけはウィスキーに釘付けのジョーキンズが「おや、知らないうちに…」とウィスキーを飲んでしまってから話し始めるとぼけた姿や、「今日は絶対飲まないで話す!」と宣言しておきながら、「喉が渇いているとやはり話しづらい」と言い出してやっぱりウィスキーを煽るシーンはクスリと笑いを誘われる。  それぞれ読者の好みもあろうが、面白かったのは『Idle Tears流れよ涙』だ。古の名曲を見つけてしまった男が、税金を一切払わん宣言に踏み切る。確定申告の時期に何とタイムリーな羨ましい話題だが、取り立てにきた税務署職員も、何だ何だとやってきた警察職員も皆曲を聴いて泣き出すという「何だそりゃ」という話だ。これだけ感動させたあげくのオチがたった一行というのも面白い。 収録作 「The Tale of the Abu Laheebアブ・ラヒーブの話」「In a Dim Room薄暗い部屋で」「Elephant Shooting象の狙撃」「The Charm Against Thirst渇きに苦しまない護符」「The Lost Romance失なわれた恋」「The Development of the Rillswood Estateリルズウッドの森の開発」「The Pearly Beach真珠色の浜辺」「African Magicアフリカの魔術」「A Friend of the Family一族の友人」「Idle Tears流れよ涙」「What Jorkins Has to Put Up Withジョーキンズの忍耐」「The Walk to Linghamリンガムへの道」「How Ryan Got Out of Russiaライアンは如何にしてロシアから脱出したか」「Ozymandiasオジマンディアス」「The Secret of the Sphinxスフィンクスの秘密」「Jorkins in Witch Wood魔女の森のジョーキンズ」「Jorkins’ Rideジョーキンズ、馬を走らせる」「A Queer Island奇妙な島」「The Sultan,the Monkey and the Bananaスルタンと猿とバナナ」「The Sign徴」「The Napolitan Iceナポリタンアイス」「Jorkins Consults a Prophetジョーキンズ、予言者に訊く」「The Visitor夢の響き」 解説コラムとして「アデンとジョーキンズ」「食卓と幽霊」「ユニコーンのこと」「原始の自然の力」「オジマンディアス、王の中の王」「幻の都を求めて」「キルケと神秘の生き物たち」「ナポリタンアイス、緑は何味?」「一獲千金の夢」九篇収録されている。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】ウィスキー&ジョーキンズ [ ロード・ダンセイニ ]楽天ブックス

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