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2017/03/06(月)00:12

父である前に王であった英祖 王子である前に息子として愛されたかった世子~映画「王の運命―歴史を変えた八日間―」

韓国映画(71)

みなさん、こんばんは。また北海道で「死刑になりたかった」からと殺傷事件が起こっていましたね。 イギリスではEU残留か脱退かを巡って議員が亡くなっています。 暴力で解決しようと言う風潮があるのは困ったものです。 さて、こちらは朝鮮史上最も悲しい親子の物語です。 映画王の運命―歴史を変えた八日間―を見ました。 王の運命―歴史を変えた八日間― Sado/The Throne 出演  ソン・ガンホ ユ・アイン ムン・グニョン キム・ヘスク ソ・ジソプ 監督 イ・ジュンイク  朝鮮第21代国王の英祖は40才を過ぎ授かった息子・世子(王子)を、学問と礼法に秀でた王に育て上げようとする。だが王の望みとは裏腹に、世子は芸術と武芸を好む自由奔放な青年へと成長。英祖が抱いていた世子への期待は怒りと失望に転じ、世子もまた親子として接することのない王に憎悪にも似た思いを募らせていく。二人の関係は悪化の一途をたどり、ついには王への謀反にかこつけた息子である世子に自害を迫る。  ソウルから少し南に下った水原に世界遺産・華城がある。父の墓陵の少しでも近くにいたい正祖が都と定めた地であるが、残念ながら正祖の死によって遷都は実現しなかった。さほどに息子に恋われた父は、実の父によって米櫃に閉じ込められて死んだ。1762年に実際に起きた「米びつ事件(壬午士禍)」である。罪人だったから罰として閉じ込められたのか。否、罪人には出来なかった。そうすれば、現王は罪人の父となり、次の世継ぎは罪人の息子になる。だからといって生かして置くことはできなかった。  英祖は朝鮮史上最も在位期間が長く、数々の善政を敷き孫の正祖に引き渡した。そんな彼が終生苦しめられたのは出自の卑しさだ。TVドラマで描かれたように、彼の母親はムスリと呼ばれる下働き。朝鮮では母親の出自によって子供の身分が定まる。英祖は王妃の養子となることで我が身を繕えたが、誰もが彼の出自を知っていた。一とき王妃となったチャン・ヒビンの息子である兄が亡くなってから、彼への風当たりは一層強くなる。    だから彼は「法令」「礼節」「格式」に拘った。誰よりも正しく、誰よりも賢くあるよう努めた。人一倍努力することによって、ようやく皆からの反発を跳ね返すだけの自信を持てたからだ。重臣たちとも押したり引いたりしながら危ういバランスを保っていった。  ところが生まれながらの王子である息子には、父の気遣いも不安も苦労もわからない。老獪な重臣に阿り堅苦しい法律に拘る父としか思えず、次第に心が離れてゆく。二人を繋いでいた英祖の王妃や継母の大王妃が亡くなると、間に立つ者がいなくなり、感情をぶつけあうしかなくなった。「わかってくれ」と言えない父と、「わかって欲しい」と不器用に訴える息子は、最後まですれ違い続けた。  祖父の自分への期待と息子への失望と苛立ち、父の祖父に対する反発と愛を渇望する焦燥感、何か起こると自分の耳も目も塞ぎ全身全霊で自分を守った母。孫の正祖は、幼いながら全てを見ていた。そして一番傷ついた。その傷が、彼を朝鮮後期の名君に為し得た。世界遺産の華城では、二代に亘る父恋うる息子の呟きが聞こえる。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】王の運命 -歴史を変えた八日間ー [ ソン・ガンホ ]楽天ブックス

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