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2016/11/02(水)06:12

カソリックのロミオとプロテスタントのジュリエット 目に見えぬバリケードに阻まれて…『ふたりの世界2バリケードの恋愛』

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みなさん、おはようございます。 明日はお休みですね。嬉しいです。 中休みなのでゆっくりしたいです。 さて、こちらは昨日紹介した本の続編です。 ふたりの世界2バリケードの恋愛 Across the Barricades ジョアン・リンガード 晶文社 第二作では、第一作から三年が経過している。セイディーはデパートの売り子として働き、ケヴィンは彼に気がある少女ケ―トの父親の職場で、クズ鉄回収の仕事をしている。前作でケヴィンの妹ブレーデが怪我をして、憎み合うことに疑問を持った二人は、お互いに好意を抱くようになる。ところが家族をはじめとする周囲の目は二人に厳しくて…。  前作では仲の良い子供として見逃されていた二人が、思春期に突入した事でにわかに周囲から注目される。二人を見た周囲の反応は反応は、単なる嫌悪感情を向けられるにとどまらない。ケヴィンに至っては職場を失ったり濡れ衣を着せられたり、リンチにあったり…という、実害を伴うものになってゆく。特に二人に対して風当たりがきついのではなく、ベルファストの街全体が、爆発騒ぎがあったりIRAの爆弾テロがあったりと、前作に比べてかなりきな臭くなっている。人々が知らぬうちに日常の暴力に慣らされている所以であり、恐ろしい。  セイディーも職場でカソリックの男性とつきあっていることをあてこすられ、かっとなって仕事を辞めてしまう。喧嘩っ早くて何事も決めたら早い、直情的なセイディー。彼女ほどではないものの、すぐかっとなる性格のケヴィン。似た者同士に見える二人でも、前作より増えた一家を支える責任感をひしひしと感じ取っているケヴィンの方が、兄がいるセイディーよりも様々な所で感じる圧力は強い。タイトルの‘バリケード’はプロテスタントVsカソリックの両者の間を隔てる壁の事でもあり、家族を含める周囲が若き恋人達に向ける世間の壁でもある。だが本作の原題がAcross the Barricades―バリケードを越えて―であることからも、彼等はこの壁の前で立ちすくむのではなく、乗り越えていくことが期待されているのは明らかだ。  そうはいっても、彼等はまだ非力な十代であり、二人で壁は越えられない。そこで越える助けとなってくれるのが、セイディーの中学時代の恩師であるブレーク先生だ。無職になったセイディーに仕事を与え、カソリックとプロテスタントの夫婦を支援するなど、広い心の持ち主だ。家族や友人とは異なる立場の大人に出会えた事で、セイディーとケヴィンは「考え方は一つではない」事を学ぶ。ようやく居場所を見つけて落ち付くかに見えた二人だが、前作同様、ここでもある事件が起こり、二人が行動を起こすきっかけを与える。  生まれついての価値感と、相手に抱く愛情の板挟みになった現代のロミオとジュリエットは、幸せな未来を掴むことが出来るのか?

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