2019/04/15(月)06:45
優れた作品を書きながらも赤狩りに苦しめられた脚本家~映画『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』
みなさん、こんばんは。第二次大戦後、アメリカで盛んになった赤狩りを知っていますか?
映画界も巻き込まれてしまいました。
本日紹介するのは優れた才能を持ちながら迫害された実在の脚本家の生涯を描いた映画です。
トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
TRUMBO
出演
ブライアン・クランストン ヘレン・ミレン エル・ファニング ダイアン・レイン
監督
ジェイ・ローチ
『恋愛手帖』で第13回アカデミー賞脚色賞にノミネートされ、着実にキャリアを積んできたダルトン・トランボ。しかし、第2次世界大戦後の冷戦下に起きた赤狩りの標的となり、下院非米活動委員会への協力を拒否したことで投獄されてしまう。釈放後、彼は偽名で執筆を続け、『ローマの休日』をはじめ数々の傑作を世に送り出す。
映画は三つの時代に分けられる。
1.共産党員として映画人たちの地位向上を訴えながら 売れっ子脚本家として裕福に暮らす
2.非米活動委員会に召喚され刑務所に 仕事が来なくなり偽名で脚本を書く
3.実力が認められ映画人がトランボを起用
栄光の絶頂から奈落へ、そしてまた復活を遂げるまでの波乱万丈の人生だ。
映画の世界にどっぷりつかったトランボが見る俳優たちは、私たちが映画で見るイメージとは異なる。例えば西部劇では押しも押されもせぬヒーローを演じるジョン・ウェイン。共産主義者のトランボを激しく攻撃するが
「私は沖縄で従軍記者をしていた ヘッダの息子はフィリピン エディはヨーロッパの戦争情報局にいた 君の従軍地は?落ち着け 自分が勝ったかのように話すなら従軍地を言ってみろ 映画のセットでは空砲を撃つだけだ 殴るならメガネを外そう If you're gonna talk about World War II as if you personally won it, let's be clear where you were stationed - on a film set, shooting blanks, wearing makeup, and if you're going to hit me, I'd like to take off my glasses.」
所詮空想の戦争しか知らないだろ、と一蹴されてしまう。
ギャング映画で裏切り者を抹殺する悪の親玉を定席とするエドワード・G・ロビンソン。彼は仕事を得るために委員会で仲間の名前を口にして、自らが裏切り者となった引け目をその後一生感じて生きる。
例外ながら、イメージ通りという俳優もいる。マイケル・ダグラスの父カーク・ダグラスだ。彼は不遇時代のトランボに『スパルタカス』の脚本を依頼したため「トランボを解雇しないなら私がやるKirk, if you don't get rid of Trumbo, I will.」と脅されるが「よかれあしかれ私がスパルタカスだ And right after I quit, you can re-shoot all my scenes. You see, Ed, for better or worse, I AM Spartacus.」と映画のヒーローの如く、意志を貫く。
3つの時代を通じてトランボと対峙し続けた人物ヘッダ・ホッパーを演じたのがヘレン・ミレン。女優時代は売れず、ゴシップコラムニストに転身してから今の人気ブロガー並みの影響力を持つ彼女がスタジオ経営者や俳優に働きかけたため、あっという間にトランボの居場所はなくなる。しかしやがて彼女の脅迫にも動じない俳優が現れ、トランボが脚光を浴びる日がやって来る。姿勢が揺るがぬ役というのは大事だ。彼女自身が揺るがなくても周囲の反応が変わることで、時代の趨勢を伝えることができる。
ホッパーやウェインなど、トランボと意見を異にする人達を敢えて悪役と言わないのは、ラストに登場するトランボが「it will do you no good to search for heroes or villains. There weren't any. There were only victims. 英雄や悪党を探しても何の意味もありません いないのですから いたのは犠牲者だけ」と述べているからだ。この映画は誰かを責めるためでなく、罪の意識を抱く人達への許しと、過ちを認め、二度と繰り返さない戒めに重きを置いているのだ。
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