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2019/08/15(木)00:00

「あなたはお母さんの本当の子供じゃないの」あら“叔母さん“それを言っちゃあおしめいよ!(寅さん風に)~小説「グレアム・グリーン全集〈22〉叔母との旅」

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みなさん、こんばんは。お盆休みも終わりですね。帰省ラッシュでしょうか。 今日もグレアム・グリーン作品を紹介します。 グレアム・グリーン全集〈22〉叔母との旅 Travel With My Aunt 早川書房 実直に働いて銀行支店長まで上り詰め、退職したヘンリーは母の葬式で叔母オーガスタに会った。しばらく会っていなかったのは、母親がどうやらオーガスタを毛嫌いしていたかららしい。そんな事を知ってか知らずかオーガスタはヘンリーに告げる。「あんたはあのお父さんの子供ですからね。お母さんのじゃない。」  「母親が死んだら明かしてくれ/明かして欲しい」と頼まれたわけでもないのに出生の秘密をあっけらかんと話したオーガスタは、しゃっくりが止まらなくなったヘンリーを旅に誘う。ところがヘンリーが「ちょっとそこまで」だと思っていた旅は、とんでもない場所に繋がっていた。  オーガスタはヘンリーの「母」の妹なのだから、自ら宣言した通り二人は赤の他人である。だからヘンリーに付き合う義理はないが、断り切れず彼女についていく。自宅と職場の往復しかしていなかったヘンリーの世界は、パリからオリエント急行に乗って、スイス、イタリア、イスタンブール、ついには、南米アルゼンチンからパラグアイまで広がってゆく。オーガスタが出生の秘密を知ってくよくよ悩むであろう“甥”の今後を考えて誘ったのなら深謀遠慮の人なのだが、生憎彼女の真意はわからない。真意どころか、旅の途中で彼女が話すこれまでの人生も、一方的に語られるだけでどこまでが真実なのかもわからない。ワーズワスというふざけた名前のオーガスタの自称恋人といい、彼女の知合いと称する人達はどこか胡散臭げで、血縁関係の真実が明かされた以上、ヘンリーに付き合う義理はない。これまで石橋を叩いて渡るタイプだった彼が、一人の人間として、考え方も生き方も全く異なる“叔母“をどう受け止め、自身どう変わってゆくのかが見どころである。叔母との会話場面が圧倒的に多く、何度も舞台化されているのも納得。 ​叔母との旅【電子書籍】[ グレアム・グリーン ]​​楽天Kobo電子書籍ストア​

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