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2020/12/18(金)00:00

現代版プロスペローの復讐は成るか?  小説「語りなおしシェイクスピア 1 テンペスト 獄中シェイクスピア劇団」

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みなさんこんばんは。全国的に年末年始GOTOトラベルが中止になりましたね。 さて今日はシェイクスピアを現代によみがえらせた作品を紹介します。 語りなおしシェイクスピア 1 テンペスト 獄中シェイクスピア劇団 Hag-Seed マーガレット・アトウッド 集英社 『テンペスト』はシェイクスピア最後の作品と言われる。半沢直樹の倍返しを凌ぐ、復讐に次ぐ復讐の嵐の物語を書いた彼が最後に選んだのは、主人公が復讐ではなく融和を選ぶ物語だった。  『テンペスト』の演出に心血を注いでいた舞台芸術監督フェリックスは、ある日突然、部下トニーの裏切りにより職を奪われた。フェリックス=プロスペロー、トニー=アントーニオである。失意のどん底にあるフェリックスには、『テンペスト』と異なり娘もいない。妻を亡くし、次に娘も亡くした彼は、孤島ならぬあばら屋に一人で住み、やがてプロスペローと同じように復讐を誓う。  但し、お偉い大公だったプロスペローに対して、フェリックスが舞台監督を下ろされたのには納得できる理由がある。宇宙人が出てきたり、とある登場人物が吸血鬼になったり、極端な差別意識を喚起するような要素を持ち込むなど、世界のニナガワもびっくりの演出を繰り出してきた。また、演出家にありがちだが、才能はあっても、必ずしも皆から好感を持たれるタイプではない。その点、圧倒的な魔術を駆使して舞台を引っ張る強烈なキャラクターのプロスペローとは異なる。  やがて刑務所の更生プログラムの講師となったフェリックスは、服役中の個性的なメンバーに、シェイクスピア劇を指導することになった。好まれるシェイクスピア劇が圧倒的に悪が栄える『リチャード三世』や復讐劇だったり、囚人たちの台詞解釈やキャラクター分析が妙に的を射ていたり、エアリエルがフェアリー(ゲイを想起させる)からと言ってなかなかキャスティングが決まらなかったが、現代の特殊効果マンだと説明すると応募が殺到するなど、クスリと笑わせるネタが仕込んである。  12年後ついに好機が到来する。大臣にまで出世したトニーら一行が、視察に来る。披露する演目はもちろん、上演するはずだった『テンペスト』。舞台劇の上演は、果たして復讐になるのか?  巻末にオリジナルのストーリーが紹介されているので、原作を知らずとも楽しめるが、登場人物達の台詞の中に『テンペスト』他シェイクスピアの台詞が挿入されているので、オタク心が騒ぐ人&元キャラクターがどうアレンジされているか興味がある人はぜひ原作の御一読を。    世界のベストセラー作家が、シェイクスピアの名作を語りなおすシリーズ第一弾として選ばれたのが本作である。語り手はマーガレット・アトウッド。『侍女の物語』『昏き目の暗殺者』など、暗い未来やしかつめらしい作品のイメージが強い彼女の作品には珍しくコメディ。 ​語りなおしシェイクスピア 1 テンペスト 獄中シェイクスピア劇団 [ マーガレット・アトウッド ]​​楽天ブックス​

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