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2023/10/30(月)00:00

小竹由美子さんがYA小説を翻訳!~BOOKMARK1号紹介~小説「タトゥーママ」

海外の絵本・童話・児童書・ティーンズ小説(165)

みなさんこんばんは。こんばんは。ラグビーワールドカップで南アフリカが史上四度目の最多優勝を果たしましたね。 また今日から小冊子BOOKMARKに紹介された本を紹介します。 タトゥーママ The Illustrated Mum ジャクリーン・ウィルソン 偕成社 小竹由美子さんといえば、アリス・マンロー『ディア・ライフ』『林檎の木の下で』 ネイサン・イングランダー『アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること』など、大人向け小説の翻訳が知られている。しかし以前はYA小説も訳していた。本編もその一つだ。  主人公ドル(ドルフィン)は、異父姉妹の姉スターと母親のマリゴールドの3人暮らし。マリゴールドはシングルマザーで生活保護を受けており、紹介された住居で暮らしている。体全身にタトゥーを入れており、時折入るタトゥーのデザインしか収入源がない。情緒不安定で、いきなり学校にやってきては、クラスメイトに話しかけたりするので、はらはらする事も。それでもドルはママが好きだった。そんな時、スターの父ミッキーと再会し、マリゴールドは皆で暮らすことを夢見るのだが。  表紙イラストが子供っぽいが、内容は情緒不安定な母親と生きる姉妹の物語でかなりシリアスだ。この時代に既にヤングケアラーが取り上げられていたのは早い。本編は10歳のドル視点だが、13歳のスター視点だと、保護されるべき子供でありながら、保護者でもあるヤングケアラーに焦点を当てた内容になったはずだ。だから、先にマリゴールドから離れるのがスターなのも当然だ。ドルがマリゴールドの奇行を見ても何とかやり過ごしてこられたのは、相当スターがフォローしてきたからである事が、彼女の台詞からも窺える。マリゴールドがやっと33歳なので、スターは20歳で生んだ子、後に登場するドルの実父は、彼女の存在すら知らなかった。マリゴールドは、生活設計など全く考えていない、行き当たりばったりの生活を送ってきた女性なのだ。それでも何とか家庭としての体裁を作ろうとするものの、周囲との齟齬が出てきてしまう。彼女自身も幸せな家庭で育ったわけではないが、だからといって子供にそのツケを払わせていいはずがない。  今起こっていることを「なんか変だ」と感じながらも、母親と離れるのが嫌で取り繕ってきたドルが健気だ。そして日本の福祉機関も隠そうとする家族の壁をなかなか壊せない。希望が見えるラストにはなっているが、家族だけで解決できるとは到底思えない。適切なアドバイスができる第三者を入れた息の長い救済が必要であろう。 200年度ガーディアン賞。 ​【中古】 タトゥーママ​​ムジカ&フェリーチェ楽天市場店​

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