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テーマ:ショートショート。(573)
カテゴリ:リクエストフィクション
リクエストフィクションです。
お題は[組体操][お茶][ししゃも]です。 タイトル「世界が平和になる新発明」 「できたぞ!これで世の中が平和になる」 「博士、今日は何を発明したんですか?」 「これだっ!」 そういいながら博士が持っていたのは一見、ごく普通の急須だった。 「急須?ですか?これで世の中が平和に?」 「うむ。昔から、茶柱が立つといいことがあるというだろう?そこでだ、誰でも、いつでも、好きなだけ茶柱が立てられるという急須を発明したのだ」 「はははは。回りくどい方法ですね」 「平和的な方法と言って欲しいなぁ。たとえば、核兵器から守るために核武装するなんておかしな話だと思わないか?我々、科学者の脳は平和のために使われてこそなんぼだ!と、私は思う」 この博士は時々すごいことを言う。いつもは何を考えているかわからない、もしかしたらマッドサイエンティストか?と思うこともあるほどなのだが、こういうことをいわれると、今までついて来たのは間違いではなかったと改めて思わずにはいられなくなる。 「ほら、これを見てみろ」 博士が持っている湯飲みの中には確かに茶柱の立ったお茶が入っていた。 「おお、確かに立ってますね、茶柱」 「うむ、さらにこういうこともできる」 博士が再び淹れたお茶には円を描くように無数の茶柱が立っていた。 「おお、すごいですね、茶柱がいっぱい」 「だろ。ちょっと嬉しくなってくるだろ」 「そうですね、だんだん楽しくなってきました」 「そうだろう。君もやってみたまえ」 「はい」 「まず、用意するのは、この急須と、茎茶だけだ。あとは普通にお茶を入れる。すると、水分子の働きの影響でプログラムどおりに茶柱を立てることが出来る」 「なるほど、プログラムで茶柱をコントロールできるんですね」 「うむ、たとえば、茶柱でピラミッドを作るなど、組体操みたいなことをさせることも可能だ」 「おおー、タワーなんか作ったら派手ですね」 「そうだな、実際に人間で作って、もしも倒れたりしたら、ししゃも出るような10段なんて高さのタワーでも湯飲みの中になら完璧に作れるぞ」 「それはおもしろそうですね。やってみましょう」 「どうだ?できたか?」 「ええ、すごいですよ。10段のタワーとその横に5段のタワー、さらに両サイドにブリッジを作りました」 「おお、すでに湯のみじゃなくて、どんぶりでやっているのか、君の貪欲さはさすがだな」 助手が用意したどんぶりの中には、小さいながらも10段のタワーを中心に両サイドに5段のタワー、さらにその外側にはブリッジがきれいに出来上がっていた。 「でも、博士、この、ブリッジの横にある、丸いのって何ですかね?」 「むむっ?」 確かにブリッジの外側に丸い物が2つ並んでいる。 「取り出してみてみよう」 それは、丸まった茶柱だった。 「私のプログラムミスですかね?」 「いや、プログラムは完璧だよ。これは体育座りしている茶柱だ。人数的に余ったんだろうな」 おわり お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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