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カテゴリ:ショートストーリー
花見の席の話
たぶん、女子社員に人気の社長さんなんでしょう。 男子社員は、あっちに行っちゃって、女子社員に囲まれて、とても楽しそうです。 女子社員たちも、まるでオヤジさんに話すように、 言いたい放題で、社長さん、頭を抱えたり、苦笑いしたりです。 実は、この会社、近々、株式公開も、といわれている優良企業です。 その名物社長は、少し酔ったのか、 「もうそろそろ、社長にあきた。誰かに譲りたいくらいだ。君、やらんか」 「いやよ。お嫁に行けなくなる…」 指を指された女の子、半分笑いながら、即座に反応しました。 他の女子社員たちが、 「やっと、これまでの苦労が実るというのに」 と言うと、真っ赤な顔の社長は、 ろれつの回らない口でニヤニヤしながら子供の頃の話を始めました。 もう、何度も何度も聞かされている話です。 「オヤジは、サラリーマンで、家に帰ると、酒ばかり飲んで、上司や社長をうらやん でばかりいた。俺には、偉くならないかん。下っ端は、苦労しても報われへんのや… なんて言ってたから、真に受けて、18の時から土日もなく働いて金貯めて、この会 社を始めた。そしたら、なんや、サラリーマンの方が、ずっと楽だ。社長は、会社が 儲からなくて、自分に給料がないときでも、社員に給料をはらわなきゃいかんし、家 に帰っても、仕事をしなきゃならん。酒のんでも、酔えないよ。つくづく、わかった よ、社長は偉いんやなくて、体がえらいんや…えらい違いや」 こんな社長の話を、女子社員の皆さん、 「酔ってる…酔ってる…」 と、くすくす笑いながら聞いていました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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