可能性の有り方
ユウ小噺「君は並行世界の存在って信じるかい?」他の人たちにゲーム機などを取られ、とても暇そうにしているコハクに僕は話しかけた。「……パラレルワールドってヤツだろ?、突然何だ、それがどうしたか?」「もしもの世界だよ、一つの可能性」「だから、それがどうしたんだ?」「悪魔の寿命は無限大なんだよ」「……そうだな」僕が気まぐれに突拍子も無いことを言うのはよくあることで、コハクは呆れ顔で返してくれたいや、「呆れ顔」というよりも「あきらめ顔」のほうが正解かも。「僕たちにとって、君と居るこの瞬間は一瞬にしかすぎないかもねえ」「ああ、そうかもな……生憎私は長生きする気はないんで」「もったいないなあ、もったいない、君も僕たちの仲間になればいいのに」「仲間って、悪魔だろ?イヤだな、それともコンゴトモヨロシクとか言うべきか?」「もー」「時が流れた」「時が流れた、僕は花束を持って来た、あの子のために。」僕はテスタを引き連れて墓参りへとやってきた「こうして墓参りに来るのも何回目かな、鈴木家……僕の墓でもないのにね」ユウは変わらない少年の姿のままで笑っていた。テスタが墓の周りを見渡した。「あの時の皆、墓参りに来てるんですね、意外にもサテライトたちも、花で一杯……」「……皆、どれくらいお花を持ってくればいいのか分からなかったからなんかもう、 お墓が、お墓が大変なことに」「なんかもう墓じゃありませんねこれ、あと鈴木家の文字見えなくないですか?」そうテスタと話をしながら、僕はお墓(のようなもの)に語りかけた。「一瞬だったよ、僕にとってはね、君にとっては十分に生きたというだろうけど 僕にとっては足りないんだ、足りない、時間が足りないんだ」僕は花束を墓前に置こうとした「やり残したことがまだある」僕は花束をまた手元に戻した「テスタ」「はい」テスタはいつもの薄笑いの表情で返した。「帰ろう」「また、帰るんですか?」「やり残したことがある、それをやるために」「……わかりました、主人の幸福は部下の幸福です」「時間を戻す」そう言うとテスタは目を大きく開き、眩しい光に包まれたかと思うと、消えた。「今日からここに一人暮らしするのかー、いいのか?」ナガヒサがダンボールを片付けているコハクに話しかける「一人暮らしは前々からの夢だったしな」兄と妹で話しているとそこにもう一人の兄がやってきた「あ、ヤマネだ、どこへ行ってたの?」「ヤマネ兄いの事だから寝てるんだと思ってたんだが」「なんかさっきから外ピンポンポンポンってうるさいんだけど……ねむれん」「あら、近所の人とかかね?行ってくるからダンボール片付けといてー」「わかった、安心して行ってくるといい」玄関へと走っていった、ドアを開けるとそこには見知らぬ少年が立っていた。「……あれ?どこかで会いま「はじめまして」コハクの言葉を遮るように、少年は話した。「僕の名前はユウです、こんごともよろしく。」そういって、持ってる花束をコハクに渡した。