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カテゴリ:スターツ出版文庫
2024年8月刊 スターツ出版文庫 著者:クレハさん 名家・華宮の当主であり、伝説のあやかし・天狐を宿す青葉の花嫁となった真白。幸せな毎日を過ごしていた二人の前に、青葉と同じくあやかしを宿す鬼神の宿主・浅葱が現れる。真白と親し気に話す浅葱に嫉妬する青葉だが、浅葱にはある秘密と企みがあった。二人に不穏な影が迫るが、青葉の真白への愛は何があっても揺るがずーー。特別であるがゆえに孤高の青葉、そして花嫁である真白。唯一無二の二人の物語がついに完結! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用 登場人物 華宮真白=青葉の妻になった令嬢。 華宮青葉=伝説のあやかし・天狐の宿主。 久宝浅黄=鬼神の宿主で青葉の昔馴染み。 七宮莉々=真白の義妹。 天狐の宿主である青葉との挙式を無事に終えた真白。 娘を溺愛する藍一郎は、真白も他の花嫁候補達のように島から追い出されるものと期待していただけに最後までこの結婚に文句を言っていたが後の祭り。 二人の留守中、七宮家で後妻が好き勝手しているとの報告があり、泣く泣く東京へ帰って行った。 父の泣き落としに少々うんざりしていた真白が、ホッとしたのも束の間、この後に控える初夜のことで緊張の最高潮にいた。 が、青葉は一人ドキドキしている真白を他所にさっさと寝てしまったので目が点。流石の天狐の宿主も不仲な母親との再会や挙式で気疲れしたのかもしれないが、何もしないの? 早々に寝息を立てている彼に、まぁ、今夜はしょうがないかと彼女も眠りに就いたのだが、その後、幾日経っても彼から求められることは無かった。 これはどう考えてもおかしい。 真白がそれとなく将来、子供は何人くらいほしいですか?と話を振ってみると、授かりものだからなぁと言いつつお前との子なら何人でもとの答え。 何だ、子供は欲しいのねと胸を撫で下ろしていると、その後に続いた青葉の言葉に彼女は眩暈を覚えた。「早くコウノトリが連れて来てくれると良いな」 真面目な顔の青葉に、なんでコウノトリ?と尋ねれば、情操教育にと渡された絵本に書いてあったと言うのだ。しかし、いくらここが孤島とは言え、当主に不便が無いようにと最新設備が整っているし、都会に勝るとも劣らないほどの品揃えのショッピングモールもある。 当然Wi-Fiも通っているのでネットで幾らでも情報は得られるはずなのだが。 ふと気になってそれを尋ねると、スマホやタブレットは与えられなかったと言う。以前から物凄い知識量なのに、変に世間知らずだったりと気にはなっていた。 これは問い質す必要がある、翌日、青葉の補佐兼教育係の千茅に疑問をぶつけた。青葉に意図的に偏った教育をしていないかと。 答えは予想通りのものだった。 代々の当主は次代が決まるまでこの島で暮らし、出ることはない。 だからこそ、無駄に外界での楽しみや、男女の知識を身に付けさせた結果、出奔でもされた日には目も当てられない。 ある程度年齢が行ってから代替わりするなら常識も判っているが、青葉が宿主になったのは異例にも5歳だった。さぞかし操作しやすかったろう。 千茅の話を聞いて真白は怒りを覚えたが、代々の世話役がそうして来たのだし、彼だけを責めるわけにはいかない。彼女は言い分は判るけれどそれは青葉の為にはならないと彼に世俗や愉しみを教えてあげたいと宣言。反対するかと思っていた千茅も是非お願いしたいと頭を下げた。 きっと長年、彼も疑問に思っていたのだろう。 そうとなれば、使用人たちの力を借りて買い物に出掛けた真白は青葉の年代なら興味を持ちそうな本やゲームを買い込み、スマホも契約。 皆とわいわい愉しむ彼の姿を見て真白は微笑んだ。 そんな最中、真白は青葉の昔馴染み・浅葱と知り合った。 鬼神の宿主である浅葱は種族は違うものの、同じ立場の者として子供時代の青葉の良き話相手で相談相手だったらしい。 とはいえ、彼も似たような境遇のため自由な外出は禁じられている。 だからいつもここに来る彼は霊体の姿だった。 この島で彼が見えるのは青葉と母方の血を濃く受け継ぐ真白のみ。 話し上手な浅葱とは会話も弾んだが、青葉はそんな二人の姿を見て一人モヤモヤ。 ある日のこと、突然屋敷に義妹の莉々が訪ねて来た。 後妻とその連れ子の莉々を虫のように嫌う藍一郎は、先日ホストに入れ上げた挙句不倫していた後妻をあちらの有責で離婚できたと喜び真白に報告して来ていた。その際、莉々が家出して行方不明だと聞いて無責任過ぎると父を叱ったのだが、まさか私を頼って来るとは。 親戚のゴリ押しで嫌々後妻と結婚した父は彼女達を毛嫌いしていたけれど、家族になるのだから真白は二人と仲良くしたいと思っていた。まぁ儚い望みではあったが。 莉々には散々嫌がらせされたので、意地でも真白の元には来ないと思っていたのだが、相当追い詰められているのかもしれない。 でもどういう理由があろうとタダ飯食って部屋に泊まるのは論外と、相応の労働を求めた。提示した条件にすぐに憤慨して出て行くかと思いきや、莉々は素直に従い使用人に混じって働き始めたので真白もビックリ。どちらにせよ、彼女とはじっくり会話する時間を取らなければ。 数日後、屋敷で会合が開かれることになり、真白は部屋から出ずに待機していた。 新参の莉々も今日ばかりは手伝いできることもないと、珍しく彼女とトランプに興じていたのだが、部屋の外に護衛がいるはずの真白の部屋に見知らぬ男が入って来て固まる二人。 男の姿を見て「お父さん」と呟く莉々の姿を見て、継母の前夫だと理解したが、硬直する娘になんと男は金を無心して来たのだ。七宮家にいた頃、莉々はよく外泊していた。藍一郎はふしだらだと怒っていたけれどどうやら家と学校を突き止められ、莉々は父親から逃げ回っていたらしい。 事情を知った真白は義妹を守るべく奮闘、彼女の気を察知して青葉が駆け付け男は捕らえられたのだが、不思議なのはセキュリティ完備であちこちに警備や護衛がいるこの屋敷に男はどうやって侵入したのか。難しい顔をしていた青葉は翌日何食わぬ顔でやって来た浅葱の霊体に向け、昨夜の騒ぎはお前の仕業だなと問いかけ・・・。 真白の継母はクズでしたけど、その娘の莉々は思っていたよりも素直で良い子だったことが今回判明。実の両親が揃って毒親とか本当に子供がかわいそう。 七宮家で多少は良い暮らしが出来ても、そのせいで父親から金を無心され、拒否すると暴力を振るわれていた莉々。妬んでいた義姉を頼ってでも逃げたかった気持ちは判るというもの。 事情を知った青葉と藍一郎が父親が二度と彼女に近づかない様手を打ち、莉々は後に屋敷の古参のメイド・葵子との養子縁組が決まってこの島に暮らすことに。 良かったねぇ、莉々。今作で一番印象が変わったのはこの子かもしれない。 一方、莉々の父親を連れて来て屋敷に侵入する手を貸したのは浅葱でした。 彼は孤独だった過去の青葉を見て自分と同じと境遇だと留飲を下げていました。でも、久方ぶりに訪れたら彼は妻を娶り使用人たちとも仲良くやっている。 無性に妬ましくなり、今回の騒動を思いついたのだと白状。 宿主は崇め奉られてはいても自由はない。浅葱は青葉以上に過酷な環境に置かれていて、力の尽きかけていた彼はいずれ死を迎える。 やるせなくなった浅葱が嫌がらせしたくなったのもなんか判る。 真白はそんな浅葱の救済を望み、同じ気持ちだった青葉が行動に移し・・・っていう展開です。あらすじではこの浅葱について言及されてますけど、実際のエピソードは少な目。 割とこの問題もあっさり決着がついたし。 実際は青葉の為に色々奮闘する真白と使用人たちの話が主だったと思います。 書き下ろしの短編は浅葱について。彼の解放後はこんなやり取りがあったんだよと補完的な内容でした。 元がアンソロジーの短編なので、ぶっちゃけこの2巻は蛇足感が否めなかったけど、主人公たちの幸せと共に周囲も幸せにという展開は嫌いじゃないかも。 評価:★★★★★ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.08.31 13:07:14
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