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カテゴリ:蜜猫
2024年10月刊 蜜猫文庫 著者:七福さゆりさん 第八王女アンジェリカは身分の低い側室の娘で、継母の王妃や異母妹に蔑まれ虐待されていた。初めて出席した夜会で友好国の皇帝エルンストに気に入られた彼女は、腹を立てた継母に彼を誘惑して暗殺しろと命じられる。従わねば育ててくれた祖父母を殺すと脅され進退窮まった彼女は身投げしようとするがエルンストに助けられ求婚される。「大丈夫だ。優しくする」彼の国に連れ帰られ溺愛され幸せを噛みしめつつ花開く彼女は!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用 登場人物 アンジェリカ=ネモフィラ国第八王女。 長らく王妃と異母妹によって虐げられていた。 エルンスト=ブーゲンビリア国皇帝。アンジェリカを見初め国へ連れ帰る。 ジュリア=ネモフィラ国王妃。 ドロシー=アンジェリカの異母妹。 イルザ=ブーゲンビリアでのアンジェリカの専属侍女。 ネモフィラ国の王女・アンジェリカは、国一番の美女と言われていた母・テレサに瓜二つなことから、王妃に疎まれ、虐げられていた。 テレサは片田舎に領地を持つウィルキンソン男爵家の次女で身分が低い。国王のお手付きになった後は側室にと望まれたが、その時王には既に幾人もの側室がいたことから辞退。妊娠が判明してからも王には連絡せずに実家でアンジェリカを産み育てていた。 だが、テレサは産後病を患って早逝し、時を同じくしてアンジェリカの存在がバレ、祖父母たちの必死の抵抗も虚しく彼女は王宮に引き取られた。5歳で身内と引き離されたアンジェリカを待っていたのは王妃からの壮絶な虐め。王妃・ジュリアは死しても尚、国王の愛を独り占めするテレサを心底嫌っていた。当然、その娘のことも憎い存在。 自らが産んだ王子・フランシスと王女・ドロシーを巻き込み、王妃を恐れ巻き沿いになるまいと他の側近達もアンジェリカを虐げ始めたのだから堪らない。 それでも、13年間彼女は独り耐え続けた。 そんなある日のこと、国王から今後は積極的に社交の場に出るよう命じられた。王は王妃を信頼してアンジェリカを任せていた。その裏で壮絶な虐めを受けているなど到底知る由も無く、滅多に顔を見せないのも内気な性格故だと思い込んでいる節がある。 どうやら王妃が上手い事言い包めているらしい。 この命令は王に言わせれば娘を心配した親切心なのだろう。しかし、これが王妃の怒りを煽った。数日後の国王の誕生日祝いの舞踏会がアンジェリカの社交デビューになる。父の手前、色々用意はしてくれたものの、ジュリアとドロシーは会場で目立つような真似はするなと厳しく言い含めた。まぁ、お前みたいな醜い娘、誰も声を書けないでしょうけど、と嘲笑われ悔しいと言うより悲しい気持ちに。 舞踏会当日、着飾ったアンジェリカの美しさに会場中の男性たちが見惚れていた。テレサとそっくりなのだから当然と国王はご満悦だったが、面白くないのは王妃たち。 次々とダンスの申し込みをされ戸惑う彼女をバルコニーへ連れ出すと二人がかりで𠮟りつけた。扇で叩かれ足を踏まれるのに耐えていると、さも空気を吸いにやって来たと言わんばかりにテラスから入って来たのはブーゲンビリアの皇帝・エルンストだった。 彼は、三人に挨拶しするとアンジェリカをに庭を案内して欲しいと頼んで来た。ネモフィラ国はブーゲンビリアの友好国で多大な援助も受けている。エルンストの言葉に逆らえるはずも無く二人を送り出した王妃は憎々し気に彼女を睨んでいた。 庭園に出ると足は大丈夫か?と聞かれ面食らっていると、足を踏まれていたのをしっかり見ていたと言う。さぞ不快だったろうと謝罪すれば、俺も似たような目に遭っていたからと苦笑するエルンスト。彼は三年前に先代皇帝と皇妃、腹違いの弟を処刑して皇位を継いだ男だ。世間では冷血皇帝などと言われているが好戦的で戦争好きの先代が死に、疲弊しきっていた国民達はエルンストを英雄視していた。アンジェリカもこうして気遣いができる彼は優しい人だと思う。 一時だけどエルンストのおかげで気づまりな会場からも、王妃たちの嫌がらせからも逃げられた感謝の言葉を述べて部屋に戻ると待ち構えていたのは王妃とドロシー。 二人は短剣を彼女に渡すとエルンストを誘惑し、暗殺して来いと命じて来たので、さすがに突っぱねた。出来ないならお前の実家を潰してもいいのよと潰され、結局引き受ける羽目になったのだが、騎士としてもすこぶる強いと聞く彼を自分などが殺せるはずもない。 王妃たちは私の存在が気に食わないだけ、なら、私が命を絶てば男爵家は見逃してもらえるかもしれない。王宮の最上階から身を投げようとしたアンジェリカを救ったのは、眠れず散歩に出ていたエルンストだった。泣きじゃくる彼女を宥めて部屋に連れ帰ると、上手く誘導して事情を全て聞き出した彼は怒りに燃えた。王妃はエルンストを害すつもりは毛頭なく、アンジェリカが返り討ちに遭うことを望んでいたようだ。さすがに彼女も王妃の真意をしって腹を立てたが、男爵家が取り潰しになったらどうしよう。 不安に打ち震える彼女にエルンストは俺の妃になればいいと提案。 ネモフィラ国より格上の国の皇帝の妃、君にもその実家にももう手を出しようがなくなる、と。この申し出は正に彼女を救える唯一の手段。このままでは王妃に虐め殺されるのを待つだけ。 初めて会った時からアンジェリカは彼に好意を持っていた。それにエルンストとは遠い昔に会ったような。明日王に話し、許可を貰ったらすぐに連れ帰ってくれると言うので、十数年ぶりに彼女は安心して眠ることが出来た。 父は彼との結婚を大層喜び、幸せになれと送り出してくれた。 王妃は最後まで反対していたが、エルンストが急な話だったので、と詫び代わりに銀鉱山を有する島を譲渡すると言う彼の言葉に黙り込んだ。これ以上ごねれば父からも不審がられる。 こうして1週間の船旅でブーゲンビリア国にやって来たアンジェリカは歓迎され、男爵家に居た頃のように穏やかな生活が始まった。 彼女には専属の侍女・イルザも付き、気の好い彼女とは恋バナに花を咲かせている。イルザの恋人はエルンストの側近だそうで、彼が結婚すれば漸く自分達も結婚できると感謝された。 そして、婚前交渉はどんどんして是非ともお世継ぎをと急かされた時は驚いたが、自分ができる恩返しはこれくらいしかないとイルザのアドバイスを受けアンジェリカなりに頑張っていた。 ブーゲンビリアにやって来てから早三ヶ月。 エルンストの命で、アンジェリカとの婚約発表の為の催しが開かれることに。 その準備に追われている時、彼の部屋で見覚えのある貝殻を見つけたアンジェリカは、エルンストと初めて会った日のことを思い出した。 まだ男爵家に居た頃、船から落ちたのか浜に打ち上げられていた兵士らしき少年。その美しい金髪に大好きな童話に出て来る金色の猫さんと名付け、復調するまで甲斐甲斐しく世話をした。 国へ帰ると言うねこさんにまじないを込めた貝殻を渡したんだっけ。まさかエルンストがあの時の猫さんだったなんて。漸く思い出したと話す彼女にエルンストも当時のことを語り、一層愛も深まった頃、婚約発表会の日、ネモフィラ国代表としてやって来た王妃とドロシーが、会場内でアンジェリカの悪評を捲し立て・・・。 レーベルの都合上、複数回の長いラブシーンは必要不可欠なのかもしれませんが、正直、それが無ければ250弱ページ中本編は100ページくらいかと。 不当な扱いを受けていたヒロインと、彼女に恩があるヒーローが救い出し溺愛。まー、王妃の言い分も判らないでもないんですよ。世継ぎの王子も産んだのに、女好きの夫は側室を10人も迎え、その他に男爵家の娘にまで手を出して子供を作ってた。 あとがきで作者さんも触れてましたが、王様の本命はテレサさんだったようです。そして両想いだった。王妃は王の前ではいい人を演じてたので、長らくその嘘に気付かなかった王は後にその事実を知って大ショック。ストレスで持病の心臓病が悪化、アンジェリカの挙式前に亡くなっています。 そりゃこれまでの妻のやらかし知ったら仰天どころの騒ぎじゃないよね。 この王様も悪い人じゃないんでしょうけども、う~~ん。 アンジェリカの悪評が大ウソなのがバレ、王妃とドロシーは糾弾され、悔しさからアンジェリカ暗殺を企てるもイルザの活躍により御用。 ネモフィラ国で相応の処罰を受ける結果に。王位はフランシスではなく、唯一アンジェリカを虐めなかった第二王子イザークが継ぐことが決まり、彼女もホッとしたのでした。 13人も兄弟がいるとさすがにまともなのもいるようで。 事件から1年後、二人は結婚。エピローグでは6人の子宝に恵まれた夫婦のやり取りが描かれて物語は幕。正に王道でシンプルイズベストなお話です。 評価:★★★★☆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.10.27 16:07:26
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