お家に帰ろう。
まっくらで月のない夜にも三日月の沈む宵の口にも家の灯りはほうほうとしている。田圃や畑や町の片隅に誰も彼もがいなくても家の灯りはほうほうとしている。それはきっと、みんながみんなで みんなを楽しんでいるあかしで孤独や、寂しさを笑い声や、喧嘩や「お風呂に入りなさい」というようなあたりまえの科白で追い払っていることなのだ。もしも、君が孤独でなれない天井に嫌気が指したなら家に帰ることだ夕餉の匂いだ食卓と四つの椅子だソファとクッションの囁きだお風呂の薪の爆ぜる音だお箸がかちゃかちゃ鳴ることだ干したてのパジャマだ太陽の匂いのお布団だ家に帰ることだ朝がきてみんなが外に出るときも「お尻を打っても泣かないのよ」と送りだしてくれる人がいるそんな家に帰ることだまっくらで疲れた躯を引きずってでも眠いまぶたをさすってでも家に帰ることだ家族を見つけることだ雨でも雪でも枯葉の季節でも家の灯りはほうほうとしているのだ。