碁法の谷の庵にて

2010/02/18(木)12:50

歴史は、バカの手によって作られる?

囲碁~碁界一般編(196)

 恐ろしく語弊がある言い方ですが、あえてこう言わせて頂きます。  囲碁データベースで紹介された、朴正祥九段の記事でふと思い当ったもので。  また、最近映画を久々に見た(映画館に行ったのは「それボク」以来)のですが、それを見て思い当たったこととも重なりますしね。何の映画かって?それは想像に任せるけど、文中にちょっとだけヒントあり。  23世本因坊坂田栄男が、かつてこんなことを言いました。(故上村邦夫九段の書いた棋書「鬼手」に収録されています) 「若い人の碁では、治勲が一番僕の碁に近い。手に対しても勝負に対してもどん欲。どんなタイトルでもみんな取りに行くというバカな点でも同じ」  と。もちろんこの「バカ」と言うのは蔑称ではないはずです。この表現を見たことから、今回あえて「バカ」という言葉を使わせて頂いております。  「建前上」は、手を抜くタイトル戦なんかあり得ないと言えるはずなのですが、(もちろん、運よく勝ち進めたので気合の入れ方が違ってくるという点はあるにしても)何でも譲ろうとせず、全力全開でやってしまおうとする。  歴史に名を残す方々と言うのは、多かれ少なかれそう言う点で「バカ」な要素を含んでいると思います。  一般人のように平凡に生きて行ってもいいはずなのに、それができず、結局破天荒なことをする。中にはそれでしくじって、悲惨な結末を遂げる人だっています。と言うか、それが普通でなければ日本は乱世でしょう。  そんな計算を超越した所で、物事を顧みず突っ走れる人物が、歴史を作ったり、例えば主人公となる…ということも、あるのかなあと言う気が最近の私はしています。 だから突っ走ればいいという訳ではないのですよ念のため。  以降余談。  朴九段が紹介した手は先述した棋書「鬼手」でも「術手」と名づけられて紹介された手です。坂田曰く「あの手は前から読んでいた」とのこと。 上村九段「打たれてみれば原理は難しくない」 朴九段「現代碁の一流棋士なら逃さない」 と、飛び抜けた評価をされている訳ではないにしても、(正直なところ、アマ高段レベルの私も、「問題として出されれば」あの手は出せる気がします)当時はけっこう一世を風靡した高名な一手のようですし、碁の方はその手の後も凄まじい大乱戦が繰り広げられた名局なので、鑑賞するとよいでしょう。  また、「鬼手」には、上村九段が集めた古今の鬼手がたくさんあります。  坂田の手が相当多く、山部俊郎九段と打った際の「快手」、岩田達明九段と打った際の「血手」、藤沢秀行九段との名人戦を制した「逆手」、など様々な坂田妙手が収録されています。(個人的には、逆手って普通の手じゃないの?と思うのだけど)  あの本に載っているので一番好きなのは、秀策が秀甫相手に打った「痺手」とか趙治勲が加藤正夫に打った「魔手」あたりですが、上村九段は「苦しい時は坂田頼み」というほど坂田の碁から取っていますので、色々見てみるとよいでしょう。  後日、この本で一つ記事を書いてみようかと思います。

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