日本橋三越本店の『第67回 春の院展』に行きました。
今回、院展同人の中で最も素晴らしいと思ったのは、好きな画家の手塚雄二『おぼろつくよ』と、福王寺一彦『月光』。どちらも月が描かれているのですが、手塚雄二の『おぼろつくよ』はタイトルの通りぼんやりとした満月で、それが叙情的で素晴らしかったですし、月の周りに描かれている枝葉がきれいなグラデーションになっていて、色彩も素晴らしかったです。福王寺一彦の『月光』は、昨年の院展に出品された作品に似ていて、背景にはっきりと描かれた満月、それに重なるように枝にとまった鳥が描かれていていました。夜空の群青と月の黄金色に色彩の美しさが感じられ、小さな鳥がたった一羽でいることで凛とした雰囲気がありました。絵葉書も、この二枚がよく売れていたので、人気が高かったのだと思います。
その他の同人では、昨年の東日本大震災が起こったことから、日本美術院理事長の松尾敏男と、好きな画家の大野百樹が五浦を描いていたのが印象的でした。また、大野逸男が『冬の田』という作品で、タイトルの通り冬の田んぼが描かれていたのですが、冬の寂莫とした雰囲気がしみじみと感じられ、渋くてなかなか良い作品だと思いました。
同人以外では、好きな画家の一人、加来万周が奨励賞を受賞していたので、自分のことのように嬉しかったです。モノトーンで獣道のような風景が描かれていたのですが、堅固な存在感のある作品でした。前回の院展で注目し始めた狩俣公介の作品もあり、前回と同じような作品でした。永井健志は院展で観るのを楽しみにしていた画家の一人ですが、特に素晴らしいという感じでもありませんでした。グループ展で観た作品の方が良かったです。同じく気に入っている画家の野地美樹子の作品は、雲が広がった夜空に満月があり、寂しげな細い木が一本描かれているのですが、その叙情性と臨場感は実に素晴らしかったです。何か賞をあげても良いのではないかと思いましたし、入場者にどの作品が気に入ったかという投票を行ったら上位にランクされるのではないかと思いました。秋の院展でまた作品を観るのが楽しみになりました。また、最近気に入り始めた齋藤ゆりあの作品は草花が描かれていて、女性らしい柔らかな雰囲気の作品でしたが、しばらく観ていたら人のシルエットが見えてきて、なかなか面白い作品でもありました。
帰りに、手塚雄二、福王寺一彦、それから西田俊英の鹿の絵葉書を買いました。秋の再興院展も楽しみです。
日本美術院