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2016/05/15
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 1991年12月25日、68年と360日間続いたソ連邦は、自己崩壊して多数の独立国家を誕生させた。この段階でアメリカが仮想敵としていた最大の連邦国家が消滅してしまったため、米政府は安全保障政策の見直しをするよう同盟国から迫られた。湾岸戦争はその年の一月に開始されたものであり、その前年90年の夏には、イラクによるクェート侵攻が先に起きていた。連合国軍を組織する必要性を、米政府は当時中東でよく認識していた筈である。この手順にこそ秘密があったと思われる。

 その前の年の89年11月には、ベルリンの壁が機能しなくなっており、中国の民主化運動の発端となった天安門事件は、同じ年の夏、六月四日既に起きていた時代であった。80年代後半から90年代の前半にかけては、世界的規模の政治と経済に大きな変化が、立て続けに起きていた激動の時代であった。経済的変化の先駆けとなったのは、85年秋のプラザ合意。この時からドル安政策が始められたため、それが円高進行を伴って大量の外資が日本市場へと上陸し、古今未曽有のバブル経済をうみだす準備が進められていたのである。バブル経済で大量の資本を受け入れた日本は、土地への投資が投機となるほどの資本を集め、日本全土を席巻するかの如き状態で、資本が強く渦を巻いていた時代でもあった。それだけ高度な円高圧力を受けていた、ということになるだろう。

 バブル経済の崩壊は、プラザ合意から五年後の、90年四月一日のことである。その半年前に閣議で了承されていた政策が施行され、不動産融資に天井となる大枠が設定された。これにより土地に対する先行投資に上限が設けられ、手持ちの資産を売却してからでなければ、土地を新たに仕入れることができなくなったのである。日本経済の突出した急成長ぶりは、計画経済から離れらなかったソ連国民に、乗り遅れた繁栄であることを強く意識させ、支配体制を相対化するそのキッカケとなったのである。ソ連崩壊の前の五年間に起きていたことというのは、コンピューター技術の革新に次ぐ革新による急速な進化と、経済成長を牽引する動力源となっていた、日本の土地神話に基づく、バブル経済の急速な膨張だったのである。

 アメリカの最大の仮想敵と見做されていたソ連が、突如として消滅してしまったため、軍事予算を増やす必要性を不意に失った米政権は、ソ連の統制経済にうんざりしていた国民が、支配体制の変更を求める機運の高まりを察知して、88年までに新たな敵を生み出す必要性を、早々と認識していたように思われる。イラクで専制政治を行っていたフセインを密かに唆し、隣国クェートヘの軍事侵攻を実施させていたその行為には、様々な憶測を呼ぶ要素が多く残されていた。

 ソ連にとってかわる敵対勢力を欲していたアメリカは、世界最大の軍事力を誇示する機会をこの時に得て、連合国軍を組織して、たちまち湾岸戦争にけりをつけることに成功した。パパブッシュの時代には、こんなことがおきていたのである。その後湾岸戦争で増税された米国民は、共和党政権から民主党政権へと乗り換え、パパブッシュは一期四年で退いて、クリントン政権へとバトンを引き継いだ、という経緯を史実に残すこととなったのである。

 湾岸戦争で米軍の能力を世界に示したアメリカは、反米国家の雄を自認していたリビアのカダフィを自発的に帰順させ、軍備の増強が世界平和の実現にとって不可欠、という認識を米国民だけでなく、世界中の政府へと植え付けたのだった。クリントン政権の時代にリセッションから抜け出し、二期八年続いた民主党政権は、双子の赤字で苦しんでいたアメリカの財政に、想定外の黒字決算を残して、ブッシュジュニアへと政権を引き継いだ。最初の同時多発テロとなった9.11は、新大統領就任の翌年、2001年におきている。このタイミングの良さというものが、同時多発テロを米政権が誘導した、という疑いを発生当初から米国民に疑わせていたのであった。共和党政権が軍産複合体制を主軸とする、エスタブリッシュメントを土台とする政権だ、という歴史的背景をもっていたからであった。

 軍事予算を増大させる政治環境というものは、軍産複合体制にとって必須の与件。敵の不在は最先端を走る軍事力を擁するアメリカにとって、経済的にもマイナスとなる全体的な負の要素。ソ連の崩壊が後のイラク戦争に繋がっていったのは、アメリカの権益拡大と軍産複合体制の利益拡大との共通目的が、そうさせたといえる過ぎ去った時代の出来事。時系列を遡って過去を眺めると、今までまったく見えていなかったものが、卒然として見えてくることがある。歴史の必然とは、まさしくこのようなことをいうのであろう。「平和状態の維持」にまつわる因果関係の連鎖が、「平和状態の実現」を却って遠ざけていた、ということになる展開が史実へと、ここでも再び残された。  

 文明は過去の経過から得たことを、フィードバックして将来に生かさなければならない。これを学習効果という。問題を認識する能力があれば、学習は十分に可能であろう。デフレ経済から抜け出してインフレにする、という目標の達成が丸三年以上たっても実現できずにいる、というこのお粗末極まりない現実は、当事者に学習能力がない、という事実を告げるための有力な証拠であろう。
 日本の国家としての長い低迷ぶりは、学力を競い合わせることによって、学習するための機会を逆に失わせてきた、これまでの教育システムが産み落とした、不毛な時代を築いた思考停止という名の副産物。知識の量的拡大に特化した高等教育が自らの手で産み落とした、その負の報酬という意味をもつことであったのだった。

 知識の量的拡大は学力を確かに向上させたのだったが、思考力を失わせて批判精神と、それに基づく認識能力を、若者たちから一斉に取り上げることともなったのだった。バブル経済を崩壊させた責任の自覚すらない国会の成員すべてが、経済認識能力の不在を承知することができないまま、デフレ対策に取り組んでいるというこのお粗末さ。成果が三年以上たってもまったく出ていない、というこの経過のもつ意味の在り方にこそ、寧ろ当たり前すぎるほど当たり前の理由があったことなのだ。

 軍産複合体制が政権を支援する形態の、パクスアメリカーナと称される枠組みを、それと指摘することを避けてきた連中が、世界規模のデフレスパイラルを、経済構造の内部へと連れ込んだ。インフレ経済を目指す既存の経済政策のすべては、このようにして成果が不在となったまま、失敗を自覚することなく、無効な政策のあれこれを、延々と繰り広げていなければならなくなっていた。

 今や1050兆円に達するほどにまで膨らんだ国の借金は、思考力を失った選良が寄ってタカって、捏ね上げたその結果なのである。明晰な頭脳の持ち主であったのなら、このような浅はかな展開など、予め避けることは簡単にできていた。政府内閣の判断の過ちが、国民を増税負担でいま大いに苦しめているのである。金融緩和政策が奏功してインフレが実現した、とする事実はこれまでに何一つなく、マイナス金利を逆に引きだす経過さえ生み出した。

 先進諸国にとって所期の目標であるインフレ経済の実現は、一連の経過が示す事実に鑑みると、遥かに高くまた遠い目標となっていた。学力重視の教育システムで育った高級官僚ほど、健全で正しい認識能力を失ってしまっているようなのだ。市場の虚を突く金融政策の唐突な実施は、国民の信頼を裏切って株式市場を却って混乱させた。いまほど自浄作用がこの国に求められている時代はなかったのだ。

 アメリカの政治にとって、軍産複合体制の関与は必要不可欠の要素。ドル経済圏全体にとって、過剰流動性の関与もまた同じ。軍産複合体制は敵の存在を、大前提とするものであることから、強大な敵対勢力の唐突な喪失は、進むべき方向性を見失わせるだけでなく、無用な敵を急遽作り出す必要性を政府へと迫り、無秩序に国家を誤った方向へと走らせることになる。イラク戦争ではブッシュ政権の有志連合軍に加わった、連合国メンバーの罪もまた軽視するべきではない。イラク攻撃の大義名分となっていた大量破壊兵器の不在は、イラク戦争の正当性を一夜にして消し去った。

 イラク戦争直前の段階では、ドイツとフランスが反対する姿勢をとったものの、地下資源の利権につられて、その後一転することとなり、有志連合へと加わった経緯がある。当時英国の主相だったブレアは、積極的に戦争に参加するよう国際社会をリードした。だがイラク戦争の正当性が失われたとき、率直に反省することを余儀なくされ、世界史に汚点を残す結果となった。一方日本の首相だったコイズミは、素知らぬ顔で総括をやり過ごし、引退後は反原発運動へと走ったのだが、国に残したものはといえば、失われた10年を倍の20年にしたことと、不要な改革でアメリカに大量の利益を供与して、非正規社員を量産して少子化を進め、デフレ経済へと日本全体を引きずり込んだ、ということなどに代表される十指に余る不毛な結果。自らが積み上げた罪の重さについては、未だに素知らぬ顔という有り様。日本の国民は政治指導者に対し、なるほど寛容だった訳である。






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最終更新日  2021/02/19 08:54:13 PM
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