子どもを力ずくで従わせるべきか?
私の子どもたちは、発達障害です。言葉だけでは通じないこともたくさんありました。親の目からはほほえましく映っても、周囲からみたら迷惑にしか見えない行為もたくさんしてきました。私にとってはかわいい我が子でも、社会から見たら「風変わりな子」「迷惑な子」「しつけの悪い子」にしか見えないこともよくわかっていました。私は「かわいい子だから、周囲の人にもかわいがられる子供になってほしい」と思い、ときにはきびしいしつけもしてきました。パニックを起こして床に転がる子どもをそのままにはできませんから、無理やり抱き起こして抱えて連れだしたり、電車の中でわめく子どもの口をふさいで、急いで降りたりもしました。「そんなにいやがるのになぜ電車に乗せるの?」と言われたこともありますが、歩いてなんでも用が済む場所に住んでいるわけではないので、乗り物に乗らないわけにはいかないのです。自家用車に乗ればパニックは起こしませんし、人目にもつかないので親も楽です。でも楽をしていてある日突然親が倒れたり、経済的事情で車に乗れない日が来たときに、困るのは子どもです。「迷惑だから降りてください」と言われたら、移動の手段がなくなります。徒歩でいける範囲でしか生活できなくなります。「乗り物に乗るときは、ルールに従うこと」を教え込むには、言って聞かせるだけではどうしてもだめでした。力で押さえ込む私の姿は、周囲からみたら虐待に見えたかもしれません。私は自分が鬼母だと思われてもいいので、子どもが将来人からさげすまれることは避けたいと思いました。「行きたい、と思う場所にいつでもいけること」このためには公共の乗り物に乗ることは不可欠でしたし、他の種類の社会のルールも覚えなければなりません。子どもをいつも無理やり脅していうことを聞かせていくことと、どうしても必要なことを時には力で教えていくことは、似ているようで違うと思います。私は嫌いな物を無理やり食べさせたりはしませんが、子どもが出されたものを残した時には厳しく叱ります。無理に食べさせはしませんが、「次に食べるときに同じ失敗をしないように」と教えます。食べられないものは事前に申告をする、食べられる量をもらって、もっとほしいときはお代わりをするのが我が家のルールです。「偏食のある子には無理に食べさせれば治る」という方がいますが、いやなものを食べさせられることは拷問と同じくらいつらいことだと考えていますので、子どもには無理強いはしないようにしています。二人とも強度の偏食でしたが、今は二人とも好き嫌いは少なくなりました。時には強く働きかけていかなければならない部分と、ゆっくり気長に接していっていい部分とがあるように思います。