3日連続下落のシステム(その4)
今回は、パイロン(あるいはオメガチャート)のような株式の個別銘柄のシステムで「条件にあう銘柄は全て売買する」という、資金制約を無視したソフトウエアでシステムを構築しようとしている方にとっては最も重要な問題の一つではないかと思います。前回の表は、あくまでもパイロンによって出された「シミュレーション上の」結果をEXCEL上で集計した結果に過ぎません。これがシステムトレードの最終的な指針にならないことを今回はお話したいと思います。それを確認するためには、トレード日ベースでの損益状況とトレード数などの把握が必要になります。これを実施することでシミュレーション上の結果と実トレードとのギャップを埋めることが出来ます。データ数が多くなる関係上、今回は2006年2月のトレードデータのサマリーだけを示すことにします。<表1>2006年2月のシミュレーション上の結果表の見方ですが、2月1日のトレード数は1、その損益は-27000円となります。くどいようですが、1トレードあたりの予算をここでは100万円と設定しております。2月の「シミュレーション上の」月間損益は約3177万円のプラスであり、総トレード数が843トレードであることも分かります。しかし、これはトレーダーの資金制約を全く無視したものであり、実トレードに耐えられるシステムにするためにはもう一段階のデータ加工が必要です。例えば、(必要ならば信用取引枠も含めて)システムトレードに使える予算が2000万円しかないトレーダーを想定します。上記のシミュレーションでは1トレード100万円と仮定しておりますから、このトレーダーが保有できるポジションは最大20銘柄までです。今回は持ち越しを前提としないシステムなので、日々のトレードに必要なトレード予算は トレード数×百万円です。このような資金制約を考えると、上記の表における2月14日・・・236トレード2月15日・・・32トレード2月20日・・・114トレード2月21日・・・386トレードは実行不可能であることが分かります。例えば、2月14日はシミュレーション上では236トレードとなっておりますが、実際には20トレードしか出来ません。すなわち、この4日間についてはデータの補正が必要になるのです。補正のやり方ですが、実トレードでは何らかの優先順位をつけて20銘柄に絞るルールが必要になるのですが、過去のパフォーマンスを計るという意味では「平均値が実現した」と仮定するのが良いのではないかと思います。例えば、2月14日の場合、以下のように補正します。(10,629,483円÷236トレード)×20トレード=900,804円2000万円という資金制約を考慮した場合、2月14日は90万円の利益という計算になるのです。これはシミュレーション上の利益1062万円と大きな開きがあるのは明らかです。このような補正を行った結果が以下の表です。<表2>資金制約2000万円を考慮した2006年2月の結果すると、2000万円という資金制約を考慮した場合の2月の月間損益は193万円の損失になるのです。このように、パイロンのシミュレーション上では利益になっているはずなのに、資金制約を考慮すると損失(あるいは、利益幅が小さくなる)という可能性は十分に有り得るのです。前回の日記に示した数値結果がシステムトレードの最終的な指針にならないといったのはこのような理由からです。これを踏まえた上で、構築したシステムを採用すべきか否かを決める必要があります。