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別居からまる四ヶ月たった。夫は、主婦の母親と姉に対して約束したことを以て、「これで協議離婚に応じていただけるのですね」などというワープロ打ちの手紙を主婦に送りつけてきた。
主婦にとって離婚自体は、腹を決めたようだったが、手紙には養育費の金額や公正証書の作成についての具体的な段取りが書かれていないことで、返答に迷っていたようである。 私は、主婦から相談されたとき、「結論を急がず、取り決めるべきことはしっかり話し合った方がいい」と回答した。 理由は三つあった。ひとつは、主婦の言う通り、決めるものも決めないまま離婚はできないだろうということ。もうひとつは、養育費に止まらずさらに踏み込んで慰謝料の交渉にまで持ち込んで欲しいと思っていたことである。 そして三つ目は、もしこのまま主婦が離婚してしまったら、その後、私が公私にわたって主婦の面倒を見なければならないということへの心配だった。私個人は夫をとっちめたいが、夫婦関係自体は修復の可能性はないものか、という思いがまだ私の心の中にはわずかではあるがあった。 何より私は、この時点で、主婦のことをよく知らなかった。仕事もたしかに真面目にやってはいるが、仕事で頼りになるから女性として素晴らしいということにはならない。たとえば、将来配偶者にできるのか、と問われれば私は頷くことはできなかった。 そう、もし配偶者となれば、彼女の姉と私は親戚になってしまう。姉はこの時点で籍は入っていなかったが、マッサージ師と同居している。あの酔っぱらいとはいかなる形でも金輪際関わりたくない私としては、これはどんなことがあっても受け容れられないことであった。 また、このまま離婚となると、私自身、道義的な後味の悪さを全く感じないといえば嘘になるし、この時点で見たことはないが、夫婦の一粒種である息子を可哀想に思う気持ちもあった。 主婦は夫に対して、「具体的に養育費の金額を決めたいので、そちらで出せる額をまず知らせて欲しい」という返事を出した。もっともな内容である。しかし、夫からは返事がなかった。 それどころか、子どもの世話で団地に顔を出す姉に対して、あろうことか私への中傷を復活させているらしい。曰く、「女房に仕事という誘惑を与えて家庭を壊した」だと。 けっ、要するに、またいつものアレだったわけだ。 つまり、「これで協議離婚に応じていただけるのですね」という突き放した手紙を出すが、本当は別れる気などない。主婦が「別れないでください」と返事をするのをこいつは待っていたわけだ。それが、案に相違して、「具体的に養育費の金額を決めたい」という返事が来たから、今度はこっちに八つ当たりをしていると。 こいつはホント、何もわかってない男だね。そんなことやってもダメなのに、いつまで同じパターンをくり返すつもりだろう。 夫が返事をしないので、主婦は団地に何度か電話をした。もちろん用件は、養育費についてである。 電話は、かけてもかけても留守番電話だった。メッセージを入れてももちろん何も言ってこない。何回目かの電話でやっと夫の母親が出たと思ったら、「(夫は)友達と遊びに行って疲れたから早寝した」などと言って取り次がなかったという。そして、その後も夫からは連絡はしてこなかった。 私は、こういう卑怯で不誠実で物わかりの悪い夫を軽く懲らしめてやろうと考えた。 その数日後、私は主婦と一緒に納品に行った帰りに、駅の公衆電話から団地に電話をした。といっても、団地の番号を忘れてしまった私は、主婦にかけてもらい、つながってから受話機を受け取った。 相変わらず留守番電話である。私は構わずメッセージを入れた。 「今度の土曜日、あなたの連れ合いと二人で団地にお伺いします。あなたは私といろいろ話したいようだから、そのとき、ゆっくり話をしましょう」 といっても、私は本当に団地に行く気はなかった。本当に夫と会う気なら事前にわざわざこんな予告はしない。たぶん、夫のことだから、こういうメッセージを入れておけば、土曜日までの数日間ビクビクして仕事にならず、土曜日にはプレッシャーからどこかに逃げ出すだろうと読んでいた。 そう。つまり、夫が逃げることをあらかじめ読んだ上で、からかったのである。 案の定、土曜日、夫は母親と子どもを連れて朝早くからアポなしで主婦の姉&マッサージ師の家を訪ね、遊園地に無理矢理姉たちを付き合わせたそうである。団地を留守にするだけではなく、わざわざ遊園地に付き合わせたところを見ると、自分一人だけでいるのが怖かったのだろう。 私は夫が予想通り逃げたのが面白くなって、土曜の夜、また団地に電話した。もちろん留守番電話だったのでメッセージを入れた。 「今日はお伺いしたのにお留守でしたね。ますます会いたくなってしまいましたよ。明日、なるべく早い時間にお伺いします」 翌日、夫はまたしても母親と息子付きで朝飯時から姉の家に駆け込み、この日は夜までどこにも出かけず居座ったそうである。2kに四人家族で、ただでさえ手狭になってきていたアパートに、さらに他人の三人が押しかけて一日中居座ったというのは、私だったら光景を想像しただけでストレスが溜まってしまう(笑) この連チャンで、さすがに姉がネをあげた。「逃げてばかりいないで会ったらどうだ」と夫に諭したという。 では夫は、私や主婦と会ったのか。いや、会わなかった。 次の週、また団地に電話をしてみるとやはり留守番電話だったが、今度はメッセージが入らないようになっていた。 夫よ、そんなに私が怖いのか。だったら最初から中傷なんかするな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2003.04.04 06:40:13
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