これからご紹介させて頂きます狛犬はブロンズ(青銅像)です。
この狛犬の場合、職人さんが鋳型をつくり、狛犬を量産すると言う事ではなくて、高名な彫刻家の先生が先ず原型(?)となる創造的な狛犬を作り上げて、それを鋳物専門会社が鋳型に仕立てて製作できた狛犬と思われます。
話は全く飛びますが、我家にもあります秋山巌先生の版画は、何枚/200枚と言う様に一つの版画のもとから刷り出された版画が総数で200枚であることがはっきりしておりますが、これ等の高名な狛犬さんは、その点、1点のみか、或いは限定ではあるが数体、または数十体あるのかここに見るブロンズ狛犬はどうなのか、そんな事も想像しながら4箇所の素晴らしい狛犬を拝見いたしました。
今回は撮影できましたブロンズの狛犬の内、作者がはっきりしていると思われます靖国神社の狛犬や、台座などに〇〇〇謹作と原作者のお名前や製造年月日がはっきり刻印されている生田神社と湊川神社の狛犬は製造の経緯や同じ鋳型製のものが何体あるかは明らかだと思いますが、弘前市の八坂神社の物は、台座への刻印など拝見できませんでした。
しかしながら雄渾な作風から、これまた著名な彫刻家に作であろうと感じました。
とにかく、今はブロンズの狛犬さんも一体でも多く拝見して、何かを感じたい段階でありますので見方が偏っていてもお許し願います。
撮影出来た月日順は;
1. 神戸市 生田神社 一対 この他に石造と備前焼と思われる狛犬あり
2. 神戸時 湊川神社 一対 この他に石造と備前焼の狛犬がある。
3. 弘前市 八坂神社 一対 元の狛犬のあとにこの狛犬が置かれておりました
4. 東京都 靖国神社 一対 この他に石造狛犬と中国製の獅子がありました。
でしたが、都合で靖国神社のブロンズを弘前の前に書きました。
狛犬研究の権威者のブロンズ製狛犬に関する見解について;
『日本全国獅子・狛犬ものがたり』
上杉千郷氏著 によりますと・・・
「日本に狛犬が入ってきた当初、狛犬は金属製であったと考えられていますが、その後、金属の狛犬が作られる事は少なくなり、今でもその数は多くありません。しかし、近年は、高名な彫刻家が製作したブロンズの狛犬を置く神社が増えてきました。
これらはきわめて芸術性に富み、新しい神社芸術として高くひょうかされています。
ブロンズの狛犬は今後、神社の最高の宝物になっていく可能性があるのです」
以下省略
・・・と上杉氏は評価しておられます。
また、弘前市の八坂神社の狛犬に関して、あるブログの作者が、この青銅製の狛犬を見て、(第二次世界大戦以前の物と思い込んで)・・・よく徴収供出させられなかったものだと書いておりましたが、私の理解はこの4対のブロンズ狛犬は全て終戦後の鋳造だと理解しております。
私が撮影出来たブロンズ製の狛犬達に関して感想を言わせて頂きますと、鎌倉以前の【獅子・狛犬】は、向かって左にある狛犬には角があるのが当たり前のようですが、これ等の著名な彫刻家の作もやはり『獅子・狛犬』の内、狛犬には立派な角が立っておりました。
そこに先生方の『獅子・狛犬』製作への強い意志を感じました。
但し、弘前市の八坂神社のブロンズ狛犬は、前足を折り曲げた《かまえ》型の狛犬であり
角はなく、『獅子・狛犬』型への回帰とは異なった発送であり、弘前市の地元の方々もこの《かまえ》型に魅力を感じられたものと思います
1. 生田神社のブロンズ製狛犬 「獅子・狛犬」型
向かって右側、「獅子・狛犬」を意識されて、その内の獅子として製作されている。
阿吽の阿形
後藤光行謹作 大阪 今村久兵衛謹鋳 昭和34年1月 日本毛織株式会社奉納
昭和34年と言えば1959年で今から51年前ですが、狛犬としては新しいでしょうね。
角のある向かって左の狛犬(明確に「獅子・狛犬」を意識されているはずです)
頭上に角がある狛犬 阿吽の内阿吽形
尻尾の形も沢山存在する石造の狛犬と違って、独自の彫刻と思われます。
生田神社ブロンズ狛犬の尻尾
後藤光行さんは、インタ-ネット検索では、1791年~1876年(明治9年没)と有りま
したので、同名の2代目、或いは3代目の作か昔の鋳型によるものか、今のと頃は未
調査です。
ご承知の通り、この生田神社は藤原紀香算の挙式場としても一躍有名になりました
が、1995年阪神淡路大震災で倒壊したものの、今は完全に復興して数多くの参拝
者が参っております。
2. 湊川神社のブロンズ狛犬 「獅子・狛犬」型
4月17日(土)珍しい好天気の午後、太陽光線の具合で素人カメラマンは撮影に苦労
致しました。
ご本殿に向かって右側の阿吽の阿形、「獅子・狛犬」のうちの獅子
ブロンズでそれ自体が光るので、ご本殿側から撮影・・・素人です。
『 朝雲謹作』 と刻印されておりました。
ご本殿に向かって左側の、阿吽の吽形 角がある。
この狛犬にも角がある。
彫刻家山崎朝雲氏は慶応3年(1867年)生まれ、昭和29年(1954年)没、文化功
労者
実は、前述の狛犬学の権威者上杉千郷先生の名著【日本全国獅子・狛犬ものがた
り】のなかで、上杉先生は、
・・・また、神戸の湊川神社にあるブロンズ狛犬は、有名な平櫛田中の作品で
す。
以下省略
と記述しておられましたので、4月17日(土)午後、三田から勇躍出かけました。
結果としては、このブロンズは朝雲謹作と刻印されておりました。
疑問を感じてお若い宮司さんに質問を差し上げました所、ご本殿をご案内下さいま
して、実は平櫛田中先生の彫刻はご本殿の中にある事を教えて下さり、拝殿の中
でその木製の「獅子・狛犬」が見える所までご案内してくださいました。
平櫛田中先生の作品は;
(1) 木製で彩色されたものでした。
(2) ご本殿のご神体近くにあって、ご神体を確り守護している、そんな構えでした
ご神体へカメラを向けることが厳禁らしくて。遠くからお見せ頂いた感じでし
た。
(3) やはり鎌倉以前の古式にのっとり?獅子・狛犬型で、狛犬には角が有りまし
た。
上杉千郷先生の著書は、何か情報が錯綜して誤記されたものかと思いますし、
この著作発行後正しい情報を入手されていることでしょう。
文中の平櫛田中氏は明治5年(1872年)生れで、昭和54年(1979年)没107歳
彫刻界の高名な方だそうで、湊川神社も大切にしておられる感じでした。
いずれにしても湊川神社には、この木製とブロンズの他に、備前焼の狛犬が一
対有って、前述の若い宮司さんもこの狛犬は有名ですと説明してくれました。
3. 靖国神社のブロンズ狛犬 「獅子・狛犬」型
靖国神社 ブロンズ 「獅子・狛犬」の獅子 阿吽の阿形
靖国神社 ブロンズ 「獅子・狛犬」の狛犬 阿吽の吽形 角あり
4月26日(月)、はとバスで横浜観光へ出かける予定で神田のホテルに宿泊しており
ましたが、東京には靖国神社と上野公園にまとまって狛犬がある事を承知しており
ましたので、家内が起きる前の早朝地下鉄で出かけました。
あの天を突く大鳥居の下まで辿った時、あの直線的な大鳥居に頭を下げました。
あまりにも広大な境内で、ジョギングよろしく走って参拝し、写真を撮影させてもらい
ました。
4. 弘前市、八坂神社のブロンズ狛犬 《かまえ》型
島根県松江の構え型ブロンズ狛犬
構え型のブロンズ狛犬 向かって左側 阿吽の吽形 角なし
かまえ型は尻尾の大きさ、スタイルなどに非常に特徴が有ります。
間違っているかもしれませんが、この前足を折ったかまえの狛犬は松江が発祥とさ
れており、石造で多く見られますが、ブロンズでこの狛犬を弘前で見て驚きました。
作者や鋳造企業などの資料が台座などに残されておりませんので、詳細は不明です
が、第二次世界大戦後の作だと考えます。
しかしながら力のこもったこの堂々たるこの構えの狛犬もきっと名のある彫刻家に彫
刻が鋳造の基になっているものと思われます。
何分資料不足で、ミスが多いかもしれませんが、撮影出来たブロンズ狛犬は、ずべてが本物であり、それぞれの神社に貢献しておられる事だと思います。