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カテゴリ:おかあさんのつぶやき
友人が娘さんの成人式の写真を見せてくれた。
自分が着た赤い総絞りの着物に、着付けてくれた方から借りたという黒地の帯を結んでいた。 なかなかかわいい装い。 見た目はいまどきの若いお嬢さんだ。 素直に母親の着た着物を着るなんて偉いなぁって思った。 数年前、我が家の沖縄娘は成人式には出席しなかったし、着物に袖も通さなかった。 秋に一日がかりで「前撮り」というのをしたから写真はある。 着物は新調せず、帯だけは奮発して(数十年前のものはなぜか短かったんです…)いわゆる私の「おさがり」を着せた。 お古と言っても長いことタンスの肥やしだったため、保存状態も良く、 体型も若い頃の私と変わらなかったのでお古には見えなかった。 でも本当は今流行の柄やきれいな色のものを着たかったのだろうなぁと思う。 高い学費を払っていたし、遠慮もあったかな。 実は前撮り以前にもこの振り袖を着せたことがあった。 五月、若葉の季節。 ホスピスに入っていた私の父(娘にはおじいちゃん)に見せるため。 サプライズのひとつとしてチャプレンに相談すると、 傾聴ボランティアをしている方がきれいに着せてくださった。 病室に現れた孫娘の振り袖姿に父は驚き、喜んでくれたが、 そこにいた誰もがその意味をわかっていた。 もちろん父自身もね…。 新聞社に勤めていた父はカメラや写真も趣味のひとつだった。 私の成人式にもカメラ二台でシャッターを押し続けてくれた。 が、何本も撮ったフィルムはなぜかぜーんぶ失敗。 私の成人式当日の写真は一枚も無い。 そろって写真に収まっているはずだった身内一同をがっかりさせ、総スカンを食った。 が、あの時、一番落ち込んでいたのはおそらく父だったのだろう。 孫が着た私の振り袖をみてそんな苦い思い出を噛み締めていたかもしれない。 あの頃は日々、皆が父のために何ができるかを考えていたから夢中だったけれど、 生まれて初めて着た振り袖姿が死に行く祖父にみせるためなんてかわいそうだったかなぁと今になって思う。 沖縄でも成人式に振り袖は着るのかなぁ? 娘にとって、振り袖姿はどんな思い出なんだろう。 成人の日、行き交う晴れ着姿のお嬢さんたちを見ながら父を想った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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