日本の格下げ
“I’ve just heard about it. I’m not familiar with the matter, so please ask me later.” Kan told reporters in Tokyo more than an hour after the news was released. (『いま初めて聞いた。そういうことに疎いので、改めてにしてほしい』と菅首相は報道されて1時間以上たった後、記者団の質問に答えた)などと海外でも流れました。菅首相曰く「詳しく聞いていないという意味だった」そうですが、2002年5月31日の「菅直人公式サイト」(http://www.n-kan.jp/)の『格付け』(http://www.n-kan.jp/2002/05/post-1294.php )では「日本の国債に対するムーディーズの格付けが二段階下がった。景気回復が見込めず財政悪化に歯止めがかからないと見られた結果。日本の国債はほとんどが日本国内で消化されその多くは銀行が買っている。通常なら格付けが下がれば国債も下がるのだが銀行は資金運用先が国債以外に無いため、国債の価格が下がらないという奇妙なことになっている。外国に資金が流出し始めれば一挙に国債は暴落する恐れがある。能天気な総理や財務大臣には分かっているのだろうか。」と、残っています。。。。。【日本国債格下げ】米国の格付け会社の「スタンダード&プアーズ(S&P)」が、1月27日(16:51 JST)日本国債の格付け(外貨建て・自国通貨建て長期ソブリン格付け)を、「AA」から「AA-」に引き下げると発表しました。 『日本のソブリン格付けを※「AA-」に格下げ、アウトルックは「安定的」』 http://www2.standardandpoors.com/portal/site/sp/jp/jp/page.article/1,0,0,0,1204864374577.html 海外の格付け機関による日本国債の格下げは、約8年ぶり(直前は2002年11月)のことでしたが、S&Pは、1年前の2010年1月に日本国債の格付けの方向性(Outlook)をネガティブとしていましたから、日本の債務構造の改善がなければ格下げになるものと予想されていたものですから、債券・為替・株式市場の反応は大きなものではありませんでした。格下げ後の格付け方向性も「安定的」であり、当面はAA格水準で推移し、更なるA格への格下げはないと予想されています。【格付け推移】日本の格下げは今に始まったことではありません。そもそも、日本の格付けは最上位のAaa(AAA)でしたが、1998年にMoody'sが格下げし、最上位格付け国から外れたのです。しかし、Moody'sがA格に格下げ後、引き上げている中での今回のS&Pの格下げには意外感があります。S&PMoody'sFitch1998/11/1現在AAAAaaAAA1998/11/17 Aaa ⇒↓Aa1 2000/6/29 AAA ⇒↓AA+? 9/8 Aa1 ⇒↓Aa2 2001/2/22AAA ⇒↓AA+ 11/26 AA+ ⇒↓AA 11/28AA+ ⇒ ↓AA 12/4 Aa2 ⇒↓Aa3 2002/4/15AA ⇒↓AA- 5/31 Aa3 ⇒↓A2 11/21 AA ⇒↓AA-2007/4/23AA- ⇒↑AA 10/11 A2 ⇒↑A1 2008/6/30 A1 ⇒↑Aa3 2009/5/18 Aa3 ⇒↑Aa2 2011/1/27AA ⇒↓AA- 【国債の保有構造】日本の国債のほとんどが日本国内の金融機関により保有され、海外の保有は小さい。これが、格下げがあっても国債の市場に大きな影響を与えない理由です。政府の意向に反した行動をする日本の金融機関はいませんから。主要国の国債保有構造 %(財務省、各国中央銀行)【国際比較】S&Pの主要な外貨建てソブリン格付けは(http://www2.standardandpoors.com/portal/site/sp/jp/jp/page.topic/ratings_s/2,1,9,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0.html )、「AAA」;アメリカ、フランス、ドイツ、イギリス、カナダ、オーストラリア「AA+」;ベルギー「AA」;スペイン、カタール、スロベニア「AA-」;日本、中国、クウェート、サウジアラビア、台湾「A+」:イタリア、チリ「A」;アイルランド、韓国「A-」;ポルトガルとなっています。でも政府債務残高の国際比較政府一般債務残高のGDP比)でみると、悪化し続ける日本の特異な債務残高は格付けが低いのは十分に理解できます。政府債務残高の国際比較(OECD Factbook 2010より作成)政府一般債務残高GDP比General government gross financial liabilities As a percentage of GDP(OECD FACTBOOK 2010)http://www.oecd-ilibrary.org/docserver/download/fulltext/3010061ec074.pdf?expires=1296320053&id=0000&accname=freeContent&checksum=AF1D016CB1BF441D17F8C8F54DB683B9公債残高の累増(財務省)http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/004.htm 【株式市場への影響】格下げの理由・日本の政府債務比率のさらなる悪化懸念・長引くデフレの影響・民主党政権の債務問題に対する一貫した戦略の欠如は、内外の投資家は十分に解っている事であり「驚く」ことでもありません。為替も短期的には円安に振れたもののすぐに戻りました。格付けはS&Pだけでなく、既出のように他の格付け機関との差もあります。機関投資家としては、格付け機関の格付け、市場のコンセンサスのリスクとリスクの今後の方向性との乖離に収益の源泉があると考えています。格下げで長期金利が大きく上がることにはならないでしょう。仮に、金利が上昇すれば国債費などの増加で問題は大きくなります。むしろ、少子高齢化や年金・社会保険負担の拡大などの財政問題に対し政府の経済成長戦略、中長期的に有効な社会保障制度改革、消費税増税などの財政再建策が今の日本には必要不可欠であるという警告があることには変わりはありません。日本の債務は、来年は1000兆円を超えます。格下げは、財政問題と同時に民主党の国政運営が問題となっています。S&Pは日本のソブリン債の格下げで、東京都や愛知県などの地方自治体、政府系機関、東京電力など電力、都市ガス7社をAA-に格下げしました。しかし、トヨタ自動車をはじめとして輸出企業は、グローバル化が進んでおり、国債の格付けの影響は受けていません。円安が大きく進行するとは思えませんが、円安は輸出企業にとって当然ながらプラスに働きます。格式市場は、むしろ、エジプト情勢などの地政学的リスクや世界的な株価の調整局面への警戒感の方が大きくなっています。