イワンノバックの回顧録

2011/10/18(火)11:59

臓器提供意思

世相雑感(718)

 職場の健康保険証が更新され、新しいものを受け取った。ヘレンにも彼女の分を渡した。今回もらったものはカード式で、裏に臓器提供の意思表示を記載するようになっている。  臓器提供意思表示は専用のカードが厚労省の関連団体から配布されているし、運転免許にも記載できるようになっているようだ。ただ、私の免許証は古いタイプなのか、記載欄はない。  「臓器提供意思表示って・・・どうしようか。」  私たち夫婦も時折終末医療について話し合うことがある。結局、延命治療は拒否しようとお互いに確認しあっている。では、臓器移植についてはどう考えるか。  臓器移植しか延命の方法がないと宣告されたら確かに心は揺れるだろう。命が惜しいのは誰しも同じ。ただ、人も他の全ての生き物と同じくその命は有限だ。いずれこの世を去るときは必ず来る。早いか遅いかの差だけだ。  臓器移植によって救われる命はある。医学技術の進歩によって、移植後かなりの年月を生きている人もいる。しかし、私たち夫婦は子供たちも成人したし、余生を送る身だ。他人様の臓器をいただいてまで生きるに値するとも思えない。臓器移植は希望しないだろう。  ではドナーになるのはどうか。私の死後、遺族が私の臓器を提供しようとそれは私にはどうすることもできないことだ。一方、あってはならないことだけれど、ヘレンが先に逝ってしまったら私はその体を傷つけたくはない。臓器提供はしたくない。それによって救われる命があると考えると悩むところだが、目前にそういう状況があるわけでもないからか、やはり生まれたときと同じ姿で旅立って欲しいと思う。ヘレンも同じ考えだった。  意思表示カードに何と記載するか。提供しないと明示すると、臓器移植を希望しながら一日千秋の思いで待っている人たちに冷たいようだし、死んでしまえば肉体は物にすぎないと考える進歩的な人たちには軽蔑されることだろう。意思表示をしないという選択もある。  いろいろな考えはあるだろうが、私たちは私たちの考え方でいきたい。結局、万一のときに第三者に私たちの気持を振り回されたくないからはっきりしておこうと意思表示欄に「提供意思なし」と記載しておいた。

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