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テーマ:暮らしを楽しむ(388451)
カテゴリ:大人のための癒し本
癒しの本: 『にぐるま ひいて』
< 文 ドナルド・ホール 絵 バーバラ・クーニー> 親子4人の自然の中での暮らしはシンプルで、それ自体で完結しているものに見えます。 でも、実際には、経済社会の循環の中にあるものなのです。 家族4人の1年間の汗の結晶は、市場で売られ、お金に交換されます。 「 うしを ひいて 10日 がかりで おかを こえ たにを ぬけ おがわを たどり のうじょうや むらを いくつも すぎて ようやくのこと ポーツマスの いちばへ ついた 」 父さんは、ポーツマスの市場で、家族が作った品物を次々の売っていきます。 「 とうさんは ひつじの けを うった。 かあさんが つくった ショールも うった。… りんごも はちみつも … かえでざとうも がちょうのはねも うった。」 そして、一切合切を売り払うのです。 「 それから とうさんは かえでざとうの あきばこを うり りんごの あきだるを うり じゃがいもの あきぶくろを うり それから からの にぐるまを うった。 「 さいごに うしを うり げんきでなと はなに キスをした。 うしの くびきと たづなも うった。 」 荷車や牛まで売ってしまうのですから、身軽になって、ポケットにお金があるだけです。 そのお金で、買い物をします。 ・暖炉で煮炊きするための鉄の鍋。 ・娘のための刺繍針。 ・息子にはほうきを作るバーローナイフ。 ・家族みんなのために、ハッカキャンディー2ポンド。 そして、また長い道のりを、家族の待ちわびる家路につくのです。 この家族の生活は、経済社会のシステムに汲み入れられたものでしょうか? そうとも言えるでしょうが、ここではあくまで必要最低限の「道具」の調達ですね。 生産が生活の中心にあって、そのための道具を買っているんですね。 道具を手に入れて、またいつもの、ゆったりした、変わらぬ生活が営まれるのです。 この話を通して、伝えようとしたメッセージはなんしょうか? 私には、この話が、消費社会に生きる人たちへのメッセージのように思えます。 あれも欲しい、これも必要。 友人が持っているアレが欲しくてたまらない・・・ でも、手に入れたから満足感が得られるとは限らない。 消費には、際限のないところがありますね。 いつまで経っても「幸福」の後ろ姿しか見えない。。。 この作品は、「○○みたいな生活をやめよう」とか「○○ライフを実践しよう」 といった、何かを提案したり、主張したりは、決してしないのです。 ただただ、謙虚で穏やかで、そして満たされた家族の生活が描かれます。 それは、必要以上に蓄えたり、必要以上に消費したり、逆に不足をガマンしたり という状態とは無縁なメンタリティーですね。 そして着実に、次の世代に、その生活技術やメンタリティーは受け継がれていくようです。 シンプルな描写を通して、心が満たされる条件が表現されます。 実際にはまねが出来ないのでしょうが、「そういう生き方もあり」と 感じさせてくれるところがあります。 それは失われた「伝統」とも言えそうな生活。 ドナルド・ホールは、この作品のいきさつについて、次のように語っています。 「 そもそも、この話は、近所に住んでいたいとこから聞いたものです。 そしてそのいとこは、幼い頃、ある老人から聞き、その老人は、 子どもの頃、大変なお年寄りから聞いたのだそうです。 語り継がれたこの伝統のすばらさし! 」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 22, 2005 12:43:33 PM
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