倒れる時には、前のめり

2005/08/04(木)21:00

女学生運転手の誕生

日記(255)

戦時中は、女子勤労動員が促進されて、14~40才の就業禁止職種が、あったのだが、広島電鉄はそれを先取りして女学生運転手の起用を行った。 モリノは女学生運転手の第1号だ。 ところが、そこは戦時中。 実技試験前になんと運転をしてしまう。 「どうしたんや、運転手がおらんでぇ」 「停留所に客が待っとるがのぅ」 しばらくしてそこにモリノがいるのに監督が気づく。 「おまえ行けぇやぁ」 「はぁ??」「ウチがやるんですか?」とモリノ 「ええ。ええ。何かおきよったらわしが面倒みたるけぇ」と監督。 いざモリノが運転席に立つと、 足がガタガタ震えてくる。 「どうしょうかぁ。どうしょうかぁ」 そう思いつつ、静かに電車を走らせ始めた。 そぅーと、そぅーと。 思うほかうまく動き始めた。 「どうしょうかぁ。どうしょうかぁ」 言いつつも電車を走らせる すると後ろで乗客がざわついてきた。 「あれ運転しとるんは、女の子じゃろぅ」 「ほうじゃほうじゃ女の子じゃ」 「誰もついとらんで大丈夫なんかのぅ」 乗客はきょとんとしていたに違いない。 きっと折り際に、女学生運転手をしげしげと見ながら降りたことだろう。 「ご乗車ありがとうございましたぁ」 いったん慣れたらもう運転手の方が楽しくてしょうがなかった。 「他の女学生こげなことせんけぇね」 「キップきらんでもええしねぇ」 義勇報国隊のワッペンを胸に付け 堂々と誇らしげに。 お国のために働いているんだと、誇りが持てた。 モリノ、その時17才  チンチン電車と女学生 (原作 堀川恵子・小笠原信之著 チンチン電車と女学生より)

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