2005/08/04(木)21:00
女学生運転手の誕生
戦時中は、女子勤労動員が促進されて、14~40才の就業禁止職種が、あったのだが、広島電鉄はそれを先取りして女学生運転手の起用を行った。
モリノは女学生運転手の第1号だ。
ところが、そこは戦時中。
実技試験前になんと運転をしてしまう。
「どうしたんや、運転手がおらんでぇ」
「停留所に客が待っとるがのぅ」
しばらくしてそこにモリノがいるのに監督が気づく。
「おまえ行けぇやぁ」
「はぁ??」「ウチがやるんですか?」とモリノ
「ええ。ええ。何かおきよったらわしが面倒みたるけぇ」と監督。
いざモリノが運転席に立つと、
足がガタガタ震えてくる。
「どうしょうかぁ。どうしょうかぁ」
そう思いつつ、静かに電車を走らせ始めた。
そぅーと、そぅーと。
思うほかうまく動き始めた。
「どうしょうかぁ。どうしょうかぁ」
言いつつも電車を走らせる
すると後ろで乗客がざわついてきた。
「あれ運転しとるんは、女の子じゃろぅ」
「ほうじゃほうじゃ女の子じゃ」
「誰もついとらんで大丈夫なんかのぅ」
乗客はきょとんとしていたに違いない。
きっと折り際に、女学生運転手をしげしげと見ながら降りたことだろう。
「ご乗車ありがとうございましたぁ」
いったん慣れたらもう運転手の方が楽しくてしょうがなかった。
「他の女学生こげなことせんけぇね」
「キップきらんでもええしねぇ」
義勇報国隊のワッペンを胸に付け
堂々と誇らしげに。
お国のために働いているんだと、誇りが持てた。
モリノ、その時17才
チンチン電車と女学生
(原作 堀川恵子・小笠原信之著 チンチン電車と女学生より)