[Study]の記事一覧 | ドラゴン山田の研究室

洋書12冊

ゴールデンウィーク中の北海道はまるで夏だったというのに、ここ数日の寒さは何だ？などと言いながら、冬の背広を着て出勤。人間ドックの後遺症は深く、１時限目の講義はなかなかこたえた。それはともあれ、研究費購入図書の洋書が12冊届く。前に届いた７冊を含め、すでに今年度の研究費を13万円も使ってしまっていることになる。計算もやりくりも楽ではない。

2008.05.12

連休明けのいただきもの

夕刻、徒歩で帰宅したら、自宅に書籍小包が。日大・法学部准教授の岩崎正洋氏から、共編著『国家の現在』（政治学の現在シリーズ１、芦書房、2008年）を頂戴した。誠に有難うございます。国家の現在（５月８日記す）

2008.05.07

『政治思想研究』８号

政治思想学会の『政治思想研究』８号（風行社）が、本日届く。岡山大学での学会も間もなくだ。

2008.05.07

新緑の季節に、洋書９冊

桜が終わり、新緑の季節。汗ばむ陽気である。そんな中、研究費で注文した洋書のうち、９冊が届いた。中には相変わらず、「ことさら買うまでもなかった」と届いてから分かるものもあるが、それはそれとして、以下のものは今後の私に重要となろう。・T. Ball and R. Bellamy (eds.), The Cambridge History of Twentieth-Century Political Thought (Cambridge: Cambridge University Press, 2007).・M. Kaldor, Human Security: Reflections on Globalization and Intervention (Cambridge: Polity Press, 2007).・A. S. Laden and D. Owen (eds.), Multiculturalism and Political Theory (Cambridge: Cambridge University Press, 2007).・C. Pateman and C. W. Mills, Contract and Domination (Cambridge: Polity Press, 2007).・M. F. Plattner, Democracy without Borders?: Global Challenges to Liberal Democracy (New York: Rowman & Littlefield, 2008).

2008.05.07

Mike Kenny からのメール

朝一番で発見したのは、シェフィールド大学教授の Mike Kenny からのメールだった。在外研究でロンドンに行くらしい。海外の大学の教員は、本当に何度も在外研究のチャンスを与えられるのだな。羨ましい限りである。ふと、思う。彼は2005（平成17）年から、シェフィールド大学政治学科の学科長だったはずだ。それが、在外研究で出るということは、その要職から外れたのか。気になって、シェフィールド大学のウェブサイトを見てみると…確かに、今年2008年の１月から、別の人が学科長になっていた。Mike は３年間、学科長を務めたことになるわけだ。2006（平成18）年２月にシェフィールドで彼と会った時、「いつまで学科長をやらなければならないんだ？」と尋ねていた私だが、それはともあれ、その要職から外れたことで、やっと研究できるようになったのだろう。…などと考えつつ、2006年の彼との会見の記録を、過去のブログで探してみたら、２月20日ということであった。思えば、前年の秋に刊行された、彼の著書の邦訳『アイデンティティの政治学』（日本経済評論社、2005年）の完成の報告に行ったのだった。アイデンティティの政治学

2008.05.05

Gamble 教授からのメール

ここ数日、立て続けに、英国関係者とのメールのやり取りをしている。シェフィールド留学時代の副指導教官であり、現在はケンブリッジ大学におられる Andrew Gamble 教授から、日本時間の夕刻にメールをいただいた。シェフィールドとケンブリッジの二重生活をなさっている Gamble 教授。彼と最後に会ったのは、2006（平成18）年９月のフィラデルフィアでのアメリカ政治学会（APSA）でではなかったか。この夏にシェフィールドで再会できたらいいねぇ、というメールであった。ちなみに Gamble 教授、８月末から９月頭にかけては、やはり APSA に参加のため留守になさるという。

2008.04.28

Keane 教授からのメール

今朝メールをチェックしたら、ロンドン・ウェストミンスター大学の John Keane 教授からメールが届いていた。先週、私の職場の新メルアドを伝えたのだが、それへの丁寧な返信であった。また、添付ファイルには、またしてもデモクラシーに関する膨大な論考があった。読むのはこれからだが、それにしても多産な方だ。そのパワーはどこからくるのだろう？出版が待たれている彼のデモクラシー史についての書物も、「ほぼ書き終えつつある」とか（８年越しの研究らしい）。数年ぶりに、この夏ロンドンで会えるであろう。

2008.04.28

Sarah　さんからの電子メール

シェフィールド大学政治学科に留学中もその後も、さんざんお世話になっている、秘書の Sarah さんから、今朝起きたら電子メールが届いていた。昨日、夏にシェフィールドに行くかもしれないと私が送ったメールへの、温かい返信であった。すでに定年で退職している Anthony Arblaster 氏にも、私が来るなら連絡をしてみてくれる、という話だ。有難い方である。

2008.04.25

ゼミの準備で

この新学期の第１回ゼミナールが、今日の５時限目に開かれる。いずれテキストとして使用するであろう、川崎修・杉田敦編『現代政治理論』（有斐閣アルマ、2006年）を、昼近くに再読する。川崎氏による第１章「政治――権力と公共性」、むちゃむちゃ面白く分かりやすい。錯綜した思考に一定の交通整理を行うには、非常によい好著だろう。同時に、この３月に発刊した岡崎晴輝・木村俊道編著『はじめて学ぶ政治学』（ミネルヴァ書房、2008年）も並行して学生に読ませたいものだが、入門書だけで満足させてしまわないようにするのが私の責任なのだろう。現代政治理論はじめて学ぶ政治学

2008.04.22

書評の校正

一昨年あたりから、書評なるものを依頼される機会が増えてきた。昨日、２冊の本を書評した私の原稿の校正をおこなって戻したが、今朝無事に届いたらしい。自分が心身ともにバランスを崩している間に書いたものというのは、後から読み直すとどうにも座り心地の悪いものを感じてしまう。さて、さらに２冊の書評原稿を書かなければならない。勝負は今度の週末だ。

2008.04.21

ヒルティ『幸福論』

今年はなるべく、研究に直接には関係しない本を読んで、精神的な「リハビリ」をしようと考えている。前々から、パスカルの『パンセ』やスピノザの『エチカ』などを読もうと思って、買ってちょっとかじっては部屋のインテリアで終わっていた。最近も『パンセ』に手を出しつつあったのだが、思うところがあって、今夜カール・ヒルティ（草間平作訳）『幸福論』第１部（岩波文庫、1991年）に切り替えて読み始めた。なかなか考えさせられるぞ。（４月21日記す）

2008.04.20

週明けのいただきもの

週明けて出勤したら、メールボックスに１冊の本が。職場の同僚・平野明彦氏の著書『ヤスパースと現代』（国文社、2008年）であった。ヤスパースは、前々から、一度きちんと勉強しなければならないと思っていたが、なかなか後回しになってしまっていた。感謝感謝。（４月17日記す）

2008.04.14

読了・『英国のバランス　日本の傾斜』

ここのところ読み進めてきた、渡辺幸一氏著『英国のバランス　日本の傾斜』（河出書房新社、2006年）を、今夜読了。英国在住の日本人が書いたエッセイは、マークス寿子氏や林望氏らによるものがあるが、この渡辺氏の本は、比較的新しいということもあり、今の私には非常に刺激になった。2005年７月７日のロンドンでのテロ、多民族国家、アメリカと EU との懸け橋、等々。さらには、バブル経済以降の日本社会のあり方への警鐘は、単なるモラリストと一蹴できないものを感じた。この渡辺氏は詩人でもあられるようだが、やはり「詩心」が大事なのだろう。英国人が一般的に詩を愛することは、私も留学中に目の当たりにしていた。では、私自身に「詩心」があるかというと…情けない（汗）。

2008.04.02

桜花爛漫のいただきもの

以前から、刊行されると聞いていた田村哲樹氏の『熟議の理由――民主主義の政治理論』（勁草書房、2008年）。今日、職場に出版社より届けられていた。またしてもご恵送いただき、感謝です。勉強させていただきます。熟議の理由

2008.04.01

ヨーロッパについて併読２冊

ヨーロッパに関して、２冊の本を併読している。知っているつもりで、実はよく分かっていないことばかりだ（汗）。・渡辺幸一『英国のバランス日本の傾斜』（河出書房新社、2006年）。・庄司克宏『欧州連合』（岩波新書、2007年）。　

2008.03.30

平和・憲法・公共哲学

読まなくっちゃ。・千葉眞・小林正弥編著『平和憲法と公共哲学』（晃洋書房、2007年）。・千葉眞編『平和運動と平和主義の現在』（風行社、2008年）。　後者では、わが友、愛甲雄一氏や前田幸男氏も翻訳で参加なさっている。

2008.03.28

読了・『民主主義という不思議な仕組み』

４月より私のゼミに入ってくる学生に、事前学習で読ませてレポート提出をさせておきながら、自分自身は読み切っていなかった、佐々木毅著『民主主義という不思議な仕組み』（ちくまプリマー新書、2007年）を、夕食後に読了する。名実ともに日本の政治学の第一人者による、若者へ向けた良質の入門書と言えよう。いや、私のような勉強不足の者が、改めて「そもそも」論をおさらいするのにも、非常に有益であると思った。わかった「つもり」になっているのが、一番こわいのだ。民主主義という不思議な仕組み

2008.03.20

読了・『拡大ヨーロッパの挑戦』

カバンに忍ばせながら、旅の間一度も開かなかった本を、帰りの列車の車中で読み切る。羽場久ｼ尾子先生の『拡大ヨーロッパの挑戦――アメリカに並ぶ多元的パワーとなるか』（中公新書、2004年）である。発刊された2004（平成16）年の時点で読んでおくべきだった（私が初めての単著を出した年だったから、それは無理だったのだが）。あれから４年も過ぎてしまうと、ヨーロッパの情勢も変化してしまっている。現に、2004年には10ヶ国が新規加盟して25ヶ国となった EU は、去年2007（平成19）年にルーマニアとブルガリアの加盟によって今では27ヶ国になっている。今のコソヴォをどう見るか…。拡大ヨーロッパの挑戦（３月20日記す）

2008.03.19

どれを持って帰ろうか

午前中の労働を終えて、一段落。まだ雨は降りだしていない。さて、職場の自室は読んでいない本だらけだが、どれを持って帰ろうか…。　　

2008.03.14

『〈ポストモダン〉とは何だったのか』に思う

この春の読書で、あと一歩で読み終わるというのに放り出してしまっているものがある。本上まもる著『〈ポストモダン〉とは何だったのか　1983-2007』（PHP新書、2007年）である。いわゆる現代思想を、手際よくまとめた好著である。また、大衆消費社会をめぐる諸問題について、私も問題関心が重なる点が少なくない。それでも…やはり疑念がぬぐい去れない。ラカンやデリダやドゥルーズといったフランス現代哲学者たちが、なにゆえそんなに重要なのかだ。まぁ、私の無知ゆえなのだろうが、しかしフロイト→ラカンをいうなら、フロイト→ユングはどうしたのか？精神分析と哲学とが現代思想の中核を占めているのなら、ガンジーやタゴールといったインドの思想家たちによる生命論はどれだけ語られているのか？サティーヤグラハは、単なる瞑想ではあるまい。精神分析が現代を救うのか？精神分析が、人々を救うための重要な力となり得ることは、私も大いに認めたい。しかし、精神分析を受けてかえっておかしくなった人を多々知っている者としては、〈ポストモダン〉なるものを、もっぱら精神分析的なフランス現代思想によって代表させる気には、とてもなれない（「そんなのは、まともな精神分析ではなかったのだ」と言うのであれば、では「まとも」とそうでないものとを区別する基準は何であり、かつ、「まとも」な精神分析ができる人がどれだけいるのかが、問われなければなるまい）。もちろんこれは、著者の執筆意図とは別次元の問題だろうが。

2008.03.12

ひとまず安心・書評

依頼を受けていた書評原稿。昨日なんとか仕上げて、しかるべきところに送ったが、今日、「無事届きました」との連絡あり。一安心である。去年の秋は、英文での書評書きで手こずったが、今回は日本語でよかった。

2008.02.27

読了・『多文化主義とは何か』

しばらくかかったが、アンドレア・センプリーニ著、三浦ほか訳『多文化主義とは何か』（白水社文庫クセジュ、2003年）をようやく読了。すべて理解したとは言い難い。多文化主義とは何か

2008.02.27

市民・自治体・政治

去年（2007年）、著者の松下圭一氏から贈られた『市民・自治体・政治――再論・人間型としての市民』（北海道自治研ブックレット No. 1、公人の友社）を、昨日・今日とで読了。薄いブックレットながら、マス・デモクラシーの今日的課題については重厚な内容である。

2008.02.22

歴史政治学とデモクラシー

何かと不安定だった一日。篠原一著『歴史政治学とデモクラシー』（岩波書店、2007年）を、また少し読み進める。歴史政治学とデモクラシー

2008.02.16

現代政治・発想と回想

なかなか読み進められずにいた、松下圭一氏の『現代政治・発想と回想』（法政大学出版局、2006年）。再び読み始めた。「現場」から練り上げる政治理論が、日本の政治学にはなさ過ぎるのかも知れない…。（２月10日記す）

2008.02.09

多文化主義とは何か

読みかけでしばらく放置しておいた、アンドレア・センプリーニ著（三浦ほか訳）『多文化主義とは何か』（白水社文庫クセジュ）を、久々に読み進める。興味深い。マイケル・ケニーの『アイデンティティの政治学』（日本経済評論社、2005年）を邦訳する前に、しっかり熟読しておくべき本であった。（２月９日記す）

2008.02.08

Doing a Literature Review

注文していた洋書、Chris Hart, Doing a Literature Review: Releasing the Social Science Research Imagination (London: SAGE, 1998) が届く。今の私に、あるいは今後の私に、どこまで役立つ本か…。

2008.02.04

読了・『中流の復興』

しばらくかかったが、小田実の遺言とも言える著書『中流の復興』（NHK 出版〔生活人新書〕、2007年）を読了する。己れの無知さ加減を知った…。中流の復興

2008.02.02

クローズアップ現代を観て　その４

NHK『クローズアップ現代』のシリーズ「ヨーロッパからの“新しい風”」。最終回の今夜は教育がテーマだ。1980年代後半、教育に競争原理を導入した英国が、どのような問題を抱えるに至ったか。他方、知識量よりも思考力を育てることに着目したフィンランドの教育が、どのような注目すべき結果をもたらしているか――。頭脳というのは、「記憶力」だけが勝負ではない。「思考力」「問題発見力」「想像力」「創造力」「構想力」「問題解決力」、そして「結果責任を取る能力」などが問われる。そうした能力を陶冶する教育は、市民教育として重要なはずだ。その点、日本はどうなっているか…？（２月１日記す）

2008.01.31

職場に届いた本２冊

いつ読むかは不明だが、アマゾンから職場に２冊の本が届く。・遠藤誠治ほか編著『グローバル対話社会――力の秩序を超えて』（明石書店、2007年）。・アントニオ・ネグリ、杉村訳『さらば、“近代民主主義”――政治概念のポスト近代革命』（作品社、2008年）。ネグリの＜帝国＞論やマルチチュード論はずいぶん注目されたようだが、私の頭では読んでも理解不能であった（涙）。　

2008.01.31

クローズアップ現代を観て　その３

引き続き、NHK『クローズアップ現代』の「ヨーロッパからの“新しい風”」を観る。第３回の今夜は、EU 内での労働力移動がテーマだ。2004（平成16）年に新たに EU に加盟した10ヶ国のうち、特に番組ではポーランドとラトビアに光を当てていた。かつてスペインとポルトガルが EC （当時）に加盟した時、その経済力の弱さから労働力の国外流出が問題になったが、時を経てこれらの国の経済力が高まると労働者が戻ってきた。それと同様のことが、ポーランドなどの新規加盟国にも起こるであろう。だから、長い目で見なければならない…等々。EU の外からの移民の問題については触れていなかったが、経済的に潤っている国で労働力が不足し、外国人が職を求めてそうした国に移動してくるという現象は、おそらくその時代その時代で意味を変えるのだろう。私は、それをどう見るか。いや、そもそも見る目を持っているか…（汗）。（１月31日記す）

2008.01.30

クローズアップ現代を観て　その２

NHK『クローズアップ現代』は夕べから、「ヨーロッパからの“新しい風”」というシリーズをやっている。第２回の今夜のテーマは、低炭素都市を目指しているロンドン市の取り組みだ。英国国家よりも早いCO2削減目標をかかげ、税制や新しいエネルギー源によってその達成を目指そうとしているロンドン。私はロンドンに住んだことはないが、貧乏留学生時代に２ヶ月間、ロンドンの知人宅に居候していたことがあるし、友人宅にも何度も足を運んだ。しかしそれも、労働党政権以前の話。20年という時の流れの中で、ロンドンは変貌を遂げつつある――。エコロジーをめぐる市民たちの意識。ロンドン市という行政の役割。企業の取り組み…。私は環境問題を専門的に勉強したことはないが、「カーボン・デモクラシー」という言葉が脳裏に焼きついた。

2008.01.29

フェミニズム関連のいただきもの

10年あまりお世話になっている奥田のぞみさんが邦訳なされた、Ｚ．アイゼンステイン著『フェミニズム・人種主義・西洋』（明石ライブラリー、2008年）が、本日届く。わざわざのご恵送に大感謝です。アイゼンステインの名は、シェフィールド留学中にフェミニズム文献を初めて本格的に調べる中で出遭っていたが、きちんと読んだことはなかった。この本の原著は2004年。言うまでもなく「９・11」事件以降である。アイデンティティをめぐる言説が、この事件以降にますます錯綜してしまったことは事実だろう。それでも、近視眼的に、目先の議論に右往左往してしまうのではなく、知的に誠実な思索をしていかなければなるまい。その意味からも、本書は興味深い。

2008.01.29

クローズアップ現代を観て

環境問題に取り組むヨーロッパ企業を追った、NHK『クローズアップ現代』を観て、種々考えさせられる。自由経済を否定し去ることなく、しかもエコロジーの中に資本主義を取り込んでいこうという、そうした試みに見えた…。もう１つ Ph. D. に挑戦するなどということはご免だが、もし天の采配で再び留学する機会でも得て、修士課程の大学院に（ディプロマ・コースでも）入れるとしたら、経済政策を勉強してみたいなぁ、と思う。無論、私は経済学には無知蒙昧だから、むしろ社会学的アプローチの方が自分には有効かもしれないが。（１月29日記す）

2008.01.28

マンハイムに一つの区切り

一昨日、メールの添付ファイルで提出したマンハイム論文完結編。今朝は、プリントアウトしたハード・コピーとフロッピーディスクを、郵送で投函した。これで本当に一段落。しかし振り返ってみれば、私とマンハイムとの付き合いは、20年もの紆余曲折を経たなぁ。今年は北京オリンピックらしいが、そもそも私がマンハイムに直接かかわるようになったのは、ソウル・オリンピックのあった1988（昭和63）年、大学４年で卒業論文を書く時であった。イデオロギーとプロパガンダの区別が付いていなかった無知な私は、難解なマンハイムの『イデオロギーとユートピア』に手こずり、社会学的なイデオロギー研究がどうして哲学みたいな議論なのか理解に苦しんだものだった。仕上げた卒論は、今から読み直すのは恥ずかしいものだが、ともあれ大学院入試と卒論執筆の中で、むしろマンハイムが英国に亡命した後の議論に非常に関心を持った私は、修士課程での研究テーマを後期マンハイムに決めた。修士論文に決着をつけたのは、1991（平成３）年、初の英国留学の最中であった。寒い11月、喘息に苦しみながら論文を仕上げたという話は、過去にもこのブログに何度か書いている。留学を終えて帰国する直前には、すでに日本に修士論文を郵送した状態で、最後のヨーロッパ大陸旅行に飛んだ。元旦にパリから夜行列車に乗り、バルセロナに着いたのは、バルセロナ・オリンピックを夏に控えた1992（平成４）年のことであった。完成間近のオリンピック・スタジアムを、一人わたがしを食べながらウロウロ歩き回ったことを思い出す。しかし、帰国して博士課程に進んだ私を待っていたのは、修士論文に対する指導教官からの全否定であった。もろもろの要素も重なり合って、マンハイム研究をしばらく凍結することを決めた私は、1994（平成６）年にシェフィールドに飛び出した。日本の大衆社会論争に関する Ph. D. 論文を仕上げるのに、そこから８年を費やした。「大衆社会論を、現代の政治学の中で再検討しなければならない」という自分の問題意識に、やっと自信が持てるようになったのは、Ph. D. 論文を短縮した日本語版『大衆社会とデモクラシー』（風行社）を上梓した2004（平成16）年秋よりも後の話だ。そうした目から、かつてのマンハイムへの関心を凍結解除したら、修士課程時代の私のマンハイムの読み方・理解の仕方に、決して大きな間違いがあるわけではないとようやく認識できた。公表もせずにお蔵入りしていた修士論文は、結論部分には大いなる問題があるものの、マンハイムのテクスト解釈をした本論の部分については書き直す必要を感じなかった。だから、序論と結論部分を書き直すという形で、今更ながらに公にすることに踏み切った。ここに至るまでの間に、いくつのオリンピックがあったことだろうか…スポーツには基本的に関心のない私だが。ともあれ、この論文の完結編が活字となってくるのは５月くらいだろう。1988年から数えれば、一区切りつけるのにちょうど20年かかったわけである。しかもこれは、あくまで一区切りであって決着ではない。むしろ、やっとスタートラインに立ったに過ぎない。それに、別にマンハイム研究に一生を捧げようという気もないしな…。マンハイムの提起した問題を、現代において引き受けようという思いは強烈にあるが。　

2008.01.24

こうしてベルリンの壁は崩壊した（２）

先週に引き続き、NHK の BSドキュメンタリー「証言でつづる現代史　こうしてベルリンの壁は崩壊した」の第２回を、食い入るように観る。1993年の NHK スペシャル「ヨーロッパ・ピクニック計画」では、明らかにされていなかったことが、多々出てきて興味深かった。ホーネッカー解任劇の現場。若手改革派のはずのクレンツが「ホーネッカーの後釜」と誤解されて苦慮したこと。運命の1989年11月９日、シャボウスキーが記者会見で「旅行の自由」化を発表した後に、検問所の現場で何が起こったか…。やはり、私の青春とベルリン訪問とは、切っても切れない関係にあるのだな。（１月21日記す）

2008.01.19

The CSD Bulletin

ロンドン・ウェストミンスター大学のデモクラシー研究所（Centre for the Study of Democracy）から、機関誌 The CSD Bulletin が届く。John Keane 教授が送ってくれたのだろうか。特に私信は入っていなかったが。

2008.01.17

再録・The Role of Value in Karl Mannheim's Sociology of Knowledge

マンハイム論文の完結編執筆も、そろそろ大詰めである。ふと、去年の６月29日のブログを再読し、以下に再録する気になった。――――――――何度もこのブログで書いてきてはいるが、日本での院生時代に英国期マンハイム研究をしてきた私は、いろんな意味で行き詰って日本を出た。そしてシェフィールド留学時代には、松下圭一氏を中心とした1950年代日本の「大衆社会論争」をテーマに Ph. D. 論文執筆を開始した。だが、留学中にマンハイムへの関心が薄れたわけではなかった。マンハイム研究それ自体は一旦カッコでくくって脇に置いたが、「将来的に、再び戻ってくることもあるだろう」と思っていたことは事実だ。そして細々ながら、折に触れてマンハイムに関する資料は集めていた。シェフィールド大学中央図書館で発見した、F. W. Rempel, The Role of Value in Karl Mannheim's Sociology of Knowledge (The Hague; Mouton & Co., 1965) もまた、そうした資料の１つだ。これを見つけた時、自分が「マンハイムの読み」の中で大事な問題だと感じながら、誰からも十分に検討されていない論点について、論及している貴重な本だろうとピンと来た。特に、知識社会学というタイトルが付いていながら、英国亡命後のマンハイムの著作から多く引用していることから、「価値相対主義は、ファシズムの温床となりかねない、自由主義に内在する問題だ」とする彼の議論を読み解く手がかりになるだろうと思った。だから、Ph. D. に直接関係ないのにコピーをしておいた。オランダの出版社ということもあってか、この本の存在は、シェフィールドの図書館のパソコンでひまつぶしに「Mannheim, Karl」で検索してたまたまヒットするまでは、全く認識していなかった。そのコピーを、13年ぶりに引っ張り出し、重要と思われる箇所を読んだ今日の午後。「ほら見ろ、ほら見ろ、ほら見ろ」と言いたくなるような論点が、次々と現われた。特に、留学当時、日本で流行りだしたいわゆる「コミュニタリアン」の議論が、さも新しいもののように言われるにもかかわらず、私の目には「20世紀前半の社会学者がとっくに言っていることじゃないか」としか映らなかった。1965年に出版されたこの本にも、マンハイムが「コミュニタリアン」的な側面を持っているという言及がある。ということは、コミュニタリアニズムという思想が、1980年代に登場した新しい政治哲学の議論のことだとしてしまう認識は、極めて狭いものだということだ。サンデルやマッキンタイアやテイラーといった「いわゆる」コミュニタリアンについては、それが自称ではなく「他称」であることは皆が知っているのに、でもやはり「コミュニタリアン」というとほぼ確実に彼らの議論のことだと思われている。それに対して、テンニエス、マッキーヴァー、ニスベット、そしてマンハイムのような、コミュニティの諸問題について議論を展開した社会学者が、今風の「コミュニタリアン」といかなる関係にあるかについては、十分な検討がなされていないと言わざるを得ない（そうした検討が必要だという認識も、持たれているかどうか不明である）。13年前の私のそうした問題意識は、「単に自分が勉強不足だからそう思うだけなのだろうか」という不安によって覆い隠され、内面にしまわれてしまっていた。今も勉強不足には変わりない（涙）。だが、私の問題意識が決してトンチンカンなものでなかったということだけは、今さらながらに確認できた気になった。そういう気になっただけで終わってはまずいのだが（汗）。

2008.01.13

こうしてベルリンの壁は崩壊した（１）

雨のサンダビーダ要塞から帰宅し、風呂上りに、NHK 衛星第１で22:10から放映した BSドキュメンタリー「証言でつづる現代史　こうしてベルリンの壁は崩壊した」を観る。今日は第１回、内容はライプツィヒでの1989年10月９日デモであった。ベルリンの壁が崩れるのは、同年（平成元年）の11月９日であり、この日がドイツ国民の解放の日とされるのが通例だが、今日の登場者の言によれば、むしろ10月９日こそ、その日にふさわしいと――。ニコライ教会、1982年から始まった毎週月曜日の「平和の祈り」、独裁者ホーネッカーが唯一許した市民の自由な活動空間＝教会。第２冷戦、環境問題、人権問題、ゴルバチョフの登場…、食い入るように観てしまった50分間であった。1987（昭和62）年に、この目でベルリンの壁の現実を見てしまった私。その２年後のベルリンの壁崩壊に、大きな影響を受けた私。そして、1993（平成５）年の NHK スペシャル「ヨーロッパ・ピクニック計画」の録画ビデオを何回も観てきた私。そうした私にとって、今夜の番組は極めて印象的であった。ライプツィヒのデモでの「我々が人民だ」の大合唱こそ、ラディカル・デモクラシーの中核ではなかったか。残念なのは、妻が持参した HDD レコーダーがアナログ放送にしか対応しておらず、BS デジタル放送が録画できなかったことだ。何てこった。NHK 総合ででも再放送してくれないものか。あるいは、どなたか録画なさった方、いませんかぁ？？

2008.01.12

Multiculturalism

古本で買った。いずれ読まねば。著者は英国ブリストル大学の教授らしいから、Terrell Carver 教授の同僚に違いない。・Tariq Modood, Multiculturalism (Cambridege: Polity Press, 2007).

2008.01.10

風行社からいただきもの２冊

冬休み中に職場に届いていた荷物の中に、風行社からのいただきもの２冊があった。いずれも、昨年（2007年）の刊行である。どうも有難うございました。・デイヴィッド・ミラー著、富沢ほか訳『ナショナリティについて』・森分大輔著『ハンナ・アレント研究――＜始まり＞と社会契約』ナショナリティについてハンナ・アレント研究

2008.01.10

小田実の遺した言葉

NHK の BS2 で夕刻、昨年（2007年）７月30日に逝去した小田実を特集した番組、ハイビジョン特集『小田実・遺す言葉』が放映された。デモクラシーと平和主義、市民運動、憲法９条…。晩年の彼が言う「中流」の意味も、垣間見えた気がする。軍需産業を中心にしない産業構造によって、これだけ豊かになった国は、日本しかない。しかし、せっかくそうした優れた面をもつ日本なのに、いつしか道を誤ってしまった。だから、まともな方向に戻すために、市民が声を上げ、抵抗し闘っていかなければならない――。　久野収、鶴見俊輔、高畠通敏、そして小田実…、私の Ph.D.論文でも、脇役ながら重要なポイントとなった彼ら。彼らの遺産を、私はどのように引き継ぐべきか？　

2008.01.07

久々に職場へ

久方ぶりに、職場に行く。ただし、実際に職場が動き出すのは１月９日（水）。それまでは、暖房がきかない。年末に自宅に持ち帰ってきていた本のうち、名古忠行『イギリス社会民主主義の研究』（法律文化社、2002年）、同『ウェッブ夫妻の生涯と思想』（法律文化社、2005年）、Ｓ．ムルホールほか『リベラル・コミュニタリアン論争』（勁草書房、2007年）を職場に戻す。　　それとは入れ替わりに、Karl Mannheim, Sociology as Political Education (New Brunswick: Transaction Publishers, 2001) および David Kettler and Colin Loader, Karl Mannheim's Sociology as Political Education (New Brunswick: Transaction Publishers, 2002)、さらにかつてコピーした『マンハイム全集』第６巻を、自宅に持ち帰ってくる。書き散らかし、また講義などで語り散らしている内容を、改めて整理して論文とするのは、いたく骨が折れる仕事である。何度も書き、語っているため、内容は分かったつもりになっているのに、いざまとめようとするとまとまらない。過去に書いた文章に、どうしても思考が引きずられてしまう。かといって、過去に書いて記録したものが残っているからこそ、自分が何を考えていたかが分かる（そうでなければ忘却の彼方であろう）。この手のことを、今後も10年、20年と続けていくのだろうな。

2008.01.07

リベラル・コミュニタリアン論争

世間では仕事が始まっている今日１月４日。午前中、買い物のためイトーヨーカドーと PC DEPO に出かけたら、三島大社への参拝者のためか、やたら道路が混んでいた。それはともあれ、午後に帰宅して、久々に勉強しなければと思い、職場の図書館から年末に借りだしていた、スティーヴン・ムルホール＋アダム・スウィフト（飯島ほか訳）『リベラル・コミュニタリアン論争』（勁草書房、2007年）の斜め読みを始める。理解しやすいとは言えない本だが…原著はシェフィールド留学時代に一応知ってはいた。リベラル・コミュニタリアン論争

2008.01.04

科研費報告書の送付

2004（平成16）年度より４年間いただいていた、科学研究費補助金（共同研究）。最終年度の年末締め切りで、分担者の最終報告書を提出しなければならなかった。昨日、長時間パソコンに向かってそれに取り組んでいたが、今日、若干の手直しをした後、とりまとめをなさっている先生にメールでお送りした。これでまた１つ、年内の課題が終わった。ふぅ。そう言えば、１年前の今日は、カーディフで Carole Pateman 教授と４時間面談した日だなぁ（しみじみ）。あの時のカーディフは、曇天で強風だった。１年後の三島は、比較的温暖で晴天だが、やはり風が強い。今年も明日までである。

2007.12.30

スーパーひたちで読む『高杉晋作』第２巻

いわき駅を12:22発の、特急スーパーひたち。かつての私の実家の近くを通りつつ、湯本、泉、そして日立と停車していく…。その中で、山岡荘八『高杉晋作』第２巻を読み進めた。佐久間象山と会見し、さらには上海へ向かう晋作。その思想、その行動に、いたく刺激を受けている今の私。３泊４日の福島旅だったが、野口英世記念館とこの『高杉晋作』に、随分いろいろなことを考えさせられた。時代の荒波をいかに乗り越え、道を切り拓いていくか。どうやって「世界」を相手にするか――。高杉晋作（2）（12月29日記す）

2007.12.28

師走に届いた本３冊

洋書２冊。・Alain Tourane, A New Paradigm for Understanding Today's World (Cambridge: Polity Press, 2007).・Margaret Walters, Feminism: A Very Short Introduction (Oxford: Oxford U. P., 2005).和書１冊。・羽場久ｼ尾子『グローバリゼーションと欧州拡大――ナショナリズム・地域の成長か』（御茶の水書房〔神奈川大学評論ブックレット19〕、2002年）。グローバリゼーションと欧州拡大

2007.12.17

年末のいただきもの

職場の自室に新たな書棚が入ったところに、名古屋大学の田村哲樹氏より非常に啓発的なご著書をいただく。・有賀誠ほか編『ポスト・リベラリズムの対抗軸』（ナカニシヤ出版、2007年）。ポスト・リベラリズムの対抗軸田村氏には、これまでいったいどれだけのご著書をご恵送いただいたことか。感謝してもしきれない。そして、ちっとも勉強が追い付かない自分がいるのであった。

2007.12.13

ブログをめぐる恐るべき事実発覚

恩師を囲んで、都内で研究会。その後、忘年会を兼ねた食事会となったが、私が想像する以上に多くの同業者が私のブログをご覧になっている、と聞かされる。げげ。『あしたへアタック！』や『イデオン』や妙な替え歌がガンガンに飛び交っているアホなブログが、かくも多くの同業者の目にとまっているとは。思わず「きゃあ！」である。（12月９日記す）

2007.12.08

三省堂書店にて

悪夢としか思えない、悪い冗談のような夢から起床して、東京へ。神田神保町の三省堂書店に、QUOカードを持参して行く。あれこれ考えた末、メアリー・カルドー、山本武彦ほか訳『グローバル市民社会論――戦争へひとつの回答』（法政大学出版局、2007年）を購入した。グローバル市民社会論学生時代、新宿の紀伊国屋書店と、神保町の書泉グランデと、この三省堂書店には、よく出入りしたものだ。かつては、面白みのない紀伊国屋と三省堂に対して、書泉グランデはなかなかの品ぞろえだったものだが、今では書泉がつまらない。そして、三省堂がバカにできなくなっている。

2007.12.08