ジャラン・ジャラン・パインビレッジ

2006/08/02(水)11:17

生きるための手がかりを得る/ 山を少し知る。

最近まで色々悩んでいたことについて、 ある宗教家であり、哲学者の言葉によって、 少しではあるが楽になった。 その人の名前はキルケゴール。 「死にいたる病」を書いた人である。 このタイトルだけを見て、アニメのエヴァンゲリオンを浮かべた方も 居るかもしれない。自分もエヴァを見て、このタイトルが出て驚いた。 この本によれば、死に至る病とは、「絶望」のことであるという。 この世にはさまざまな絶望がある。挫折、裏切り、自分の頼りなさ。 思うように行かないもどかしさなどなど。 特に自分に対する絶望というのは究極の絶望。 たぶん、自分も自分に絶望していたのではあるまいか。 だが、キルケゴールは言う。絶望を知らない人よりも、 絶望しながら生きる人の方が尊いと。 絶望を感じ、その上で神にひざまずくのが良いのだと。 自分はキリスト者ではないので、神に祈ったり、懺悔することも無いが、 宗教観を抜きにしても、とても救われた思いがした。 「自分は自分のままでいい」と言う言葉は、本当はあまり好きではない言葉だ。 自分の中では、「逃げ」の言葉に聞こえてしまうからだ。 そういう意味ではオンリーワンという言葉も好きではないが。 人間は、根本的に何かと競争しながら生きていると自分は思う。 競争する相手が居なかったら、自分と競争するのだと思う。 人間とはそういう存在であると思う。 こういう自分を禁欲的と他人は思うのだろうか。 =================================================================== 以前、カウンセラーの方に行動療法の一環として、「山登り」を薦められた。 だが、その時の自分は、「山」と言うものに対して、まったくイメージがわかなかった。どうして人は山を好むのだろう。山登りをして何が楽しいのだろう。 わからなかった。元々、アウトドアの人間ではなかったし、昔ボーイスカウトをしており、野外キャンプやちょっとした山登り、長距離ハイキングなどもしていたのだが、そんなにキツイことを何故するのかが分からず、また大人になってからも敬遠していた。カウンセラーの方に、「例えば、どんなところを歩くのですか?」と伺ったら、だいたい1000m級の山を登るくらいですと答えてくれた。 その時は、それだけで終わった。 だが、人間には一種の気づき、所謂、スピリチュアルな出会いと言うものがある。 自分は天邪鬼なので、家内がスピリチュアルなテレビ番組を見ているのを、 ふーんって感じで思っていたが、実は学生時代はスピリチュアルな本が好きで、 また、下宿でヨガみたいな気功法を勝手流にやっていたのだ。 今週の日曜に、実家に顔を出した後に、地元の大型スーパーに行った。 家内が洋服を探している間に自分は本屋に居て、なんとなく本を物色していたのだ。 何気にとった文庫本が、夢枕獏氏の「神々の山嶺(いただき)」だった。 下巻しかおいてなかったが、すごく自分の目と胸に焼き付いていた。 家に帰ってから、アマゾンでどんな内容で、どんなレビューがなされているかを 見てみた。「山岳小説」・・・初めて耳にしたジャンル。そして、非常に評価の高い小説であることを知った。 その後、山岳小説について調べたら、どうやら、この小説は山岳小説としても高く評価されているようだ。ますますこの本に興味が出て、読みたくなった。 買おうかどうしような悩んだが、まずは図書館にあるかどうか調べた。 すると住んでいる町の図書館にあったのだ。読んでみたい。 そう思い、次の日には図書館から、「神々の山嶺」上下巻を借りてきた。 それが昨日のことである。そして、今、読了したばかりだった。 上下巻あわせて900ページある単行本を14時間足らずで一気に読んだのである。 5時間の睡眠時間、食事の時間を除いて。 この本に魅了されてしまい、1日もかからずに読んでしまったのである。 これには自分も驚いてしまった。実は夢枕獏氏の小説を読んだことは無いのだが、 こんなに読者を酔わせる作家が居たのだと感じ、至福のときを得た。 そして、何故、人は山に登るのか。ヒマラヤ山脈の山々を登頂することが 如何に困難なことであるのかが分かった。冒険の何者でもない。 空気が薄くなることが分かっていても、それがどういう事態をもたらすのかを 初めてしり、山の怖さを知った。そして、自分が知らない別のストイックな世界 を知った。それはダンジョン探索でもなく、思索の迷宮でもない、 自然が作り上げたものを征服するという人間の本能、欲望。 元々、自分はストイックなもの、ことが好きである。 とことんまで考えたり、動いたりすることだってある。 だから、この本に魅了されたのだろう。とらわれてしまったのであろう。 そして、少し山のことが好きになった。自分は山男ではないので、 エベレスト登頂など出来ることはないが、カウンセラーの推薦する1000m級の山を トライしてもいいかも知れない・・・そんなことを考え始めている。 しかし、本当に面白かった。次は新田次郎氏の山岳小説を借りてこようと思う。 神々の山嶺(いただき)(上) 神々の山嶺(いただき)(下) ただ、この夏は、もしかすると遊びになど行ける余裕が無いかもしれない。 家内のお婆さんが体調を崩したようで、春に会ったときは歩けていたのだが、 今は歩くことが難しいそうだ。老人に夏は堪える。何とか夏を凌いで欲しいと 願いつつ、出来れば夫婦で家内の実家に行き、お婆さんの顔を見たいと思っている。

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