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わたしのブログ

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6 おわりに

6 おわりに
  まず、中国憲法の不備確認について述べるなら、憲法(54年)第78条は、人民法院は独立して裁判をおこない、法律のみに服従する、と規定しているが、憲法(82年)第126条は、人民法院は法律の定めにてらし、独立して裁判権を行使し、行政機関、社会団体、個人の干渉を受けない、と規定しており、それまでの、人民法院は『法律のみに服従する』という文言が削除されていたが、この削除部分の復活を早期に修正することが望ましいと考える。何故なら、党の司法権への政治的介入は、人権侵害を、法を根拠に正当化することになるから。
 また、憲法(82年)第49条は「夫婦は双方ともに計画出産を実行する義務をもつ」という規定は、基本的人権を規制するものである。さらに、出生した子について、これは、国際規約(B規約24条2,3項)条項との関係上問題が発生する。すなわち、同規約は、「すべての児童は、出生の後直ちに登録され、かつ、氏名を有する。すべての児童は、国籍を取得する権利を有する」と規定する。確かな情報は上がってこないが、人身売買(黒孩子の闇取引)の実態があるのであれば、児童の権利保護のため、早期に改善する必要があると考える。
 尚、憲法監督制度については、改革説と現行制度維持説との対立があり、「4つの基本原則」(政治協商会議、人民代表大会、民主党派、人民団体)の維持、とりわけ「党の指導」の確保を図る現行制度維持派が優位であるが、「3つの代表」論との関係上、今後の変化が期待できると考える。
 次に、刑法典について
現行刑法は、罪刑法定を採用、また、類推制度の廃止と遡及効を認めたことについて、旧法と比べ評価できるものである。しかし、犯罪に対する刑罰が多すぎるきらいがある。刑罰はあくまでも「止むを得ない最後の手段」であり、基本的には犯罪者の更生を目的とするところであり、特に、死刑が依然として多用されていることには問題がある。刑法典自体、66罪種につき死刑を設けている。13億人を抱える社会主義国と1億人の資本主義国との刑法比較については、論議を醸すところである。

【註】わが国の判例は、憲法に刑罰として死刑の存置を想定し是認する規定がある(13条・31条)ことを指摘し、執行方法が火あぶり、はりつけなど「その時代と環境とにおいて人道上の見地から一般に残虐性を有するものと認められる場合」はさておき(それは残虐刑である)、現行の絞首刑による死刑そのものは残虐刑に該当しないとしている(最大昭和23年3月12日刑集2巻3号191頁 (イ))。これは、「死刑の威嚇力によって一般予防をなし、死刑執行によって特殊な社会悪の根元を絶ち、これをもって社会を防衛せんとしたもの」というのが、その実質的理由である。死刑廃止論との関係、これを中国刑法典にどう関連づけるかは、各人の思うところが様々と考える。ただ、黙秘権論争との関係、中国での自白の強要の際行われる、拷問については、先に述べた、1984年の「拷問その他残虐で非人道的または体面を傷つける行為を禁止する」の条約締結国として履行の義務がある。

最後に、刑事訴訟法について
まず、現行刑事訴訟法の改正点については、前述した。「無罪推定」という概念を取り入れてはいるが、しかし、1996年3月改正刑事訴訟法典12条では、「無罪推定」という文言は記載されていないことである。この点、被疑者・被告人の訴訟上の平等性・主体性ということについては、その前提として、裁判官が無罪推定する法的条件が備わっているとは考えられないということである。
 次に、「無罪推定」の効果として、被疑者・被告人に保障される権利として、「黙秘権」、「自己負罪拒否権」がある。しかし、現行法には、規定がない。この権利保障がなされていない事が、自白強要の際行われる、拷問という人権侵害が生じる。この拷問について、私の場合、中国での裁判の映画(レッド・コ-ナ- 北京のふたり 1997年)では目にしているが、中国警察の取調室には、次の標語がある。「担白従寛」(自白すれば寛大に)、「抗拒従厳」(抵抗すれば厳正に)。絶対的な威圧感をもつこの標語は、いったい何を意味するのかは、想像がつくと考える。すなわち、拷問されたくなかったら罪を認めなさいということである。この行政の権力について、前述の『行政権力を握る者は、法律をお飾り程度にしか考えていない。彼らは、行政法規のほうが、ずっと拘束力を持つと信じている』という言葉の意味が理解できる。こうした、問題は、自白の強要に繋がる「冤罪」の問題をも引き起こす。

「担白従寛」(自白すれば寛大に)、「抗拒従厳」(抵抗すれば厳正に)
捜査段階での拷問については、最高人民検察院の韓杼浜検察長(検事総長)が全国人民代表大会報告で「一部の突出した問題」として存在を確認。警察機関紙「人民公安報」は、2002年上半「担白従寛」(自白すれば寛大に)、「抗拒従厳」(抵抗すれば厳正に)期に警察官による容疑者への拷問が「前年同期比40.4%減少」と伝え、根絶に至っていないことを間接的に認めている。(ロ)

 黙秘権議論を引き起こしたのは、1998年10月に中国が自白の強要を禁じた国連人権B規約(自由権)に調印したことであった。まだ、批准はされていないが、批准手続にむけた国内法の整備を進めるなかで、刑事訴訟法の「供述義務」(93条)との関連で、論争があった。しかし、捜査の尋問にしても、どのような場合についても、方法として拷問という手段を用いることは、被疑者・被告人の権利を剥奪することになる。
 余談ではあるが、中国市民が「黙秘権」という言葉を知ったのは、法曹の専門家に拠るものではなく、外国映画で登場する「あなたには黙秘権と弁護士を依頼する権利がある」という逮捕場面の権利告知だという。

【注】(イ)憲法判例百選2[第4版]No.155 -123- 死刑と残虐な刑罰
(ロ) 大中国小中国一党支配支える司法1~5 山本秀也 中華圏特派員 産経新聞2003年2月21日
【註】以上、中国の国内法の、人権侵害が生じる根拠について、考察してみた。国際交流の進むなか、国際法の研究は今後大いに期待される分野であると考える。また、法整備の整っていない他諸国との関係上、国際法を基準に、各国が法内容を改正することが、国内法にも役立つし、また、外国での法律上の常識が、本国と異常な格差を生ずることは、国際司法上の法廷地漁りを奨励するようなものである。
なお、世界各国の時代背景を考慮すると、現在の中国は、過渡期であり、法および経済について現在進行の状況にあり、13億の人間を衡平統制するにも時間はかかる。さらに、台湾、香港、マカオなどとの資本主義と社会主義との併存関係の解消、および国内の地方区と行政区との統制を含め、わが国と比べ問題量が多い。しかし、国家として存続するかぎり、法整備についても、自然淘汰され満足に近い結果が得られることを希望する。

歴史を通じ、中国政府の態様はやはり『中華思想』から未だに脱却できていないのではないかという印象を受ける。過去の経験をもっと生かし新しい中国の確立に努めて欲しい。22省・4直轄市・5自治地区・香港・マカオ・台湾を含め、今後の問題は世界各国とどのように友好関係を結ぶかであって、世界制覇を目指すものではないものと考える次第である。
しかし、国際的監視システムであったはずの「中華人民共和国政府とグレート・ブリテン・北アイルラント連合王国政府の香港問題に関する共同宣言」(1984年12月19日 調印)は、今後どのような効力を発揮できるのであろうか?注目すべき事態となった。喬副秘書長は「基本法解釈は法の変更や修正ではない」と強調したが、香港の一国二制度の基礎である基本法が、事実上中国の判断でいかようにも解釈できる前例ができあがったと考える事もできる。
                                  以上



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