番外編:『英語展』にいってきた。
今日は趣向を変えて、旅ブログっぽく。~~~~~『Evolving English ~ One Language, Many voices』展に行って来た。観覧料は無料。場所は海底トンネルでフランスとつながってる横断鉄道ユーロスターのロンドン側発着駅、セント・パンクラス駅(※)近くの British Library。(※)以前まではウォータールー駅だったが、フランスから「嫌味なチョイスもいい加減にしろ」と言われたとか言われたないとかで、現在はそれより北にあるこの駅になっている。このエキシビションは、the first ever exploring the English Language in all its national & international diversity ということで、英語についてのあれこれを展示&解説するもの。それほど大きくない会場に、色んな博物館・美術館から集められたと思しき書物(何世紀も前の辞書の初版など)や紙の類(Jane Austin の直筆のコピーとか)と、学者などのコメンタリーやこの図書館が集めた音声記録用のデジタル展示が半々ぐらい。以下、個人的なメモ書きの抜粋。英語が国際的に広まったのは、trade, conquest, migration and media の結果である(との解説であった)チョーサーの Rhyme Royal については、全く知識がなかった。この「7」という数字がポイントであるらしい。英語の standard を決める(責任を(結果的に)追うことになる)職業として、printer, translator, playwrights(劇作家), educator, lexicographer(辞書編集者), grammarian & broadcaster。「?」マークは、クエスチョンマークと呼ばれているが、昔はインテロゲーション(尋問)マークと呼ばれていた。活版印刷技術の発明は1450年だが、ブリテン島にはその25年後に入ってきている。英語の話し方は、日本だと「階級や地域」により違いがある、というのが俗に言われているが、エキシビションの解説はさらに具体的であったーage, gender, ethnicity, social class, education and occupation。別の場所での解説では、可処分所得でも違う、と書かれていた。英語でいう Solicitor は、米語では attorney にあたる。古典的なスタイル本、Elements of Style はアメリカ英語のスタイル本である(知らなかったよーーー!)。英語版は、Fowler's の著したものが、これに匹敵すると考えられている。Miner's Dictionary は興味深かった。炭坑夫は、職務上、ただの状況/進捗説明でも精確さが求められるゆえに、炭坑夫専用の辞書が生まれた。説得に関する語彙(Language for persuasion)は、政治と広告の世界で顕著になる。との解説があった場所では、プロパガンダに使われた英語の展示。プロパガンダは政治と広告のミックスだから、やはり個人的には興味深いテーマだ。以上、なかなか面白い展示会であった。もはや英語のネイティブスピーカー(※ここでは当然 British English を表す)はマイノリティになっている。英語の将来は危ういが、近未来ではまだ大丈夫だろう、という学者の言葉が印象的だ。若い世代の言葉の乱れや、テレビやネットによる悪影響への心配は、ここでも同じであった。翻って、日本でもぜひ日本語という言語にまつわる展覧会をやってほしい。日本語は基本的には日本領内だけで話されており、書き言葉は特にユニークで、言語学的には孤立しているらしい。ということは、いま日本語を操ることのできる日本人だけが、後世に伝えることができ、またその責任を同時に負っているという気がする。最後に、「異文化比較」的なことを考えてみると、この展覧会でのポジションは、英語は美しいから残さないといけないとか、英語は人類の遺産だから残るべきだとか、そういうスタンスは一切なかった。日本は美しい国だから、日本語は美しい言語だから。日本でやったら、最後はこういう社説的/政治的な締めになりそうな気がする。徹底的に主観を排したスタンスと、感想や解釈や順路も見る側の自由自在なところは、非常に好感がもてた。~~~あしたからは、また元にもどりますーー