JEWEL

2012/10/07(日)20:36

狼と少年 第40話

完結済小説:狼と少年(46)

「本当なんですか?」 「ええ。明らかに顔見知りによる犯行ですけれど、何せ被害者の交友関係が幅広くて、犯人が特定できないんです。」 「それで、俺達に一体どうしろと?」 「大変申し訳ないのですが、一緒に現場まで来ていただけませんか?」 「わかりました。」 ウォルフとアレックスが殺人現場へと到着すると、そこにもマスコミが殺到していた。 「こちらです。」 立ち入り禁止テープを二人がくぐると、生々しい血痕がテーブルの上に広がっていた。 そばには空になったステーキ皿と、ワイングラスがあった。 アレックスはテーブルの血痕を見るなり、吐き気を催した。 「大丈夫か?」 「うん。」 「それで、ラリーの遺体は?」 「今解剖中です。彼の近親者に連絡は取れますか?」 「いいえ。」 確か、ラリーは天涯孤独だと言っていた。 「あの、遺体の引き取り手がないと彼はどうなりますか?」 「そうですね、無縁墓地に埋葬されます。」 「そうですか・・」 半開きになったクローゼットから、デザイナーズブランドのドレスが覗くのを見たアレックスは、もうこのドレスを着るラリーが居なくなったことを実感しはじめ、泣きそうになった。 「今日はわざわざ来ていただき、ありがとうございました。」 ラリーのアパートから出た二人に、パリス警部補はそう言って彼らに頭を下げた。 途中でタクシーを拾ってタンバレイン邸へと戻った二人に、ジェフが彼らに駆け寄ってきた。 「ラリーが殺されたっていうのは本当なのか!?」 「ああ。さっき現場を見てきた。」 「そうか・・信じられない、ラリーが死ぬだなんて!」 ジェフはそう叫んで肩を震わせながら嗚咽した。 ラリーの葬儀には『ジャーヘッド』の従業員たちや馴染み客達などが集まり、彼の死を悼んだ。 「ヘイ、ウォルフ。」 「アンディ、あんたも来てたのか。」 『ジャーヘッド』の用心棒・アンディは筋骨隆々とした体躯を喪服で包んでいる所為で、傍目から見ると『MIB』のエージェントに見えた。 「ラリーがあんな目に遭って俺も驚いてるよ。しかもあいつのラップトップも行方不明だと聞いた。」 「ラップトップが?」 「ああ、黒いやつだ。そこに顧客の情報が全部入ってる。まぁ用心深いラリーのことだから、バックアップはちゃんと取ってるさ。」 「へぇ、そうなんだ。」 「じゃぁな、お二人さん。」 「じゃぁね。」 アンディと別れた二人が墓地を後にすると、ウォルフは車のボンネットに何かが置いてあることに気づいた。 「何、それ?」 「さぁな。」 封筒の封を開けて中身を確かめると、それはラリーの黒いラップトップだった。 「ここから離れよう。」 「そうだね。」 墓地から走り去るウォルフの車を、木陰からある人物が見ていた。 にほんブログ村

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