JEWEL

2012/11/26(月)13:22

美しい二人~修羅の枷~48

完結済小説:美しい二人~修羅の枷~(64)

「おはようございます!」 「土方、ちょっと来い。」 他の一年生部員達よりも少し遅れて朝練にやってきた香は、顧問の二階堂に呼び出された。 「もう知っていると思うが、部長以下三年の連中は受験の為引退して、今後継者を探しているところなんだ。そこでな、お前に部長をやらせたいって一年連中から意見が出たんだよ。」 「俺が、部長に?」 「ああ。剣の腕も立つし、人望も厚いし、お前にはぴったりだと思ってな。それに、山下から練習メニューや合宿中のスケジュールを作成したり、部費の管理も徹底しているだろう?」 「ええ、山下先輩から教わってますけど・・でも部長になるとのは話が違います。それに、二年の先輩方がどう思っているのか・・」 二年の先輩部員達を差し置いて、一年の自分が部長になることで彼らの反感を買うのではないかと香は不安を抱いていた。 「その点については問題ない。話は以上だ、練習に戻れ。」 「はい、わかりました。」 朝練を終えた香が教室に入ると、同じ剣道部の二ノ宮が彼に話しかけてきた。 「なぁ、お前次期部長になるって本当か?」 「ああ、そんな話を二階堂先生から聞いたけど、まだ部長になることは決めてないから。」 「そうか。二年の先輩達はどう思っているのか知らないけどさ、俺ら一年はお前が部長になるの、大賛成だからな!」 二ノ宮はそう言うと、香の肩を叩いた。 まだ部長になるとは決まった訳ではないのに、二ノ宮たちはすっかり乗り気になってしまっていることに、香は少し困惑していた。 昼休み、香が学食でカレーを食べていると、サッカー部に所属している二年生が彼に話しかけてきた。 「お前、余りいい気になるなよ。」 「はぁ、何言ってんすか?先輩確かサッカー部ですよね?部外者がどうしてそんな事知ってんすか?」 香がそう言って彼を見ると、彼は急にバツが悪そうな顔をして学食から出て行った。 「大丈夫か?」 「なぁ、今のやつ誰?」 「ああ、あの人西岡って奴。ほら、うちの部に二年の足立っているじゃん?そいつと仲良いんだってさ。」 「そうなのか・・」 二年の足立は、何かにつけては先輩風を吹かしては一年をこき使って威張り散らし、一年が口答えするとビンタするというチンピラのような不良だった。 「あいつさぁ、部長達が引退して自分が部長になれると思ってたんだろうな。部活サボってんのになれるわけねぇのに。」 二ノ宮はそう言って笑った。 放課後、香が更衣室で道着に着替えようとしたとき、袴に陸上部が使うライン引きの石灰がついていた。 「何だよ、これ!」 「多分あいつらの嫌がらせじゃねぇ?気にすることないって。」 香は袴を外で払い、染みが残っていないことを確かめると更衣室へと戻った。 「大丈夫か?」 「うん、何とかいける。」 香が練習に出たが、その日は何も起こらずに終わった。 彼の周辺で異変が起き始めたのは、学食で西岡に絡まれてから数日後だった。 教室に入って自分の席に座ると、机の中にしまっておいた教科書の表面が剃刀で切り裂かれたようにボロボロとなっていた。 「あいつらの仕業かもよ。ったく、陰湿なことしやがるよな。」 「ま、大丈夫だからいいや。」 授業が始まり、香がノートを開こうとしたとき、指先に激痛が走った。 何だろうと思ってよく見ると、ノートの右上に剃刀が両面テープで貼られていた。 保健室で患部を消毒して貰い、香は二階堂に部活を休む旨を伝えた。 『お前、今大変なことになってるぞ。』 帰宅後、二ノ宮のメールを見た香は、そこに添付された裏サイトのURLをクリックした。

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