JEWEL

2014/10/13(月)14:08

金襴の蝶 第41話

完結済小説:金襴の蝶(68)

「違うって!こいつは俺のダチで、千尋。」 「嘘つかないでよ!」 背の高い少女は、そう言うと拓馬の隣に立っている千尋の胸倉を突然掴んだ。 「あんた、うちの拓馬に手を出したら承知しないからね!」 「初対面の相手に掴みかかるとは、穏やかな挨拶じゃありませんね。」 千尋は少女を睨み、彼女の手を乱暴に振り払った。 「あんた、あたしに喧嘩を売ろうっての!?」 「いいえ、あなたのその乱暴な挨拶を改めようとしただけです。」 「エミ、もう行こう。」 「畜生!」 少女は千尋達に背を向けると、そのまま雑踏の中へと消えていった。 「拓馬、あの子達は?」 「ああ、あいつらは中学の時のダチ。さっきお前に掴みかかって来たのはエミってやつで、ちょっと厄介なんだよな。」 「そう・・」 「その話は後でするから、今は花火を楽しもうぜ!」 「うん。」 やがて花火が始まり、色とりどりの花が夜空に咲いた。 「楽しかったな、花火。」 「うん。拓馬、今日は誘ってくれてありがとう。」 「いや、いいんだよ。なぁ千尋、こうして二人きりで歩くのって、久しぶりだよな?」 「そうだね。確かこうして拓馬と河川敷を二人で歩いたのは、小学校5年の時だったっけ?」 「お前、よく憶えてんなぁ。」 「記憶力はいい方だから。拓馬、家まで送ってくれてありがとう。」 「じゃぁ、また塾でな。」 「うん。」 家の前で拓馬と別れた千尋が家の中に入ると、玄関先には男物の革靴が置かれていた。 「母さん、ただいま。」 「あらちーちゃん、お帰りなさい。」 「君が、千尋君かい?」 リビングのソファに座った眼鏡を掛けた男は、そう言うと千尋の前に立った。 「ちーちゃん、こちらパパの学生時代のお友達で、滝岡さん。」 「初めまして、千尋と申します。」 「いやぁ、可愛いね。君みたいな子が居たら、家の中が賑やかになるだろうな。」 「滝岡さん、主人はもうじき帰ってきますから、コーヒーでも如何ですか?」 「いいえ、もうお暇いたします。」 「そうですか・・」 「千尋君、またね。」 養父の友人・滝岡は千尋に向かって手を振ると、リビングから出て行った。 「母さん、あの人は一体何の用でうちに来たの?」 「さぁ、それはわたしにもわからないわ。」 荻野家を後にした滝岡は、その足で土方家へと向かった。 「荻野千尋の義理の父親には会えたか?」 「いいえ。彼は仕事で留守にしていました。それよりも土方さん、何故わたしにこんなことを頼むのですか?」 「君にしか、頼めないことだからだ。」 「そうですか・・」 滝岡は土方家のソファに腰を下ろしながら、歳信を見た。 「あなたは何故、荻野千尋に対してそこまで執着しているのですか?」 「それは君が知らなくていいことだ。」 にほんブログ村

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