JEWEL

2023/07/13(木)17:10

その愛は、魔法にも似て 4

薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て(5)

「薄桜鬼」の二次小説です。 制作会社様とは一切関係ありません。 土方さんが両性具有です、苦手な方はご注意ください。 目が覚めたら、歳三はこの殺風景な部屋に監禁されていた。 「畜生、ここ開けろ!」 「無駄だよ、ここに入れられたら最後、死ぬまで出られねぇのさ。」 「何で俺が、こんな目に・・」 「あんた、その身なりからして、貴族の坊ちゃんだね?居るんだよぉ、金持ちが親の遺産目当てに、親兄弟を精神病患者に仕立てて、一生ここに閉じ込めるのさぁ。」 鉄格子の窓の隙間から顔を覗かせた警備員・ウィードはそう言うとヤニで黄ばんだ歯を剥き出しにしながら笑った。 「どうすれば、ここから出られる?」 「兄ちゃん、ちょいと耳貸しな。」 「先生、あの子はどうですの?」 「かなり酷い状態ですね。幻覚を見て暴れたり、奇声を上げたり・・回復は望めない状態でしょう。」 「まぁ、何てこと・・」 シャルロットはハンカチで目元を拭う振りをしながら、口端を歪めて笑った。 歳三をこのまま精神病院に監禁し、夫の遺産を独占し、邪魔な者を完全に排除して伯爵家を我がものにするのだ。 「あの子に、会えますかしら?」 「ええ・・」 閉鎖病棟は、独特の臭気と雰囲気に満ちていた。 「あちらです、奥様・・」 「トシゾウ、お母様よ。」 シャルロットがそう歳三に呼びかけると、彼は唸り声を上げて鉄格子の窓を叩いた。 「わたくしがわからないの?」 彼女の顔を見た歳三は、眉間に皺を寄せて牙を剥き出しにしながら唸った。 「先生、失礼致します。」 養母と院長が去っていく気配がした後、歳三は唸るのをやめた。 「お疲れさん。」 「あのババアをさっき本気で噛み殺しそうだったぜ。」 「さてと、ここからが勝負だ。この病院は地下に沢山パイプが張り巡らされているんだ。」 ウィードはそう言うと、病院の地下通路の地図を歳三に見せた。 「随分と狭くて細いな・・」 「だろう?ここを通って出られるのは、ネズミくらいさ。」 「ネズミ、ねぇ・・」 杖さえあれば、ネズミに変身できるのだが、杖はシャルロットに奪われてしまった。 (クソッ、一体どうすれば・・) 「なぁあんた、ふたなりかい?」 「は?」 「実はなぁ、あんたがここに来る時に、あんたの裸を見ちまったんだよ。」 「そうかい。俺がふたなりだからどうだっていうんだ?」 「色仕掛け、ていうのはどうだい?」 「色仕掛けだぁ!?あんた急に何を・・」 「あんた、自分がどう周りに見られているのか気づいてねぇだろう?」 ウィードはそう言うと、歯を剥き出しにしながら笑った。 彼の言葉を聞いた歳三は、ストーカーに付きまとわれたり、ラブレターを大量に貰ってその処分に困ったりした学生時代の事を思い出した。 「その顔だと、色々あったみてぇだな。」 「まぁな。」 「あんた、恋人は居るのかい?」 「あ、あぁ・・」 歳三は首に提げているダイヤモンドの婚約指輪に触れた。 その指輪は、学生時代に勇から誕生日に贈られたものだった。 『本当は、エメラルドの指輪を誕生祝に贈ろうと思っていたが、ダイヤモンドの指輪しか買える金がなくてな・・』 『いいんだ、勝っちゃんが俺の為に贈ってくれたものなら・・』 (勝っちゃん、今どうしているのかな・・ちゃんと飯、食ってるのかな?) 「あんた、恋人の事を考えている時、優しい顔をしているんだな。」 「まぁな・・それよりも、誰に色仕掛けをすりゃぁいいんだ?」 「決まっているさぁ、ここの院長だよ。」 「は!?」 「あいつは、いつもあんたの部屋の前であんたの裸を想像してマスかいてるんだぜ。あいつはなぁ、女房が男と逃げてから、ずっと独り身で溜まってんのさぁ。それにな、この病院から出るには、一番手っ取り早くていい方法がある。」 「それは何だ?」 「耳貸しな。」 その日の夜、ジェスリー=ブラッドショー医師は溜息を吐きながら自分のオフィスから出た。 どうせ家に帰っても、広い部屋の中には誰も居ない。 ジェスリーは重い足取りで病院内に設けられている患者のレクリエーション用のプールの前を横切ると、そこには全裸で泳いでいる歳三の姿があった。 ジェスリーは、彼がこの病院に入院したその日から、毎晩彼を抱く妄想をしては自慰をする日々を送っていた。 その彼が、全裸という無防備な姿で自分の前で現れた。 「先生、俺と一緒に泳ごうぜ?」 そう言って舌なめずりをしながら上目づかいで自分を見つめる歳三の姿に、ジェスリーの欲望は爆発した。 ―この病院から一番手っ取り早く出る方法って何だ? ―権力を握る事さ。 「君は最高だ・・ずっとわたしの傍に居ておくれ・・」 「勿論だ。」 ジェスリーに抱かれ、歳三は彼に微笑みながらも偽りの言葉を口にした。 あの時、ウィードが自分の耳元で囁いた言葉は嘘ではなかった。 歳三がこの病院に入院してから一年過ぎ、彼はジェスリーを凌ぐ程の絶大な権力を持っていた。 「君の退院の日が決まったよ。」 「へぇ、そうかい。」 「お願いだ、わたしから離れないでくれ。ずっと傍に居てくれ・・トシ。」 「その名で俺を呼ぶんじゃねぇ。」 歳三は眉間に皺を寄せると、赤いピンヒールでジェスリーの股間を踏みつけた。 「俺をその名で呼ぶのを許されているのは、唯一人だけだ。」 「ごめんなさい・・」 歳三はジェスリーのオフィスから出ると、ジェスリーが特別に自分の為に用意してくれた部屋へと戻った。 「お帰りなさいませ、女王様。」 「その呼び方やめろ、気色悪い。」 「あいつ、あんたをここから出す気はねぇようだぜ。」 「それは本当か?」 「あぁ。あいつはあんたをここで一生薬漬けにして飼い殺しにするつもりだぜ。」 「そんな事、させて堪るか!」 「何かあったら、これを使いな。」 ウィードはそう言うと、ある物を歳三に手渡した。 その日の夜、歳三はいつもの自分専用の部屋ではなく、一年前自分が入院していた部屋で眠っていた。 「トシ、そこに居たんだね。随分と探したんだよ・・」 ジェスリーが荒い鼻息を吐きながら、そう言うと歳三の乳房を乱暴に揉みしだいた。 「君を退院なんかさせないよ・・君はここで、わたしの子を産んでずっとここで暮らすんだ・・」 「・・それがてめぇの本心か。」 歳三はそう言うと、メリケンサックを嵌めた拳でジェスリーを殴った。 「嫌だ、行かないでくれ~!」 「世話になったな。」 こうして歳三は、約一年間過ごした精神病院を後にした。 「達者でな。」 「あばよ。」 ウィードから車の鍵を受け取った歳三は、その車で一路ロンドンへと向かった。 同じ頃、ロンドン郊外の低所得層団地がある地区の路上で、一人の男性の遺体をゴミ清掃員が発見した。 男性は外傷がなく、司法解剖の結果、男性の死因は“心臓麻痺”だとわかった。 男性は、恐怖の表情を浮かべたまま死んでいた。 にほんブログ村

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