カテゴリ:俳句
4月25日(木) 現代俳句(抜粋:後藤)(25) 著者:山本健吉(角川書店) 発行:昭和39年5月30日 高浜虚子(14) 虹たちて忽ち君の在る如し 虹消えて忽ち君の無き如し 昭和十九年作。 三国の若い女弟子愛子に送ったもの。虚子が三国を訪ねた時、愛子は母と愛人の柏翠と三人で、敦賀まで送って来た。汽車の中で、三国の方角に鮮明な虹が立っているのが見えた。あの虹の橋を渡って鎌倉へ行こうと、愛子が独りごとのように言った。虚子は小諸に帰って、浅間山にかけてすばらしい虹が立って居るのを見た。そしてこの句を愛子に書いた。愛子も柏翠も肺結核であった。 虹消えて音楽は尚続きをり 虹消えて小説は尚続きをり 死ぬ前の愛子から電報が来た。 ニジ キエテスデ ニナケレド アルゴ トシ アイコ 師と愛弟子との交渉を、この句の場合頭に置いて読むとよい。単純だが、淡淡とした中に何か豪華な美しさを持っている。軽い即興句で、挨拶句である。この句は、作者にとっては、美しい薄命の女弟子との淡く短かった交渉の記録として存在すれば足りる。作品そのものよりも、作品を生み出す作家の精神が、生活が、大事なのであろう。 (つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.04.25 07:14:34
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