2017/08/27(日)01:55
第83話 平和だなぁ その1.
イェクンの祠を出てハスデアを目指し始めてから早数日。
「ん・・・もう朝かぁ……」
布団から抜け出し寝室の中を見回してみたが、そこでいびきをかきながら本当に気持ち良さそうに眠るジルとエリーの姿だけが見える。
って、カグヤさんの姿が見えないな。もうおきてるのか?
相変わらず朝早いなぁ・・・俺達と同じくらいかちょっと遅めに寝てるはずなのに一番最初に起きてるんだからな。
とりあえず、一緒に行動をして数日経ってわかったんだが、彼女の1日はかなり早い。俺達がおきる頃には既に起床してて、清掃から始まり、飯の支度など、身の回りのことを一通りやってくれてるんだ。
まぁ、俺もそうだけどよ?ジルもエリーもそういった身の回りのことをやるのってすげぇ苦手っていうか、だ。
やれない、いや、違うな。全くやらないんだよ、うん。
それこそイェクンの祠へ向かうまでの数日間は本当に誰がその掃除だったり食事の準備をするのか、そんなことで醜い争いをしたもんだ。
とりあえず寝室から船内にある小さなキッチンに行くとだな?
そこには今まさに朝食の準備をしてくれているカグヤさんの姿が見えた。
彼女は俺がキッチンに入ってきたのに気付くと可愛らしいにこやかな笑みを向けてきてくれた。
「あ、ベリルさんおはようございます。朝食の準備できてますよ」
う~ん・・・このカグヤさんの爽やかな笑みをみただけで今日も1日頑張ろう、って気分になる。
「カグヤさん、おはようさん。いつもおいしい飯と掃除あんがとな」
「いえ、おきになさらないで下さい。私はお世話になっている身ですし、これくらいのことはして当然ですよ」
そう言って微笑みかけてきてくれるカグヤさんマジ天使。
本当・・・ジルとエリーにカグヤさんの爪の垢を煎じて飲ませてやりてぇもんだわ。
テーブルの上に並べられているのは焼き魚と刺身と白飯。
まぁ、海の上にいるんだし?メニューはこの際気にしないでおくか。っていうか、本当こうして用意してくれるだけでも感謝しないと罰が当たるってもんだ。
「そういえば、ジルさんとエリーさんはまだ起きてみえられないですね」
「あいつらのことだ、ほっときゃ適当な時間に起きてくるんじゃね?んじゃま、いっただっきま~す」
手を合わせてカグヤさんの用意してくれた飯にありつこうとした瞬間だった。
「ふわぁ・・・」
「おふぁよ~・・・」
大あくびをかましながら、間抜けな・・・・・・・
いや、違った。眠そうな顔をしながら頭をポリポリと搔きつつキッチンに入ってきたジルとエリー。
うっわ・・・2人の姿を見て現実に引き戻された感が半端ねぇんだけど?
俺のさっきまでの癒しの時間返して?ねぇ、返して?
心の中でそんな事を思っても実際には言えないわけで、な?
「おっす、二人とも」
俺は出来るだけ平静を装いつつ2人に対して朝の挨拶をした。
そして、2人が入ってきたことに気付いたカグヤさんはこの2人にももったいないくらいに素敵な笑みを向け朝の挨拶をしたんだ。
「おはようございます、エリーさん、ジルさん」
「うへぇ・・・また魚?もう食べ飽きたんだけど」
本当に飽きたんだろうな。すんげぇ心底嫌そうな表情を隠すこともなく出してるよw
てか、せっかくカグヤさんが用意してくれたのに、その反応はねぇだろうよ。
「今は海の上なんだし仕方ないよ。それこそ今は魚以外の食料が手に入らない状況だしねぇ」
「まぁ、もう少ししたらハスデア着くしそれまでの我慢だ」
「うぅ~・・・もう少しってどれくらいよぉ・・・」
「でもでも、アレだね。ハスデアに着いたらお肉食べたいねぇ」
「んだなぁ、ガッツリ肉くいにいくか」
そんな話をしつつ朝食も食べ終わり、俺とジルは操舵室へ向かおうとしたんだが、エリーは食器を片付けてるカグヤさんの方へツツツッと近寄っていった。
第83話 平和だなぁ その1.終わり
その2.へ続く