夏に依頼を受けていた中1向けの「古典落語」の選定と要約。ようやく完成。二編選んだ。
600字以内で、落語の面白さを伝えるのは難しい。セリフの面白みを、そのまま活かすようにした。
以下、要約。
「饅頭怖い」
だらしがない話だが、人間なら必ず苦手なものはあるということで皆に聞いていくと、クモ、アリ、トカゲ、なめくじなど、出てくる出てくる。しかし、その中でひとりニヤニヤして何も言わないのが松公だ。
「おい、松の字(※1) 。ニヤニヤしてるけどお前も何か怖いものがあるんだろ」
「ふん、俺にはそんなもんねえな」
威勢のいい松っつぁん。しかし、ふとしたことで怖いものが頭に浮かんだのか、急に様子がおかしくなり、帰ると言い出した。すかさず皆で問いつめると、なんと饅頭が怖いという……。
「松っつぁん、大丈夫かい。気付け薬を買って来たよ。枕もとに置いておくからな」
「ああ、すまねえ。薬ィ飲んで落ち着くかな…。うわっ、なんだこりゃ、饅頭じゃねえか。ひでぇことするな…。あぁ、こりゃこしあんだ。あわわ、こっちはつぶあんだ。これは食い出があるぞ。うーん、この栗饅頭はとくに怖い…、ムニャムニャ」
「やられた! 饅頭をタダで食わせちゃった。オイ、食うのをやめろ! この野郎、本当はいったい何が怖いんだ」
「ここらで渋いお茶が一杯怖い」
※註1 名前の最初の一文字に「~の字」をつけて呼ぶ、江戸っ子言葉の一種。
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「道具屋」
「いい大人になっても定職につかない与太郎。心配する叔父さんが、露天の道具屋(※2)をやらせようと荷物を持たせる。
しかし、首がすぐ抜けるお雛様とか、本物の短刀そっくりの木刀とか、俗に「クズ」と呼ばれている代物ばかり。
「さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。できたての道具屋。ホカホカの道具屋だよ!」
「おい、そこにある『のこ』を見せな」
「へ? のこ? のこにあります?」
「くだらねえシャレを言うな。のこぎりだよ。むむ…。こりゃ少し甘いな」
「えーっ? 甘い? ちょっと貸してください。うわっ、こりゃ渋いよ!」
「バカ、味じゃないよ。刃の焼きが甘いんだよ」
「あ、焼きのことですか。それなら甘くありませんよ。叔父さんが火事場で拾ったんだから」
「ひどいもん売るな、バカ!」
怒って帰る客。次の客は短刀を見せろといって抜きにかかるが、なかなか抜けない。
「うーん、よいしょ、なかなか抜けんな」
「うーん、こらしょ、そりゃ木刀ですから」
「早く言わんか、この大バカもの! ちゃんと抜けるやつはないのか」
「へぇ、お雛様の首が抜けます」
※註2 古物商のこと。上は高級な骨董品を扱う大店から、下は露天で商っているうさん臭い店まで、さまざまな形態があった。
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最終更新日
2011.12.15 13:49:27
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