「半落ち」
監督 : 佐々部清 出演 : 寺尾聰、柴田恭兵、井原剛史2003年ゴールデンウィークは撮りためた映画の鑑賞をしようと思っています。この「半落ち」も3月ごろテレビで放映したものです。公開時も評判の映画で、私の友達も「泣いた~」と言っていたので思い切り泣く心の準備をして(笑)見始めました。-------------------------STORY群馬県警の警察学校の教官・梶が、妻を殺害したと、出頭してくる。梶は白血病で息子をなくし、その心労もあってか、若くしてアルツハイマーを発症した妻に、殺してほしいと頼まれ殺害したという。けれど、殺害から出頭までの空白の2日についてはかたくなに黙秘している、いわゆる「半落ち」の状態であった。梶の所持品に新宿歌舞伎町の宣伝の入ったティッシュがあり、妻の死体を放置して、歓楽街へ行っていたことが明るみに出ればスキャンダラスであることから、単なる依頼殺人ということで、穏便に処理したい県警は、この事実を隠し、調書を作成、検察へ送致する。検察官、新聞記者、弁護士はこの2日間にもっと深い事実が隠されているのではないかと感じるのだか、梶は頑なに黙秘を続ける。梶はどうして後追い自殺を思いとどまり、生きることを選択したのか・・・。------------------------------「あなたは誰のために生きているのですか」「守りたい人はいますか」この2つの問いが関係者全員に重くのしかかります。もちろん見ている私たちにも。前半では、世の中は「取引き」だらけなんだなあとあらためて感じました。警視庁と検察の取引、出世のための取引、愛情をつなぎ止めるための取引・・・取引は、いわゆる「裏取引」のように、悪いこと、卑怯なことという印象があるけれどその取引を受けざるをえない忸怩たる思い。開き直りではなく、青臭い正義だけをひけらかしていられない現実があるということ。柴田恭平、伊原剛史の痛み。そして、後半、裁判の場面。どうして、梶が生きることを選んだのか、生きざるを得なかったのかが、徐々に明らかになります。証人としてたった被害者の姉(樹木希林)の証言には泣きました。樹木希林、出番は少なかったけど、キーパーソン。記憶に残る登場人物でした。でも、最後は、え?おしまい?とあっけなかったです。ミステリー作品としてみる作品じゃなかったんですね。空白の2日の証言を、どうしてそこまで頑なに拒んだのかが最後まで見れば明らかになると思ってたので、肩すかしでした。原作を読んだらスッキリするのでしょうか。でも、いい役者さんたちが本当に揃っていたし、鑑賞後に考えさせられる映画だったと思います。吉岡くんの役どころは、もうちょっと掘り下げてほしかったかも、ですが。歳をとってからの寺尾聡さんって、静かに存在しているだけで、味わいのある役者さんですね。先クールのドラマ「優しい時間」も素敵でした。人はいつ人でなくなるのでしょう。魂がなくなったらもう人ではない?難しい宿題をたくさんもらった気分です。以前、瀬戸内寂聴さんが「子どもに、“どうして私はは生まれてきたの?”と聞かれたら“誰かを幸せにするためよ”と教えてあげなさい。」とおっしゃっていたのを思い出しました。死を選択するより、生きることを選択するのは勇気のいることです。半落ち半落ち( 著者: 横山秀夫 | 出版社: 講談社 )