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カテゴリ:秩父巡礼
第16番札所
山号:無量山(むりょうさん) 宗派:真言宗豊山派 本尊:千手観世音菩薩 巡拝日:2008年4月4日 ----------------------------------------------------------------- 十五番・少林寺から市街地を抜け、十六番・西光寺へ。 秩父の街は意外に急峻な河岸段丘の上にあって、 少林寺からわずか1km足らずの場所ながら、西光寺の周辺は、 すでに荒川の流域へ向けて下降し始めている。 十六番は、自分の実家の菩提寺と同じ名前。 勝手な親近感を覚えながら辿り着く。 山門をくぐると、本堂より先に、 本堂手前右側で満開の花を咲かせる枝垂桜の美しさに目を奪われる。 その桜を見上げながら、地元に住んでいるという男性と巡拝の男性が話し込んでいる。 地元に住んでいるという男性は、こうしてしばしば西光寺に来ては、 四季の花々を眺めているんですよ、というようなことを話している。 いきなり桜に気をとられてしまったけれど、 本堂も、素朴なルックスながら、1710年建立という歴史にふさわしい風格がある。 向拝の奥の欄間には、きらびやかな色彩が残るお釈迦様の涅槃の彫刻があった。 写真に収めたい美しさだったが、ここは撮影してはならないエリアのようで、諦める。 向拝の右手には、回廊堂というお堂への入り口がある。 この回廊堂はコの字型になっていて、中には四国八十八ヶ所霊場の、 各札所のご本尊さまの模造の彫刻が並んでいる。 八十八番まで見て外に出ると再び本堂の前に戻るという作りだ。 さらに、回廊堂のコの字に囲まれるように、小さなお堂が建っている。 札堂と呼ばれていて、現存する秩父札所最古の建造物だという。 かつて、巡拝者はそのしるしとして木札をお堂に釘で打ちつけていたそうで、 この札堂にも釘を打ち付けた無数の傷が残っていて、歴史を証明している。 打ちつける、というのは、巡礼に救いを求めるのならば、とても確信的な行為だと思う。 現在のようにご朱印をもらうよりも、より強烈な救いへの叫びが込められている気がする。 札堂に残された無数の傷跡に、かつての巡礼者の心の内を見るようでもあった。 もともと観音堂でもあったというその札堂は、 今は本堂に観音さまを移し、その役目を終えてひっそりと佇んでいる。 その姿が、故郷の年老いた祖母の姿に重なった。 その祖母に連れられて祈った寺の名前もまた、西光寺だったのだ。 この札堂を含め、境内は狭いながらも風情があって、 そこだけで山里の古寺のような、味わい深い雰囲気を、この寺は醸し出している。 地元の男性がしばしば足を運ぶのだというのも、よくわかる。 いつまでも佇んでいたいような空気が、境内じゅうに満ちているのだ。 と、十五番の納経所で先を越されたあの団体が、ざわざわと境内へやってきた。 せっかくの気分が乱されるばかりか、ここでも納経で先を越されそうになる。 あわてて納経所へ向かい、そのまま境内を出てしまった。 自分のリズムで巡礼をするには、まだまだ心の余裕が足りないのであった。 無量山西光寺 秩父市中村町4-8-21 tel.0494-22-4444 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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