ショート・シナリオの館

2012/05/13(日)20:49

大岩の悩み

標高300mほどの山の一角に突き出た大岩には悩みがありました。 大岩:周りの岩山たちには木が生えているのに、どうして僕のところ    には木が生えてくれないのかな?     雨が降ったら傘になり、雪が降っても屋根になってくれる木が    欲しいな。 そこへ裾野に広がる樹林から風が駆け上がってきました。 風: 大岩君、こんにちは! あれ、元気がないね、どうしたの? 大岩:周りの皆と同じようにふさふさとした木が欲しいんだよ。 風: 僕はふさふさした木は嫌いだよ。だって走り抜けるのにじゃま    なんだ。    だから木の無い君のところを走るのが一番好きだよ。 大岩:僕は君が嫌いさ。君は僕が少しずつ貯めていた土を、吹き飛ば    してしまうじゃないか。    だから僕には木が生えないんだよ。僕は怒っているんだぞ! 風: そんなに怒らないでおくれ。僕以外にも君のことを大好きな人    間が一杯いるんだよ。    ほら!誰かやってきた。彼らの声を聞いてごらん。 一組の家族が大岩によじ登り、楽しそうに話し始めました。 家族:今年もこの大岩にやってくることができたね。いつ来てもここ    からの眺めは最高だ。    足元にはが広がり、向かいの山の頂上にはお城が見える。それに    大きな川も見えるし、振り返ると広々とした平野が一望だ。    何より木々を渡ってくる風がさわやかで、気持ちが良くて元気が    湧いてくるね。 その家族はそれぞれのポーズで写真を撮って帰って行きました。 風: どうだい、聞いたかい? 君は多くの人を幸せにしているんだよ。 大岩:そう言えば、僕の頭に座る人たちは皆、同じことを言っていたね。    さえぎるものがないから、右も左も、前も後ろも、それに足元も空    も見えるんだね。 風: そうだよ。この山で360度見渡せる場所は君の上だけなんだよ。 大岩:なるほど!役に立っているんだね。もう悩まない。    僕は君が好きになったよ。    又、来てね。 風: もちろん来るさ。僕もわかってもらえて嬉しかったよ。それじゃ、    バイバイ! 大岩:バイバイ!君のお蔭で悩みが無くなったよ。今のままの僕でいいんだね。    ありがとう

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