ショート・シナリオの館

2012/06/10(日)09:32

赤トンボ・ヤゴロウ君の旅路

赤トンボの一生は、秋に田んぼの水たまりに産み付けられた卵から始まります。 冬が過ぎ春が来ました。「ゴボゴボ!」と田んぼに水が満たされました。 この環境を待って、まず「ミジンコ」たちが孵化します。 あちらこちらにミジンコの群れができるころに、赤トンボの幼虫(ヤゴ)が孵化します。 卵から水中に顔を出したのが「ヤゴのヤゴロウ君」です。 彼はすぐにミジンコを食べてどんどん成長します。 周りには「ヤゴロウ君」の仲間が大勢います。 「この殻はきゅうくつだな!捨てちゃえ!」こうして2週間ほどの間に、7回ほどの脱皮を 繰り返し体は5倍くらいの大きさになります。 梅雨になりました。ヤゴロウ君は急に食べるのを止めると、成長したイネにつかまり 登り始めました。赤トンボへの羽化が始まるのです。 イネにしがみついているヤゴロウ君の背中が割れて、時間をかけて少しずつトンボの形をした 体が外へ出てきました。 ヤゴロウ君は急いで羽根を広げ乾かします。乾かないと飛べないのです。 一番無防備な時です。 水中生活から空中生活へと変身したヤゴロウ君は食べ物も大きく変わります。 羽化するとハエや蚊、そして稲の小さな害虫を1日に11~12mg食べます。 実に体重の1割を超える量で大変な大食漢です。 これから始まる長期飛行の体力を付けるためなのです。 羽化したヤゴロウ君は2週間ほど田んぼの周りで生活をします。 体はまだオレンジ色で、体も柔らかく弱々しい感じがします。 しかし、意外と飛ぶ力は強いのです。 夏です。ヤゴロウ君の大飛行が始まります。 暑さに弱いので、涼しい環境を求めて1,000m級の山に向います。 どんよりと曇った風のない日に空を見上げると次から次へと一定方向に向う赤トンボを見るこ とができます。 ヤゴロウ君とその仲間たちは住み慣れた水田を後にして、山に向って飛び立ちました。 初めて見る都会のビル群そして大きな高速道路にびっくりです。 でもゆっくり見ているわけにはいきません。早く山に着かなければなりません。 ヤゴロウ君は一生懸命高く高く飛びました。やがて涼しい山の頂上に着きました。 暑い夏をここで過ごし、ヤゴロウ君も大人になりました。 秋の気配がただよい始めた頃、体がしっかりして、しっぽも真っ赤に成長した ヤゴロウ君たちは大集団で山から里へ降りて行きました。 目指すは生まれ故郷に似た水田です。そこでお嫁さんを探して子孫を残すのです。 「ヤゴロウ君」は5月頃に卵からヤゴになり、12月上旬には赤トンボとしての一生を終えま す。 赤トンボの飛行距離は数十キロメートルにも及びます。 あの小さな体のどこにそんな力が潜んでいるのでしょうね!

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