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カテゴリ:シナリオ
ここは動物村。古い祠(ほこら)の後ろ側にある洞窟に、天狗らしきものが住み着い ているから、近づいてはいけないとの知らせがありました。住民たちは不測の事態に備 えて自警団を結成し、祠に通じる道の立ち番をしています。 ミミ :あの祠にはレイニーからもらった帽子とマフラー、それに光る石が隠してある んだけど、取りに行けなくなっちゃったね。 ポン吉:僕たちの遊び場だったのに残念だな。だけど、天狗って何なの? コン太:長老の話によると、体が大きくて恐い顔をしているらしいよ。姿をはっきりと 見た住民はいないんだって。何をしでかすかわからないから、近づくなって ことだよ。 ポン吉:見に行こうか。僕らは他の人には見えないものまで見えるんだぜ。怖くないよ。 コン太:確かにカッパの川太郎や水の精のレイニーは僕たちにしか見えないんだから ね。 ミミ :ちょっと怖いけど、正体が判れば村の皆も安心するよね。行ってみましょう。 正面の道は自警団がいてダメだから、3人で作った笹トンネルの隠れ道を使っ て近づくのがいいと思うわ。 こうして仲良し3人組は自警団の目が届かない隠れ道を通って前進しました。祠の見 える場所に近づいたとき、祠の前に大きな体の天狗らしき者の後ろ姿が見えました。 すると3人組に気付いたのか、その者が突然振り向いたではありませんか。その顔は真 っ赤で口は大きく、鼻も異常に長く、大きな眼が金色に光っているのです。あまりの恐 ろしさに、三人組は思わず「ギャ~」と叫んでしまいました。 天狗 :そこにおるのは何者だ。出てこないとひねり潰すぞ!おとなしく出てこい。 ポン吉:お願いです。どうか僕たちを食べないでください。 コン太:あなたが誰なのかを知りたくて来ただけですから。 ミミ :村の皆が怖がっています。何のためにこの動物村に来たのか、教えてください。 天狗 :おや?お前たちとは言葉が通じるんじゃな。ワシの耳は遠くの声も聞こえるが、 ここに住む者たちの言葉が理解できずに困っておったところじゃ。 言葉が通じるものがいて助かったぞ。 ポン吉:あなたは誰ですか?ここで何をするつもりですか?いつまでいるのですか? 天狗 :いっぱい質問がきたな。ワシは天狗じゃ。ワシは権現様の使いで人間界に行く ところじゃったが、長旅の疲れでついつい、うたた寝をしたらしい。 気付いたら、ここにいたんじゃ。どうやら道に迷ってしまったようじゃな。 この祠の近くに人間の住む街へつながる道があるはずじゃが、一緒に探して くれんかのう。 コン太:本当に天狗さんなんですね。驚いた!まさか天狗さんに会えるとは思わなかっ た。 ミミ :天狗さんは体が大きくて恐い顔をしているから、村の皆が怖がるのも無理ないわ。 だけど、こうしてお話をしてると怖くなくなってきた。私、一緒に探してあげるわ。 天狗 :オヤオヤ、皆を怖がらせてしまったのか。それは悪いことをしたのう。 さて、この祠の近くに人間の住む街へ通じる入口があるはずなのじゃがな。 天狗と3人組は祠の周囲を探しましたが、入口らしきものは見つかりません。コン太は 祠の中に隠しておいた3人組の宝物を、この際、持って帰ろうと思い、祠の扉を開きまし た。 コン太:僕たちの宝物はちゃんとあったね。この光る石はいつもきれいだな。 あれれ!石の光が祠にあたった瞬間に、祠がガタガタと揺れたよ。 ミミ :ウン、揺れたね。もっと照らそうよ。そうだ、私のマフラーを銀色にすれば強 く反射して祠に光がいっぱい届くわ。銀色にな~れ。ヨシッ!銀色だ。光を 当ててみて。 コン太の石に当たって反射した光は、次に銀色のマフラーにぶつかり、更に強く反射 して祠を明るく照らしました。すると、祠の扉に大きな鍵穴が浮き出てきたではありま せんか。 ポン吉:鍵穴だよ。僕の帽子を鍵穴の形にしてはめてみよう。 帽子よ、鍵穴の形にな~れ!ヤッタ~!鍵の形になった。鍵穴にはめてみる ぞ。ほら、ぴったりの大きさだ。 鍵の形になった帽子を穴にはめた途端に、祠全体がガタガタと横に動き始めました。 そして祠があった場所に、大きな穴が現れました。どうやら階段もついているようです。 天狗 :これがワシの進む道に違いない。君たちに会えてよかった。これで目的地へ行 くことができる。君たちには心から感謝するぞ。この動物村が平和であるこ とを祈っておるからのう。村の皆に「天狗は立ち去った。怖がらせてすまな かった。」と伝えてくれ。それではさらばじゃ。元気で暮らせよ。 天狗が姿を消すと祠は再びガタガタと動き、元の位置に戻りました。あっけにとられ ていた3人組がふと気付くと、それぞれの手には元の姿に戻った宝物が握られていまし た。 コン太:僕たちの宝物が天狗さんの役に立ったんだね。 誰にも信じて貰えないだろうけど。 ポン吉:宝物をここに隠しておいたのが良かったんだよ。またここに隠しておこうね。 ミミ :早く村の皆に、天狗さんがいなくなったことを知らせましょうよ。 3人組は天狗がいなくなったことを、村の皆にどうやって説明したらいいのかを話し合 いながら、自警団が立っている方向に意気揚々と歩いて行きました。 またしても不思議な体験をした3人組でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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