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カテゴリ:シナリオ
トマトには生食用トマトと加工用トマトの2つの分類があり、品種も栽培方法も、そして含まれている栄養価も違います。同じトマトなのにまるで別物のようです。
<生食用トマトと加工用トマトの違い> サラダなどで食する生食用トマトはピンク系トマトと言われ、栽培は露地やビニールハウスの中などにあり、茎を支える支柱がズラリと並んでいます。ビニールハウス内では生育の調整ができるので、旬でなくとも一年中トマトを収穫することが可能です。果皮は薄くて果肉はピンク色で柔らかく、長距離輸送できるように、完熟前に収穫します。普段店頭で見かけるのはこの品種です。
一方、ケチャップなどの原料となる加工用トマトは農林水産省が決めた規格があり、完熟したものであることや、リコピン含有量、色の赤み等が決められており、赤系トマトと言われています。畑は無支柱の露地栽培であり、すべて契約農家で作られ、春先の3月から4月にかけて定植し、トマトの旬である真夏の8月から9月にかけて完熟してから収穫されます。ですから収穫は年に1回ですが、盛夏の中での収穫なので重労働です。この旬の時期にもぎ取られた加工用トマトは、品質の落ちないその日の内に近くの加工工場へ運ばれ、新鮮さを保ったままトマトジュース等の加工品に生まれ変わります。果皮は厚くて果肉は赤色で固い。完熟時に収穫し、缶や瓶などで密閉状態にして運びます。加工用トマトは完全契約栽培なので店頭で目にすることはまずありません。
<茨城県は加工用トマトの生産量が日本一> 国内のトマト生産量ランキング(2020年度)では1位熊本県、2位北海道、3位は愛知県と茨城県です。しかし、加工用トマトに限りますと生産量は茨城県が48%のシェアで、2位の長野県を大きく引き離して、ここ10年間ほど継続して日本一の生産地です。県内では鬼怒川の西岸に位置する八千代町近郊が県の青果物銘柄産地に指定されています。 <国産加工用トマトの自給率> 世界の野菜生産量ランキング1位はトマトで、2位の玉ねぎの2倍の生産量です。そのトマトの世界三大産地は1位中国、2位インド、3位トルコで、日本は27位です。世界で生産されるトマトの主流は加工用の赤系トマトです。国産の加工用トマトは1989年にトマトが貿易自由化されたことで、価格競争力に負けて、今では国内で消費するトマト加工品全体を生産するのに必要な原料のわずか3%に過ぎず、ほぼ海外産に依存しているのが現状です。必然的に国産トマト生産の主流は外国産の参入が少なく、糖度や食感が勝る日本人好みのピンク系トマトに活路を見出しています。それでも最近は、日本市場にも変化があり、イタリアンブームで、赤色系トマトを使った料理のレパートが広がったこと、そして栄養価が高いことから、国内でも外食産業を中心に生食材として目にするようになっていると聞いています。ピンク系トマトも安閑とはしていられない環境がジワリと忍び寄っています。
<栄養価の違い> 加工用トマトの栄養含有量(生食用トマトとの比較) ①リコピン:約3倍 ②ベータカロテン:約2倍 ③ビタミンC:約2倍 ④食物繊 維:約1.5倍 ちなみに生食用トマトを完熟させても加工用トマトと同等の量には
<トマトは料理を美味しくする>> ①昆布と同じうま味成分「グルタミン酸」が多く含まれていて、ソースなどに使う事により、一緒に煮込む材料のコクとうま味を引き出します。ですから、欧州ではトマトを日本の昆布(昆布よりグルタミン酸の含有量が多い)を使う感覚で、出汁として利用しています。 ②クエン酸やリンゴ酸といったトマトの酸味が、脂っこさを押え肉や魚の臭いを消 ③自然のおだやかな酸味とうま味が素材の持ち味を引き出し、塩をあまり入れなくても深みのある味わいに仕上がり、減塩にピッタリ。 ④トマトの赤い色は食卓を明るくし、さらに食欲をそそります。生で食べるのもおいしいですが、栄養素がぎゅっと凝縮されたトマトジュース・トマトケチャップ・トマトピューレーなどを上手に使って、さらにバランスの良い食事を。
<国産トマト100%表示の製品を応援しよう!> 加工用トマトは主に「とまとジュース」「とまとケチャップ」「とまとソース」「とまとビューレー」「とまとペースト「固形とまと(ホールとまと)」などに使われます。こうして並べてみると、加工用トマトは、完熟したトマトそのままの状態で食べても、あまりおいしくありませんが、ジュースや加熱調理することで、そのおいしさが発揮されるトマトであることが分かると思います。 加工用トマトは輸入品の方が圧倒的に低価格です。利益を追求するだけならすでに勝負ありですが、どっこい、国内メーカーからは国産の加工用トマト100%使用の製品が何種類も発売されています。これは国内のトマト加工メーカーが、利益より国内トマト農家の育成に力を入れているからです。利益率が悪くても商品化するメーカーは偉いです。
<日本ではまだマイナー>
現在の加工用トマトの作付け面積は、農家の高齢化や盛夏での重労働などで減少傾向が続いています。私は「国産100%使用」の表示に注意して購入し、加工用トマト生産農家を応援していきます。皆さんも応援してくださいね。
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最終更新日
2021.07.15 08:01:14
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